TOKYO FILMeX

共催：松竹　

毎年、日本映画の名作を英語字幕付きで上映し、国内外で広く好評をいただいている特集上映では、東劇を会場に、松竹と共催して充実のラインアップをお届けします。
1930年代はモダニズム文化が花開き、トーキー映画が登場し、映画は成熟期を迎えました。当時、松竹の蒲田撮影所と後継の大船撮影所では、新しい映画演出を試み、フレッシュな俳優たちを育て、モダンでお洒落な映画を次々と発表しました。流行を体現するモダン・ガール、モダン・ボーイであった新進スターたちの自然な魅力を引き出し、洗練されたタッチで演出された作品群は、今なお新鮮に輝いています。
また、庶民的な日常生活をユーモアとペーソスを交えて描く小市民映画は松竹蒲田調と謳われ、数々の傑作が生まれました。当時、世界恐慌下の不況期にあって、しがない日常を喜劇的に捉えて笑いを誘った作品群は、今こそ再評価されるべき映画といえます。蒲田調のスタイルを確立し多くの監督たちに影響を与えた島津保次郎を中心に、五所平之助、清水宏、小津安二郎、溝口健二といった名匠たちの作品を集め全27作品を英語字幕付きで上映します（*）。
また、今年は日本を代表する映画女優・田中絹代の生誕100周年にあたることを記念し、代表作「愛染かつら」「西鶴一代女」はじめ、多彩な魅力にあふれた作品を上映します。
（短編含む。短編および一部作品には英語字幕がつきません）

| 島津保次郎監督作品 | 五所平之助監督作品 | 清水宏監督作品 | 小津安二郎監督作品 |
| 衣笠貞之助監督作品 | 溝口健二監督作品 | 田中絹代出演作品 | 短編作品 |

以下の日時に上映されるサイレント作品にて、無声映画伴奏者の柳下美恵さんによる伴奏付き上映を行うことになりました。どうぞ、お楽しみください。

11月22日（日）17：30　「突貫小僧」
11月23日（祝）15：30　「モダン怪談100,000,000円」
　　　　　　　　　17：30　「親」
11月24日（火）15：30　「爆弾花嫁」
11月26日（木）15：30　「腰弁頑張れ」
11月27日（金）15：30　「石川五右ヱ門の法事」
　　　　　　　　　19：00　「涙の愛嬌者」

島津保次郎監督作品

1932年／88分　 *英語字幕付
出演 : 水谷八重子、岡譲二、奈良真養、江川宇礼雄、河村黎吉

1934年／77分　 *英語字幕付
出演 : 逢初夢子、大日方傳、岡田嘉子、磯野秋雄、飯田蝶子

1935年／100分　 *英語字幕付
出演 : 田中絹代、高田浩吉、斎藤達雄、藤野秀夫、葛城文子

1937年／77分　*ニュープリント　英語字幕付
出演 : 上原謙、高峰三枝子、夏川大二郎、坪内美子、杉村春子

1937年／66分　*ニュープリント　英語字幕付
出演 : 佐野周二、上原謙、佐分利信、高峰三枝子、三宅邦子

1938年／57分　*ニュープリント　英語字幕付
出演 : 佐野周二、高杉早苗、高峰三枝子、坂本武、葛城文子

1939年／56分
出演 : 田中絹代、上原謙、三宅邦子、河村黎吉、葛城文子

島津保次郎　SHIMAZU Yasujiro （1897～1945）プロフィール

1897年6月3日東京神田生まれ、海産物商を営む父・音次郎の次男。
英語学校卒業後に家業を手伝うが、映画への情熱が高じ、1920年松竹の映画事業進出に伴う新聞求人広告を見て応募する。小山内薫に師事し、松竹キネマ研究所にて「路上の霊魂」（21）の助監督をつとめる。初監督作「寂しき人々」（21）はお蔵入りしたが、22年に松竹蒲田撮影所に戻り「山の線路番」（23）などで監督として認められる。23年関東大震災で撮影所が壊滅し多くの監督が京都へ移ったが、東京に残った島津は新しい撮影所長の城戸四郎と意気投合する。そして、新派悲劇路線から日常性あふれる現代劇への転換を計り、蒲田調と呼ばれる“小市民映画”を確立させる。「上陸第一歩」（32）を皮切りとして、トーキーで新境地を開き、「隣の八重ちゃん」（34）など、独自のトーキー・リアリズムを打ち出す。また、谷崎潤一郎の小説を脚色した「春琴抄　お琴と佐助」をヒットさせ、文芸映画の先駆けとなる。「婚約三羽烏」（37）では新進スター育成に手腕を発揮。39年に東宝へ移籍するが、映画の国家統制もあり監督本数が減り、「白鷺」（41）などの大作を手がける。「日常の戦い」（45）を遺作として、1945年9月18日に胃癌により逝去（49歳）。
新しい才能を育てることに注力し、島津の助監督として修行を積んだ作家は数多く、松竹では、五所平之助、豊田四郎、吉村公三郎、木下恵介、東宝では、谷口千吉、佐伯清、関川秀雄などを指導した。ホームドラマを中心に生き生きと日常を描写する作風は受け継がれ、日本映画の基礎を形づくった。島津保次郎が日本映画に及ぼした影響は少なくない。

