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2009年11月26日 『堀川中立売』舞台挨拶・Q&A

Butai1.jpg 11月26日、有楽町朝日ホールでコンペティション作品『堀川中立売』が上映された。2004年『おそいひと』で東京フィルメックスに参加をしている柴田剛監督が、京都を舞台に大胆なパラレルワールドを描く今作品は完成したばかり。フィルメックスがワールドプレミアとなる。上映前には柴田監督を始め、個性的な俳優陣が登場し、賑やかな舞台挨拶となった。また上映後は不思議な『堀川中立売』ワールドへ多くの質問が監督に投げかけられた。

上映前には柴田剛監督と主人公・信介役の石井モタコさん、ツトム役の山本剛史さん、寺田役の野口雄介さん、サエ・パン見せ役(二役)の清水佐絵さん、安倍役の堀田直蔵さん、加藤the cat walk ドーマンセーマン役の秦浩司さん、キララ役の祷キララさんが登壇した。
 
最初に柴田監督から「ずっとばたばたして、内心今なにが起きているのかわかっていないのですが今日一緒にお客さんと一緒に見ます」とコメント。ぎりぎりまで制作作業が行われていたこの作品は、関係者もまだほとんど見たことがないという出来立ての作品。舞台挨拶に登場した出演者達も、完成したばかりの作品をともに見られる喜びを語った。
 
上映終了後に再び大きな拍手で迎えられた柴田監督は今の気持ちを聞かれ、「気持ちよかったです」と手ごたえを得た様子であった。
 
QandA1.jpg まずは東京フィルメックスの市山尚三プログラム・ディレクターより、奇想天外な設定に関し、このストーリーの着想はどこから来たのかという質問が出た。この作品の発想には二つの源があると答えた。
一つはコメディへの挑戦。「僕が好きだったドリフターズとか、カトチャンケンチャンごきげんテレビとか、どこら辺が笑いか分からないような笑いが好きなんです」と柴田監督は語る。全編に流れるコメディ要素は前作「おそいひと」とは違う、新しい柴田ワールドを作りだしている。
もう一つは秋葉原事件後の街の雰囲気。「秋葉原事件の後に秋葉原に行ったことがあったのですが、閑散としているんです。皆、真ん中の道を歩かない。横道歩きながらしかも後ろめたい気持ち。いいようの知れない感じでこれはなんだろう。そういう事件はどれ位のスピードで消えてしまうのだろうという思いがあって、映画で表現ができるんじゃないのかなと」と犯罪のエピソード作りのきっかけになったことを明かした。
 
柴田監督の前作である、『おそいひと』の主役を演じ、本作でも寺田の保護司というキーパーソンを演じる住田雅清さんに柴田監督がコメントを求めると会場からは大きな拍手が起こった。保護司のキャスティングを考えていた際、「目の前に住田さんがいて、この人でいいじゃん、的な感じで(笑)」ということで保護司役は決まったのだそう。それでも、住田さん演じる“寺田の過去を一緒に背負う保護司”はひときわ存在感を放つ人物である。住田さんは、初めて見る完成した『堀川中立売』に「不思議な感じが心地いいね」とコメントした。
 
QandA2.jpg 次に、ホームレス、ツトムが語るセリフに、フランスの精神分析家ラカンの言葉を比喩として使用しているが、どれ位本気(真剣)なのかとの問いに場内からは笑いが起こる。
「今回『堀川中立売』のエントリーが決まり、一番最初にQ&Aでこれはつっこまれたらまずいだろうと思ったのが、ラカンなんですよ。そういう面ではラカンに対しては生まれて初めて真剣に向き合いました。助監督の佐々木育野君が構成台本を書いているのですが彼はインテリなんですよ。人のせいにするのが大好きなんで、いいですか?それくらいで」と照れくさそうに話を終わらせた。ラカンと出てくると身構えてしまうかもしれないが、ホームレスから出てくる解釈はどのようなものか?実際に見て確かめて欲しい。
 
続いて、後半のカオスの状態のところは脚本の段階からあったのかの問いに対し、最初からパラレルワールドの戦いを撮る際、3DやCGの方法ではない方法を模索しており、小劇団の作品が「コテンパンに好きなことをやっている」ということに強く影響を受けたと振り返る。演劇的な強いエネルギーを感じるそのシーンは見所の一つ。強烈なインパクトを与えている。
 
次に、共同脚本の作業にプロセスについて質問が出た。
共同脚本製作者の松永後彦さんとは5年ほど一緒に脚本を合同で書き続け、今作品についてはざっくりとした流れを松永さんが書き、合宿で調整をかけたのだそう。その調整法がユニークだ。「一回脚本をハサミでチョキチョキ切って、紙切れにして貼って、つながりがおかしいところなどを見ていく。それから、それを見ながら大量に酒を飲んでバカ笑いしながら直していく」。二人だからできる脚本制作の楽しさを語り、二人だからこそ「映画の神が降りて」できた名場面があると語った。
 
最後にこの作品を手がけた、シマフィルムの志摩プロデューサーが紹介された。今後も京都発信の映画制作の予定があり、柴田監督も劇中の信介、ツトムのように忙しく制作に携わっているとのこと。「僕らの中で(製作中の)映画のキャッチコピーは「日給1000円の神様」なんです」と語りQ&Aを締めくくった。
 
 
『堀川中立売』は2010年春、ポレポレ東中野及び吉祥寺バウスシアターで上映予定。


(取材・文:安藤文江/写真:秋山直子)

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投稿者 FILMeX : 2009年11月26日 23:00



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