有楽町スバル座にて、韓国映画ショーケース2009のオープニング作品『グッドモーニング・プレジデント』の上映後、ソウルから来日したチャン・ジン監督を迎えてQ&Aが行われた。若き大統領をチャン・ドンゴンが演じ、政界をユーモラスに描いた作品。会場内は、観終えたばかりで興奮の余韻を残す観客たちの熱気で満ち溢れ、多くの質問が客席から寄せられた。
早速手を挙げたのは男性の観客。ラストシーンにジーンとしてしまった、と感想を寄せ、「なぜ、もう一人の主人公として、料理人を扱うことにしたのですか?」と質問。チャン監督は、「料理人でなくても良かったんです。大統領の官邸である青瓦台で、大統領と個人的に会える人ということを考えたときに、料理人を思いつきました」と、その設定についての経緯を語った。
続いて、チャン監督の過去の作品も観ているという女性から、「監督の映画を観ていると、ワンシーンだけチラっと出ていらっしゃるようですが、テレビの討論会のシーンに出ていらしたのは監督ではないですか?」と訊ねられた。チャン監督は、「前にも言われたのですが、今回は出てないです。自分の映画にちょっと出演するのは好きなのですが、今回はあまり気に入らなかったのでカットしました。自分自身の配役も気に入らなければいけないし、ステキに映らなければいけません。あとは、自分が出ることで、制作費を抑えられるかどうか考えます」と、ユーモアを交えながら答えた。
また、「3人の大統領のお話にはそれぞれテーマがありましたが、俳優の性格によって決められたのでしょうか」という質問には、「そういうことはないです。あて書きというのがあって、俳優のことを念頭においてキャラクターを書くということもあるのですが、そういう時は外見的なことが多いですね。とても素敵だとか、はっきりと発言するとか、そういう場合はありますが、それが内面的であることは、今後もないと思います」と否定し、「主役を演じるような俳優さんたちは、どんなキャラクターも消化してくださいます」と付け加えた。
韓国で本作を観たという女性からは、カットされた場面についての質問が寄せられ、チャン監督は、「たしかにそのシーン(日本の大使が登場する)は、私自身が決めてカットしました。韓国で上映するにあたっては、観客のみなさんは、負担なくちょっとスッキリしたような気持ちで楽しく見ることができると思いますが、日本で上映するにあたり、そのシーンをカットすることであらすじに大きな支障がでるとは思えなかったし、いかにも映画的といえるキャラクターとして描写していましたので、不必要だと思いました。『カットしませんか?』と提案したところ、配給会社の方も『それはいいですね』と喜んでくれました」と、そのシーンをカットした理由について説明した。
キャスティングについての質問には、「今回は大統領という非常に重要な立場にある役どころでしたので、そのイメージに合う方にお願いしました。私が韓国で最高の俳優さんだと思う、3人の主役(イ・スンジェ、チャン・ドンゴン、コ・ドゥシム)をまず考えました」と答え、苦労した点については、「過ぎたことは忘れてしまうタイプ」と前置きしながら、「制作する状況というのもあまり良くなく、予算をいただく上での審査も難航して大変でした。オムニバスの物語というのも、ちょっと難しい点ではありましたね。また韓国国内で政治ドラマがそれほど人気がないということもあり、危惧もあったのですが、撮影に入ってしまうと、ほとんど苦労なく順調に撮影することができました。青瓦台から何か言われるということもなかったですし、あまり苦労しなかったなという印象です」と当時を振り返った。
最後に、司会者によって本作の日本公開の決定が報告されると、会場からは拍手が沸き起こり、監督はそれに笑顔で応えながら退場した。
『グッドモーニング・プレジデント』は、11月24日(火)19:10より有楽町スバル座にて2回目の上映が行われる。
また、この作品は2010年SPO配給により日本での公開が決定している。
(取材・文:鈴木自子/写真:金沢佑希人)
投稿者 FILMeX : 2009年11月21日 20:00