11月20日(土)〜11/28(日)、開催の模様をデイリーでレポート!
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「懺悔<ざんげ>」ソン・イルゴン監督 Q&A
交通事故で記憶の一部を失った男が、森のコテージで起こった男女の惨殺事件とその背後に潜む驚くべき真実に迫っていく『懺悔』。現在日本で脚光を浴びる韓国映画であり、2001年の東京フィルメックス最優秀作品賞受賞作『フラワー・アイランド』に続くソン・イルゴン監督の第2作とあって、多くの観客が上映終了後のQ&Aに参加した。
「私はなるべく脚本を具体的に書こうとするタイプです。映画のトーンやムードなどについても細かく書き込みます。そしてコンテを描いて入念な準備をしてから撮影に臨み、最終的に『懺悔』は全体の約90%をコンテ通りに撮りました。『懺悔』は韓国における通常の商業映画の6割程度の製作費で作った低予算映画なのです。そのため現場であれこれアドリブを加える時間も金銭的な余裕もありませんでした。一方、前作の『フラワー・アイランド』は、現場での即興で多くのことを生み出しました。一瞬の美しさを逃さないようにデジタルカメラを用いたのです」
観客の質問を受けて「人との出会いや会話を通して、何かをインスパイアされることが多い」と語ったイルゴン監督は、「『懺悔』と『フラワー・アイランド』に共通項があるとしたら、心に傷を負った人たちがどのようにして癒されるかという過程を描いていること」と説明。しかし題材は同じでも「アプローチはまったく違います。『懺悔』のほうが率直に私自身の考え方が反映されていると思う」と語った。また『蜘蛛の森』という原題については、「森の中に閉じこめられた主人公カン・ミンが、人間の生と死の鍵を握る蜘蛛の糸に引っかかってしまう。その糸がカン・ミンの人生を操る神のような存在と思えればいいと考えてこのタイトルをつけました」という。
また「主演のカン・ウソンさんの大ファンで,彼に会えると思って名古屋から来ました」とハキハキとした口調で打ち明ける若い女性からの質問が飛び出すひと幕も。「ウソンさんと一緒に来られなくて私も残念です。あなたのことは必ず彼に伝えておきましょう」と頬を緩ませた監督は、「TVのメロドラマ・スターという彼のロマンチックでソフトなイメージを利用し、その対極にある怒りの感情を際立たせたかった。普段のウソンさんは冷静な完璧主義者で、焼酎好きの面白い人ですよ」と丁寧に返答。場内は和やかなムードに包まれ、律儀で誠実なイルゴン監督に対するひと際大きな拍手が沸き起こった。
(取材・文/高橋諭治)