五所平之助監督作品

1931年／57分　 *英語字幕付
出演 : 渡辺篤、田中絹代、市村美津子、伊達里子

1935年／67分　 *英語字幕付
出演 : 斎藤達雄、吉川満子、葉山正雄、坪内美子、田中絹代

1936年／111分　 *英語字幕付
出演 : 飯塚敏子、徳大寺伸、飯田蝶子、坂本武、吉川満子

清水宏監督作品

1937年／73分　 *英語字幕付
出演 : 桑野通子、佐野周二、爆弾小僧、突貫小僧、岡村文子

1937年／64分　 *英語字幕付
出演 : 佐野周二、日守新一、近衛敏明、笠智衆、水戸光子

1929年／35分　*伴奏付き上映(23日のみ)　*英語字幕付
監督 : 清水宏、大久保忠素
出演 : 新井淳、高尾光子、水島亮太郎

1941年／29分
出演 : 大山健二、若水絹子、大塚紀男、横山準、大藤亮、末松孝行、古谷輝男

小津安二郎監督作品

1933年／46分　　*無声　 *英語字幕付
出演 : 岡田嘉子、江川宇礼雄、田中絹代、奈良眞養

1936年／24分　 *英語字幕付
出演 : 尾上菊五郎、尾上琴次郎、尾上しげる

1929年／14分　*伴奏付き上映　*英語字幕付
出演 : 斎藤達雄、青木富夫、坂本武

衣笠貞之助監督作品

1935年／98分　 *英語字幕付
出演 : 林長二郎、嵐徳三郎、高堂国典、伏見直江、藤野秀夫

溝口健二監督作品

1939年／143分　 *英語字幕付
出演 : 花柳章太郎、森赫子、河原崎権十郎、梅村蓉子、高田浩吉

田中絹代出演作品

1938年／89分
監督 : 野村浩将
出演 : 田中絹代、上原謙、三桝豊、桑野通子、佐分利信

1951年／98分　　*英語字幕付
監督 : 伊藤大輔
出演 : 阪東妻三郎、月形龍之介、田中絹代、山田五十鈴、佐田啓二

1952年／136分／東宝　　*英語字幕付
監督: 溝口健二
出演: 田中絹代、三船敏郎、山根寿子、松浦築枝、進藤英太郎

その他の出演作品：
「春琴抄お琴と佐助」　「お加代の覚悟」　「マダムと女房」　「人生のお荷物」　「東京の女」

田中絹代 TANAKA Kinuyo （1909～1977）プロフィール

1909年11月29日山口県下関市生まれ。1924年に松竹下加茂撮影所に入所し、野村芳亭監督の「元禄女」でデビュー。その後松竹蒲田撮影所に移り、五所平之助監督作「恥しい夢」などに出演。当時の人気スター鈴木傅明とのコンビで松竹のドル箱スターになり、会社幹部に昇進した。また、日本初のトーキー映画「マダムと女房」（五所監督）に主演し、トーキー時代でもスターとして迎えられ、特に上原謙とのコンビで1938年に公開された「愛染かつら」は空前の大ヒットとなった。終戦後も、溝口健二監督作「女優須磨子の恋」や小津安二郎監督作「風の中の牝鶏」などに出演し高評価を得、1947、1948年と毎日映画コンクール女優演技賞を連続受賞。その後日米親善大使を務めるなどしたが、スランプもあり松竹を退社。だが、1952年に溝口監督の「西鶴一代女」に主演。この作品はヴェネチア国際映画祭で国際賞を受賞し、完全復帰を果たす。翌1953年には同じコンビ製作した「雨月物語」が、ヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞を受賞。また、同年には日本で初めての女優監督として「恋文」を撮った。その後も木下惠介監督の「楢山節考」や小津監督作「彼岸花」へ出演するなど、映画界をリードする活躍を続ける一方、「前略おふくろ様」などテレビドラマにも活躍の場を広げる。1974年に主演した熊井啓監督作「サンダカン八番娼館望郷」では、円熟した演技が高く評価され、ベルリン国際映画祭銀熊賞（女優賞）、芸術選奨文部大臣賞を受賞。出演映画が、世界三大映画祭（カンヌ・ヴェネチア・ベルリン）のすべてで受賞するという快挙を成し遂げ、52年の女優人生で250本以上の作品に出演した。1977年3月21日、脳腫瘍のため67歳で死去。

短編作品

1929年／11分／24fps　*伴奏付き上映
監督 : 斎藤寅次郎
出演 : 斎藤達雄、松井潤子、坂本武、吉川満子、小倉繁

1930年／14分／24fps　*伴奏付き上映　*英語字幕付
監督 : 斎藤寅次郎
出演 : 渡辺篤、横尾泥海男、青木富夫、坂本武

1931年／28分／24fps　*伴奏付き上映　*英語字幕付
監督 : 成瀬巳喜男
出演 : 山口勇、浪花友子、加藤精一、明山静江

1931年／31分／24fps　*伴奏付き上映
監督 : 野村浩将
出演 : 小藤田正一、髙尾光子、新井淳、阪本武

1934年／22分　*伴奏付き上映　*英語字幕付
監督 : 佐々木啓祐、斎藤寅次郎
出演 : 谷麗光、柳井小夜子、小倉繁、阿部正三郎