第5回東京フィルメックス デイリーニュース



11月20日(土)〜11/28(日)、開催の模様をデイリーでレポート!
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「ナルシスとプシュケ」ウド・キアー(俳優) 単独インタビュー
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『ナルシスとプシュケ』は、19世紀から20世紀、激動の時代の中で繰り広げられる、ある詩人のカップルの果てしない旅と波乱万丈の生き様を描く壮大な物語。当時36歳だったウド・キアーは、名前の通り自己愛の強い詩人ナルシスを演じている。











『ナルシスとプシュケ』は、19世紀から20世紀、激動の時代の中で繰り広げられる、ある詩人のカップルの果てしない旅と波乱万丈の生き様を描く壮大な物語。当時36歳だったウド・キアーは、名前の通り自己愛の強い詩人ナルシスを演じている。

「24年ぶりに見ても本当に素晴らしい作品です。撮影には1年かかりまして、映像的に様々なチャンレンジがされているにも関わらず、デジタル効果は全く使われていません。そして色彩が美しい。(1909年アイルランド生まれの画家)フランシス・ベーコンや(建物の梱包で知られる)クリストといった現代美術の影響も受けていると思います。一方、社会主義体制のハンガリー国家が製作費を出して作っている、国策映画でもあります。あの独特な時代の記録、としても非常に価値の高い映画だと思います」

元々違う役で出演予定だったウド・キアーだが、彼はある女優の演技テストの相手役を務め、その映像ラッシュを見た監督以下スタッフが、彼にぜひナルシスを、という話になったと言う。その逸話も映画を観れば大いに納得できる。金髪で自己顕示欲の強い詩人ナルシスとして画面に映るウド・キアーの立ち姿、表情、どれも本当に美しいのだ。

「当時の私はとてもルックスがよかったんです(笑)。それに私自身に、主役としてのパワーがあったんだと思います。ちなみに金髪は私のアイデア。ちょっと変身してみたかったので(笑)」

ナルシスというキャラクターは、実在のハンガリーの詩人をモデルにしている。残された自伝や詩を読み、人物像を把握したと言うウド・キアー。ナルシスという人物を、自身はどう捉えていたのか。
「ナルシストという言葉の通り、本当に自己愛の強い男です。例えば映画の中でも、プシュケがナルシスに『私の詩を読んでくれた?』と言ったとき、『そんなことはともかく私の詩を読んでみたまえ』なんて答えるような、非常にエゴイスティックな男です。プシュケとナルシス、ふたりはそれぞれ大きなパワーを持っていて、その力を拮抗させあっていたのですが、お互いが病気でふたりは愛し合うことができない、というジレンマに陥っていたわけです」

最後にガーボル監督がいかに優秀な人物だったかを語ってくれた。
「ハンガリーでは、映画作りを勉強することが出来る、ハンガリー映画アカデミーという国家機関があります。そこでは5年間の勉強の末、非常に優秀な学生ひとりだけに政府が資金を提供して映画を監督させる、というシステムがあります。ガーボルは大変才能があったので、彼はそのひとりに選ばれて卒業制作作品『アメリカン・ポストカード』を完成させることができたのです」

(取材・文/上原千都世)




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