上映作品 - コンペティション

アミールの胸の内
/ Inside Amir

11月22日(土)12:30 -朝日

ゲスト

アミール・アジジ(監督)

チケット購入

11月26日(水)21:10 -HTC

チケット購入

イラン / 2025 / 103分 /
監督:アミール・アジジ(Amir AZIZI)

テヘランに住む青年アミールは、イタリアへの移住を目前に控えている。彼より先に移住した恋人タラと再会し、新しい人生を始めるためだ。彼は愛用の自転車に乗り、配達の仕事をこなしつつ、友人たちとサイクリングを楽しむ。気の置けない仲間たちとかけがえのない時間を共有し、タラと過ごした過去を回想しながら、「去るか留まるか」という心の中の問いに彼は静かに向き合う。

本作は、テヘランからイタリアへの移住を控える一人の若者の日常の断片を瞑想的に見つめた作品だ。主人公の青年アミールは、自転車でテヘランの雑踏を駆け抜けながら、街と、街にいる人々との最後の繋がりを確認していく。ビザ発給を待つ日々は、彼にとって愛用の自転車でテヘランの街を彷徨う感傷的な別れの旅路となる。映画は物語の劇的な展開を排し、彼が故郷の街並みや友人たちとの日常の中で感じる「留まるべきか、去るべきか」という葛藤に焦点を当てる。損得勘定のない友人たちとの強い絆、遠くにいる恋人との電話越しの会話、そして叔父が語る異国での経験談。こうした日常の断片が、彼の心に渦巻く郷愁と不安を静かに浮き彫りにしていく。現代のイランの人々、とりわけ若い世代が直面する自己と故郷の再定義という主題が、政治的な主張を声高に訴えることなく、人生の不確かさに直面する若者の繊細な感情を通して表現された作品だ。ベネチア映画祭の平行部門であるヴェニス・デイズでワールドプレミア上映され、同部門の最高賞であるGdA Director's Awardを受賞した。

監督:アミール・アジジ(Amir AZIZI)

1984年イラン、アフヴァーズ生まれ。2003年に映画界に入り、ラクシャン・バニエテマドら著名監督の助手に。『The Idiot』(2007年)、『Two Cold Meals for One Person』(2009年)、『Family Portrait』(2010年)などの短編が国内外の映画祭で上映。初長編『Temporary』(2015年)がMedFilm Festivalで審査員賞。長編第2作『Two Dogs』(2020)はワルシャワ映画祭などで上映された。

監督ステートメント

この映画は、過去と現在の間を揺れ動きます。友情、深夜の不安、そして主人公アミールの心を引き留める街。『アミールの胸の内』は、「留まること」と「離れること」の間に存在する感情的な距離について静かに思索する作品です。正しいか誤りかではなく、何が未解決のまま残されてるのかを描こうとしました。個人の経験に根差す話ですが、普遍的な映画言語で語ることを目指しました。記憶や孤独、そして静かな変化に満ちた都市をさまよう1人の青年の姿を追いました。私は、ごくありふれた日常に宿る詩情に心を惹かれます。路上に響くささやかなリズム、動く身体、静寂の裏で感情が高ぶる瞬間。この映画では、筋書きや台詞よりも、存在感や空間、人間の脆さに焦点を当てています。私は、いかなる価値判断も見世物的な演出も排除して、現実を観察したいと思いました。観客の感受性を信じ、忍耐強いまなざしで見つめたかったのです。スローガンや大げさな音は避け、より深く澄んだ感情を追い求めました。『アミールの胸の内』は、移民問題やアイデンティティ、あるいは政治的立場を表明するための作品ではありません。なんとか水面に浮かび続けようともがくひとりの人間の物語です。映画が誠実であれば、たとえ静寂の中にあっても、観客の心と深く繋がり合えるはず―私はそう信じています。

上映スケジュール

11月22日(土)12:30 -

有楽町朝日ホール

ゲスト

アミール・アジジ(監督)

チケット購入

11月26日(水)21:10 -

ヒューマントラストシネマ有楽町

チケット購入