11月25日、有楽町朝日ホールにて特別招待作品『甦りの血』の上映終了後、豊田利晃監督によるQ&Aが行われた。豊田監督作品のファンが多く訪れた会場は、作品の独特な雰囲気と圧倒的な重厚感に飲み込まれ、その余韻を残しつつも多くの人から質問の手があがり活気溢れるものとなった。
まず、タイトルを決めた段階はいつかという質問に「タイトルは準備段階から決まっていました。タイトルに「血」がつく映画は客が入らないと言われていたのですが、『甦りの血』で押し切りました」と豊田監督はにこやかに答えた。キャスティングを決めた経緯や意図については「中村達也さんとはここ数年、一緒にバンドをやったりしていました。人間の生命力と言われた時に、中村さんのドラムが非常に素晴らしく心に響いて、そういう野獣のような、心に何かを持っている人でないとこの主役はつとまらないなと思って決めました」と語る。
草刈さんはオーディションで選ばれたが、凛としたオーラが際立っていたという。豊田監督の作品には毎回出演している渋川さんについては、今までとは違う役を与えたかったという。渋川さん演じる大王は二代目という設定。現代の二世政治家への皮肉をこめて「二代目の大王は軽い奴にしよう」との考えで決められたとのこと。
また、音楽についても多くの質問が寄せられた。劇中に使用されるのは中村さんが参加しているバンドTWIN TAILの楽曲。豊田監督自身ここ数年、TWIN TAILに映像で参加している。「使っている曲は全てライブでやった曲で、それを僕がまとめて、映画に貼り付けた。だから、TWIN TAILありきの映画なんです」と映画と音楽の密な関係を明かした。
なぜ題材として小栗判官を選んだのか、という質問には「小栗判官の話の中で一番面白いと思っている部分は、死んだ相手がまた甦ってくるというところ。昔の説経節などでは死の扱いがちょっと軽くて、今の日本人の考え方とちょっと違うように思えたのですが、それに僕は救われるような感じがして。ちょうどこの映画を作る時、5分に1人自殺者がいるというニュースが頻繁に流れていて、そういうものの為に何か作りたいと思いました」と話す。因みにこの作品は魯迅の『鋳剣』からもインスパイアされているという。
作中には独特な死生観が見られるが、それは監督個人の死生観にもとづいたものなのだろうか、という問いには「誰だって現世に対する気持ちとか、死生観とかあると思うのですけれど、それを言葉でうまく表現できないから映画にしたんです。だから僕は映画を観て感じてもらった方がいいと思う。言葉では言えない」と答えた。
『甦りの血』は12月19日より渋谷ユーロスペースで公開。
(取材・文:水口早苗/写真:村田まゆ)
投稿者 FILMeX : 2009年11月25日 19:00