上映作品 - 特別招待作品

手に魂を込め、歩いてみれば
/ Put Your Soul on your Hand and Walk

11月30日(日)17:35 -朝日

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セピデ・ファルシ(監督)

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(c)Sepideh Farsi Reves d’Eau Productions / ©Fatma Hassona

フランス、イラン / 2025 / 113分 /
監督:セピデ・ファルシ(Sepideh FARSI)
配給:ユナイテッドピープル

イラン人映画監督セピデ・ファルシが、封鎖されたガザの惨状を伝えるため、現地のパレスチナ人フォトジャーナリスト、ファトマ・ハッスーナとの約1年間にわたるビデオ通話で紡いだドキュメンタリー。爆撃や飢餓にさらされながらも力強く生きる人々の姿を、彼女の目を通して記録する。

本作はパレスチナのガザ在住の若きフォトジャーナリスト、ファトマ・ハッスーナと映画監督であるセピデ・ファルシとの1年にわたるスマートフォンを介したビデオ通話の記録である。通信環境のため時には途切れ途切れになってしまう通話を通じて、ファトマは写真や詩を語り、爆撃によって瓦礫となった街、市井の人々の行動、夕暮れの空、スカーフの揺らぎ、共に暮らす家族、そしてすでに命を落としてしまった家族や親族への言葉を重ねていく。最悪の事態を見据えつつも、笑顔や日常性を決して見失わないその語り口は、観る者に忘れがたい印象を残すだろう。尚、本作はカンヌ映画祭の並行部門であるACIDにて世界初上映されたが、本作の同部門選出が発表された翌日の4月16日、ファトマは自宅がイスラエル軍の空爆を受け、家族数名と共に死去した。悲しく、そして皮肉なことに、彼女の死によって、この作品は彼女の生きた証と戦争の現実を伝える追悼作品としてより大きな意味を持つことになった。

(c)Sepideh Farsi Reves d’Eau Productions / ©Fatma Hassona

監督:セピデ・ファルシ(Sepideh FARSI)

イラン⼈の映画監督セピデ・ファルシは、13歳で⾰命を経験し、16 歳で反体制派として投獄され、18 歳で故郷のイランを離れた。以来パリを拠点に、数学を学び、写真を撮影し、ドキュメンタリー、フィクション、アニメーションを含む 15 本の映画を制作してきた。その中には、『Tehran Without Permission』(ロカルノ映画祭)、『Red Rose』(トロント国際映画祭)、そしてイラン・イラク戦争を扱った⻑編アニメーション『The Siren』が含まれる。後者はベルリン国際映画祭パノラマ部⾨の開幕作品となり、数多くの賞を受賞している。現在はイラン・ウェスタン映画プロジェクトに取り組む⼀⽅、⾃⾝の⽣涯を題材にしたアニメーションプロジェクト『Memoirs of an Undutiful Girl』の開発を進めつつ、イランの⺠主化運動にも尽⼒している。

監督ステートメント

瞳をまとった男

私の死はきっと今
始まるのだ

⽬の前の男が
全て終わらせようとする前に
ライフルを構えるより早く…

静寂

お前は⿂か?

海の問いに私は答えなかった
私の⾁の上に降りたカラスたちが
どこから来たのかも知らなかった

もし「そうだ」と⾔ったところで
私をむさぼるカラスたちを
道理といえただろうか

私は通り抜けた
通り抜けることなく
死が 鋭い狙撃⼿の弾丸が
私を通り抜けた

そして私はこの街の天使となった
無限に夢よりもなお⼤きく
この街そのものよりも広く

ーファテム
ガザ

これはファトマ・ハッスーナ(友⼈からはファテムと呼ばれる)の⾔葉です。⻑編詩『瞳をまとった男』の⼀節です。硫⻩の匂い、死の匂いが漂う詩ですが、同時にファテムのように⽣命に満ち溢れています。しかし、それは今朝までのこと…。イスラエルの爆弾が彼⼥の命を奪い、家族の命を奪い、彼らの家を⽡礫に変えたのです。
ファテムはちょうど 25 歳になったばかりでした。私はカイロでパレスチナ⼈の友⼈を介して彼⼥と知り合いました。当時、私はガザへ⾏く⽅法を探し求めていました。ガザへの道は次々と封鎖され、シンプルながら複雑な質問の答えを探していました。「あの包囲下で、何年も⽣き延びるにはどうすればいいのか?」「パレスチナの⼈々は、戦⽕で荒廃した祖国でどのような⽇常を送っているのか?」「イスラエル国家は、数百平⽅キロメートルの⼩さな地域に、数多くの爆弾とミサイルを投下し、ガザの住⺠を飢餓に追い込むことで、何を消そうとしているのか?」
そして、ファテムはガザでの私の⽬となり、私は彼⼥にとって、世界への窓となりました。私はビデオ通話でファテムが私と共有してくれた、情熱的で⽣き⽣きとした全ての瞬間を撮影し続けました。彼⼥の笑い声、涙、希望、そして絶望を撮影しました。私は直感に従い撮影していました。これらの映像が私をどこへ導くのか知りませんでした。それが映画の美しさで、⼈⽣の美しさです。
2025年4月16日にファテムの死のニュースを聞いた時、私は信じられず、何かの間違いだと思いました。数ヶ⽉前、同じ姓の家族がイスラエルの攻撃で命を落とした時の間違いのように。信じられない思いで彼⼥に電話をかけ、メッセージを送り続けました。
指⼀本で押されたボタンが爆弾を投下し、ガザの⼀軒の家を、そこに⽣きる輝かしい命ごと消し去りました。もはや疑いの余地はありません。いまガザで起きていることは、2023 年 10 ⽉ 7 ⽇にハマスが⾏った犯罪への報復ではなく、イスラエル国家によって⻑期にわたり続けられているジェノサイドなのです。

上映スケジュール

11月30日(日)17:35 -

有楽町朝日ホール

ゲスト

セピデ・ファルシ(監督)

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