第5回東京フィルメックス デイリーニュース



11月20日(土)〜11/28(日)、開催の模様をデイリーでレポート!
※即日更新予定ですが、遅れる場合もありますので御了承ください。


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ジェームズ・クワント審査員 単独インタビュー
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 ジェームズ・クワント氏は、カナダ・トロントのシネマテーク・オンタリオでシニア・プログラマーを務める気鋭の映画研究家である。毎年トロント国際映画祭が活況を呈していることでも知られるこの都市で、多くの日本映画の特集上映を企画している彼に、まずその反響や成果について尋ねた。











「ええ、トロントは映画文化が極めて盛んな街です。私たちのシネマテークは草創期から現代までの映画を幅広く紹介することを目的に運営しており、伝統的なプログラミングを行っています。なかでも映画史上の巨人たる黒澤明らの特集を催すと、会場周辺の道に行列ができ、場内は満員になります。そればかりか北米ではほとんど知られていない増村保造の1950〜1960年代の作品を特集した際にも大きな反響がありました。来年は成瀬巳喜男の百年祭を開催する予定です。またトロントの観客は現代の日本映画への関心も高く、『幻の光』を一週間ほど公開するという試みも興行的な成功を収めました。黒澤の特集は若い男性中心、小津や溝口の特集は大学生や女性の比率が高まるといった具合に、監督ごとに客層が違ってきます。おそらく来年の成瀬は、多くの女性客が訪れることでしょう」

 では今回、審査員として東京フィルメックスに参加するクワント氏は、どのような映画との出会いを期待しているのか。

「ここ数年、私たちに新しい発見をもたらしてくれる映画はアジアで生まれています。かつてヨーロッパ映画やアメリカのインディペンデント映画が担っていた役目を、現代においてはアジア映画が果たしているのです。なかでも、すでに何度か観賞したジャ・ジャンクーの『世界』という作品は、この先何度も見てみたいと思わされる1本です。今年のフィルメックスのコンペ部門には、こうしたアジアのパワーが反映されたラインアップを期待しています。すでに出品作の何本かを見ましたが、期待通りのクオリティの高さです」

「今や映画祭は世界中の街や村に存在しますが、運営面が稚拙なものが目につきます。その点、東京フィルメックスはQ&Aでゲストと観客の議論を促すなど運営面に優れ、作品選考の質が高い。新作と古典を上映するバランスもよく、新旧の映画に同じ価値を見出している姿勢がうかがえます。特に私にとって、内田吐夢は見たくてもなかなかその機会に恵まれない映画作家でした。ですから審査員としてコンペ作品を観賞し、同時に内田吐夢に関心を寄せている私はフラストレーションを感じ始めているのです(笑)」

 最後にクワント氏と同じカナダの鬼才ガイ・マディンについて。より詳しくは、公式カタログに寄せられた彼の批評を参照していただきたい。

「実は公式カタログの原稿を引き受けつつも、私の英語がきちんと日本語に翻訳されるか不安でした。なぜなら私がいかなる英語を駆使しようとも、マディンの魅力を語り尽くせないのではないかと危惧したからです(笑)。マディンはひとつの映画をひとつの宇宙として紡ぎ上げる特異な作家で、日本人で比較しうる存在は寺山修司ではないでしょうか。マディンはあまりにも奇妙で素晴らしく、説明不可能な映画作家です。そして彼が天才であることには疑いの余地がありません」

(取材・文:高橋諭治)




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