第5回東京フィルメックス デイリーニュース



11月20日(土)〜11/28(日)、開催の模様をデイリーでレポート!
※即日更新予定ですが、遅れる場合もありますので御了承ください。


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「雲の南へ」朱文監督 単独インタビュー
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「私たちの世代は両親など上の世代を理解しようとしませんでした。そういった想いが、この映画の出発点となっています。父母の世代を理解するという主題に加えて、“人間が別の人生を生きたらどうなるか”というテーマです。誰にでももう一つの人生があると思うんです。それは幻想的なものではなく、様々な可能性を含んだ人生。しかし、片方の人生を選んだ時に、もう片方の人生は失われていきます」









 この映画の主人公は中国の北部に住む中年男。若い頃に結婚をするが、長くは続かず、男手ひとつで3人の子供を育ててきた。長い間、人のためだけに生きてきた主人公が、子供たちの自立をきっかけに、若い頃に行くはずだった雲南へ旅立つという物語。

「中国は北と南に別れています。北に住んでいる人は“南へ行けば夢が叶う”、南に住んでいる人は“北にはロマンがある”と、それぞれお互いの土地に幻想を抱いています。この映画の主人公は北に住んでいますから、南の雲南に憧れる。そこへ行けば人生が開けていたのではないかと、雲南を理想化しているのです」

 雲南への旅は、もう一つの人生を追う旅でもある。娘と離れて遠い場所へやって来た父親の姿を通して、理想と現実の違いをまざまざと見せつけられる。主人公を演じているのは中国の名優・李雪健(リー・シュエチエン)。まるで彼を想定して脚本を書いたかのように思えるが…?

「いいえ、違います。この映画の準備に入った頃、シュエチエンは癌を患っていて、半引退状態だったので彼を起用することは考えられませんでした。ところが、彼は癌を克服し、出演できるまでになったのです。それは得難いことでした。彼の深い人間性がイメージするキャラクターにぴったりだったし、大病を経験した彼なりの考えを役にも投影できたのではないかと思います」

 警官役で『青い凧』の監督・田壮壮(ティエン・チュアンチュアン)が出演しているのも見逃せない。「実は彼はプロデューサーとしても関わっているのです。シュエチエンが“演技ができるまでに回復した”と私に教えてくれたのは、彼です」

(取材・文 北島恭子)




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