第5回東京フィルメックス デイリーニュース



11月20日(土)〜11/28(日)、開催の模様をデイリーでレポート!
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「柔道龍虎袴」ジョニー・トー監督 Q&A
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柔道という絆で結ばれた若者たちの青春を、トボケたユーモアと熱を持って描いた「柔道龍虎榜」。今もっとも香港で注目されるジョニー・トー監督の新作の上映ということもあり、会場は立ち見が出るほどの満員。笑いと感動の余韻を残しつつ、柔道家のようにガッチリとした体躯のジョニー・トー監督が壇上に登場し、Q&Aは始まった。











 男性キャラの骨っぽい撮り方には定評のあるトー監督。“主役だけでなく脇役のキャラクターも若い俳優がかっこいいが、彼らの個性を意図的に強調したのか?”と、女性客から広東語で質問が。答えは「主役の男優やヒロインだけでなく、それぞれの俳優の演技に見どころがあります。それぞれのキャラクターには、そこに存在しなければいけない理由がある。私自身、キャラクターの存在にはこだわっている」とのこと。他に技術面では“全体的に夜のシーンが多く、暗い映像だったのはなぜ?”という問いも投げかけられた。「香港の昼のロケは人通りが多いうえに規制もあるから、ある意味そうせざるをえませんでした。それに太陽の光をコントロールするのも困難な作業です。夜の撮影なら、ライトのコントロールだけで済むので私としては撮りやすい」と答えるトー監督。すかさず続けて「もうひとつの重要なのは、夜になると私は元気が出るんです」と答え、場内の笑いを誘った。

映画のエンディングでは、トー監督が黒澤明への敬意を表明している。本作が黒澤の「姿三四郎」へのオマージュでもある点にも、質問が飛んだ。「言うまでもなく、この映画は黒澤作品から多大な影響を受けており、また黒澤監督は私がもっとも尊敬する映画監督でもあります」。主人公の男と、ヒロインが、それぞれに逃げるシーンがあり、そこでたがいに脱げた靴を拾って追いかけて渡すのだが、そこが印象的だったという観客も。これにトー監督は「このシーンも黒澤監督に感謝しなければならない。黒澤映画にも、靴をとおして男女に共感を抱かせるものがある。劇中の男女は、おたがいに憎からず思っているが今回はラブストーリーではないので、黒澤作品からヒントをいただき、抑制をもってそれを表現することができた」と答えた。

 黒澤明はアカデミー賞名誉賞を受賞した際のスピーチで、“私はまだ映画というものを、はっきりとつかんでいない”と語った。「私は映画の奥深さを知るために映画を撮っている」というトー監督の言葉にも、そんな巨匠の姿勢に通じるものがある。映画の求道者たらんとする監督に惜しみない拍手が送られ、Q&Aは幕となった。

(取材・文/相馬学)




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