第5回東京フィルメックス デイリーニュース



11月20日(土)〜11/28(日)、開催の模様をデイリーでレポート!
※即日更新予定ですが、遅れる場合もありますので御了承ください。


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トークショー「躍進する日本映画〜大阪芸大出身の新鋭監督たち」
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『鬼畜大宴会』の熊切和嘉監督、『ばかのハコ船』の山下敦弘監督、第1回フィル メックスで上映された『悲しくなるほど不実な夜空に』の宇治田隆史監督、今回のコ ンペティションで『おそいひと』が上映された柴田剛監督。大阪芸術大学出身の気鋭 の若手監督を招いたトークイベントが開催された。近年、大阪芸大からユニークな才 能が次々と輩出されるようになったののは偶然なのか必然なのか。市山プログラム・ デレクターが、4人が過 ごしたキャンパス・ライフを中心に、その秘密に迫った。











市山「ここ数年、大阪芸術大学からたくさんの才能あふれる監督が出てきて、映画業界でも話題になっています。大阪芸大出身の監督には本田隆一さんなどもいらっしゃいますが、ここまで数多くの若手が出てくるというのはすごいことのような気がします。今日は、この世代になってからの突然の現象なのかどうか、お話をうかがえればと思います。まずは4人の関係というのは?」

山下「ふたり(熊切監督、宇治田監督)が一緒で、僕と柴田が同学年で。1学年間にはさんだ先輩と後輩という関係ですね。」

市山「映画監督の中島貞雄さんが教授をしていらっしゃいますよね。」

山下「卒制を作るときには、中島先生が指導してくれます。企画やシナリオを段階から見てくれて。」

熊切「中島先生のシナリオの授業もありますが、ここにいる4人はほとんど行ってないと思います。全体的にゆるい大学なんです。」

山下「最後にシナリオを提出すれば単位はもらえるような感じで。」

市山「映研のようなサークルはあったんですか?」

熊切「はい映研は映研で独特の雰囲気があって。」

山下「この4人はサークルとかに入ってないです。」

柴田「俺、軽音に入ってたよ。」

市山「たとえば山下監督の『腐る女』はどのような経緯で作ったのですか?

山下「2年のときに1年かけて短編を撮る授業があるので、そのときに撮りました。」

市山「これはすごい映画なので、ぜひみなさんにもご覧いただきたいのですが、授業で作るものなのに、ゾンビ映画でもいいわけですね。」

山下「坂道をテーマに撮るという授業です。」

市山「坂道なんて出てきましたっけ?」

山下「いや、出てきてないです。でも中島先生が気に入ってくれて。」

市山「特殊メイクなんかもリアルで凝っていますけど、資金はどのように?」

山下「あれは熊切さんの『鬼畜大宴会』の使い回しですね。ノウハウもほとんどあの現場で仕入れて、スタッフもほとんど『鬼畜』と一緒です。」

市山「『鬼畜大宴会』は熊切監督の卒業制作ですよね。同期だけではなくて、山下監督や柴田監督など、後輩がスタッフに入っているのは?」

熊切「好きな者同士で班を作るんですけど、僕は仲間がいなくて。だったら何も知らない後輩を引き入れようと、同じ寮にいた山下に柴田とかを連れてきてもらって。学校からはカメラテスト分のフィルムが出るだけで、あとは機材を借りられるくらいで すね。だからみんなバイトしてました。企画に関する面接はあるのですが、題材は自 由です。『鬼畜』はどうしても撮りたくて、中島先生に何を言われても関係ねぇとい う感じで。先生は下品に撮ったらおしまいだ、とか血糊はきれいにやれよとかといっ てくれました。」

市山「宇治田監督の『浪漫ポルノ』も卒制ですよね。」

宇治田「どうしても予算が厳しくて、機材が借りられるという理由で院に進んで。学部にいた頃より先生の言うことを聞かず、中島先生にも怒られながらも、最後の編集でも言うことを聞かず、という感じで作りましたね。」

市山「柴田監督の『NN−891102』も卒制ですね。その前は?」

柴田「『腐る女』にスタッフで参加して、自分も撮りたくなったんですね。それで作ったのが『ALL YOU CAN EAT』という短編です。とにかくみんな貧 乏だったので、夜中にミスタードーナツとかマクドナルドのゴミをあさってたんで す。誰かが“俺たちは食える”といったら絶対に食べなきゃいけないというルールが あって。みんなが住んでた平和寮に差し入れに行って明るいところで食べたら髪の毛 が入ってたり(笑)。ミミズを食わしたら口のまわりがかぶれたりとか。そういうこと を映画にした短編です。」

山下「それを『腐る女』と同じ場所で上映しました。」

市山「それまでも作品を上映する場所というのはあったんですか?」

山下「なかったので、2つ上の先輩たちが学園祭で上映会を開いたりしてましたね。うちの大学はすごい山の中にあって周囲とつながりがなかったんですよ。作っても内輪で見る、という感じで。」

市山「大阪のプラネットでの上映会あたりから、我々の目にも触れはじめたんですかね。」

熊切「『鬼畜大宴会』『腐る女』『浪漫ポルノ』をプラネットで上映したのが最 初ですね。「エログロナイト」というしょうもないタイトルで(笑)」

市山「いまはシネトライブとかいろいろやってますね。」

山下「あれも最初は僕たちが勝手に「ガンヌ国際映画祭」という当日フィルム持ち込みOKみたいな映画祭をやっていて、プラネットの人がおもしろがってくれたんで す。それがシネトライブになったんですよ。」

市山「『鬼畜大宴会』をぴあフィルムフェスティバルに応募したのは?」

熊切「PFFくらいしか知らなかったんですよね。夕張映画祭もどうやって応募したらいいのかあまり情報がなかったんです。」

市山「その後はどんどん監督が出てくるようになって。大学で映画を学んでいるからには、みなさん監督志望だと思うのですが、どの段階から役割分担が明確になっていくんですか?」

熊切「卒制あたりから自然とですね。あといつも音楽をやってもらっている赤犬の松本章は映画学科にいながらバンドをやっていたので。どうも大阪芸大は1年ごとにヘンな人材を集めているらしいです。」

山下「受験のとき漢字とかめちゃめちゃ間違えたので、絶対に落ちると思ってました。」

柴田「6コマ漫画とか書かされるんですけど、ヘンなものを書いたやつばっかりが受かってるんですよ。」

市山「デタラメでおもしろいから採用する、というのは大阪芸大の学風に通じているのかもしれませんね。今後さらに、大阪芸大出身者が日本映画界を支える存在になるような気がします。」

(取材・文/細谷美香)




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