上映作品

『黒衣人』
Man in Black

特別招待作品

作品詳細

フランス、アメリカ、イギリス / 2023 / 60分
監督:ワン・ビン( WANG Bing )

裸の老人が、誰もいない薄暗い劇場の廊下を彷徨い、舞台に上がる。カメラは彼に近づき、旋回しながら彼の体をじっくりと捉える。彼はじっと立ち、そしてお辞儀のような動作をして、奇妙なダンスを始める…。この裸の男性は現代音楽作曲家の王西麟。彼は自作の曲をアカペラで歌い、ピアノを演奏し、続いて自分が共産党政権下の中国でどんな経験をしてきたのか、そして拷問がいかに人間を永遠に滅ぼすのかについて、自らの言葉で語る。ワン・ビンは1960年代初頭の砂漠の強制労働収容所について描いた『無言歌』等の作品で既に同様のテーマを扱っているが、彼のこれまでの作品と一線を画しているのは本作の並外れた様式美だろう。老いた体や劇場を捉えた名手カロリーヌ・シャンプティエによる綿密で驚異的な映像、激しい痛みを伴った音楽、そして歌と振付。全ての要素が相まって、真に驚くべき伝記映画として成立している。カンヌ映画祭で特別招待作品として上映された。

監督:ワン・ビン( WANG Bing )

1967年、中国陝西省西安生まれ。瀋陽の魯迅美術学院で写真を学び、その後、北京電影学院に進学し、ミケランジェロ・アントニオーニ、イングマール・ベルイマン、ピエル・パオロ・パゾリーニの作品に出会う。中でもアンドレイ・タルコフスキーを敬愛している。1990年を通じて様々な映画作品の助監督やカメラマンとして生計を立てるも、主流な映画製作やテレビ界では自身の望むような成長に繋がらないと思い、自身の映画制作を始めた。

2002年には中国北東部の巨大な工業地帯の衰退についての9時間を越える長編ドキュメンタリー作品『鉄西区』を制作。ファーストカット版として、5時間バージョンの作品が2003年のベルリン映画祭にて上映。最終的な完成版は3つのパートに分かれており、ロッテルダム映画祭にてプレミア上映。その後、2004にはフランスで配給され劇場公開された。

今日、同作はデジタル時代に開かれた新たな可能性の前触れでもある傑作として評価されている。その後も同じスタイルで制作し、システムに囚われず非常に挑戦的なテーマに取り組み続け、1950年代後半の反右派運動を描いた『鳳鳴― 中国の記憶』(2007)、極度の貧困を描いた『三姉妹〜雲南の子』(2012)、そして精神病院での生活を描いた『収容病棟』(2013)といった作品を発表。

2017年には『ファンさん』でロカルノ映画祭金豹賞を受賞し、2018年には『死霊魂』がカンヌ映画祭アウト・オブ・コンペティション部門に選出。

2021年には、パリのLe BALで「The Walking Eye」と題した展覧会が開催され、シネマテーク・フランセーズでも特集上映が実施された。また、2023年のカンヌ映画祭では2つの新作、『黒衣人』が特別招待作品部門で、『青春(春)』がコンペティション部門に出品された。

上映スケジュール

11月24日(金)10:35 -

有楽町朝日ホール

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11月25日(土)19:10 -

有楽町朝日ホール

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