第5回東京フィルメックス デイリーニュース



11月20日(土)〜11/28(日)、開催の模様をデイリーでレポート!
※即日更新予定ですが、遅れる場合もありますので御了承ください。


DATES NAVI


「風を吹かせよう」バルト・セン・グプタ監督 単独インタビュー
TOP LINE INDEX



「Q&Aでは話し足りなかった」というパルト・セン・グプタ監督に、引き続きインド映画の現状を中心にお話をうかがった。













 「私自身は17歳から映画作りに関わっていまして、今39歳ですから、長い間映画の仕事をしてきました。私が今度つくった映画はリアリティを追求したので、インドの伝統的な映画とは毛色が違います。インドの伝統的な映画はドラマの要素が強い。それは文化の中に根づいている民族芸能とか民間演劇などにも現われていますが、演技がかなりオーバーなところがあります。私はもっとリアルなものが作りたいと思いまして、例えば言葉使いをとっても、映画で使われている言葉はボンベイでは日常的に使われている言語なんです」

 「インドの青春映画と受けとめても良いのか?」と質問してみると、「ある意味、“イエス”です」「インドでこの映画を上映したところ、多くの人がショックを受けたと言っています。インド映画の常識を破っているからです。またセリフというよりも日常言語に近い形でシーンが展開していくので、若い人たちはまるで自分のことのように映画を見ることができたそうです。私自身もボンベイの郊外で育っていますから、その辺のリアルな感覚が描かれていると思います」

 インド映画界はここ2、3年ぐらいの間に新しい動きが起きている。
 「若い監督たちがいわゆるニューウェーブというものを作り出しています。その中でも様々で、インディペンデントなものだったり、商業的なものだったり。実はこういった状況はこれが初めてではなく、70年代にも同じような流れがありました。80年代に入り消え去ってしまいましたが、今また新しい波が再来していると言えます。ニューウェーブというのは歌と踊りがなく、この映画のように90分ぐらいの短いものです。
 もうひとつの流れとして、海外に移民したインド人たちがインドに戻ってきて映画をつくるという動きが。アメリカやイギリスにいるインド人を“在外インド人”と呼びますが、“在外インド人”という新しい市場を獲得し、彼らに向けて作られているのです。こういった流れが、インドの新しい文化を作っていくと期待しています」

 まさに変わりゆくインド産業、インド映画界を象徴するこの作品。インドの若者の視点を通して、監督は権力や物質主義に疑問を投げかけている。
 「インドを舞台にしていますが、コンセプトは普遍的なもの。日本の若者もこの映画の若者と同じ問題を抱えているのではないでしょうか。もっと若者は政治や社会に関わるべきです。そして、よりよい世界を作ってほしいと願っています」

(取材・文:北島恭子)




BACK




フィルメックス事務局から、最新のトピックスをお届けします。「フィルメックス瓦版」