第5回東京フィルメックス デイリーニュース



11月20日(土)〜11/28(日)、開催の模様をデイリーでレポート!
※即日更新予定ですが、遅れる場合もありますので御了承ください。


DATES NAVI


ドナルド・リチー審査委員長 単独インタビュー
TOP LINE INDEX



「審査委員長という大役を打診され、即座に受諾しました。東京フィルメックスに期待を寄せている私にとっては、大変喜ばしく光栄なことですから」
 第5回東京フィルメックスのコンペティション部門審査委員長を務めるのは、東京在住の映画批評家ドナルド・リチー氏。戦後まもなく来日して日本映画の研究に取り組み、小津、黒澤、溝口らの作品を海外に紹介したパイオニア的な存在である。そのリチー氏は日本を含むアジア映画の現状をどのように捉えているのか。










「アジアは広大かつ多様な地域です。近年アジアでは多数の新作が生み出されており、それら多くの中から作品を(コンペ向けに)選出することが可能になっています。現在のアジアにおいて興味深いのは、若い映画作家たちの資金繰りの環境が好転していることです。例えば、かつてのタイやマレーシアの作家たちは映画作りの資金調達が極めて困難でしたが、今ではそれが可能になりつつある状況が生まれています。中国や台湾のような映画の歴史がある国でも、映画産業の外側で若い作家がインディペンデント映画を作れるようになってきている。これは大きな希望であり、実に興味深い現象といえるでしょう」

「日本映画界はかつてのメジャー・スタジオのシステムが崩壊しました。保守的で大きな映画会社が消えたことで、映画はある種の自由を得たといえます。しかしその一方で、スタジオ方式の中で映画製作の技術を学ぶことが不可能になってしまいました。今の映画人はピンク映画やTV、または映画学校で技術を学んでいます。しかし映画学校の数はまだ十分とはいえません。このようにメジャーが崩壊した今の日本映画界には、良い面と悪い面が共存しているのです」

「カンヌ、ベルリン、ヴェネチアのように規模が大きく、商業的な映画祭には興味がない」と断じる一方、5年目を迎えた東京フィルメックスを「作品選考、構成共に確実さが増し、多くの面で成長を遂げている」と評価するリチー氏。若手作家の新作はもちろん、同時に「若々しい心を保って映画作りに取り組むベテラン作家たち」を紹介していくという原点を、今後も守っていくことを望むと語る。

「レトロスペクティヴの選択も素晴らしいと思う。今年特集する内田吐夢は、海外では『飢餓海峡』くらいしか知られていません。私自身、公式カタログに寄稿するにあたって、かなりのリサーチを行う必要がありました。それほどまでに内田吐夢は、海外でも日本でも見過ごされてきた作家なのです。ですから私は、今回の特集を大変嬉しく思っています。そして来る2005年には、多くの映画作家が百年祭を迎えます。私が個人的に最も見過ごされている映画監督と見なしているのは豊田四郎です。いずれこの素晴らしい作家が紹介され、再評価されることを願っています」

(取材・文:高橋諭治)




BACK




フィルメックス事務局から、最新のトピックスをお届けします。「フィルメックス瓦版」