第5回東京フィルメックス デイリーニュース



11月20日(土)〜11/28(日)、開催の模様をデイリーでレポート!
※即日更新予定ですが、遅れる場合もありますので御了承ください。


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サイモン・フィールド審査員 単独インタビュー
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サイモン・フィールド氏は、ロンドンのICA(Institute for Contemporary Arts)の 映画部門、オランダのロッテルダム映画祭で、それぞれ8年間、映画のディレクショ ンを行ってきたプロデューサーである。日本映画、特に若い作家や実験映画などに造 詣の深い彼に、アジア映画に注目する理由、また、映画祭が抱える使命などを聞い た。











「私はロッテルダム映画祭に関わる前に、ロンドンのICAでの仕事を通して、また 個人的にも日本映画に大変深い関心を持ってきました。そして北野武や、塚本晋也、 是枝裕和のような監督の作品も配給しましたし、更に若い世代のスペシャルプログラ ムを組んで紹介もしてきました。そんな経緯もあって、ロッテルダム映画祭でもアジ ア映画の紹介に力を入れてきました。この映画祭は、アジア映画に焦点を当てるプロ グラミングが特徴の映画祭として世界でも名を知られていますが、私が参加する以前 からその傾向はありました。それは、アジアが世界の中でも特に斬新でオリジナルな 映画を生み出している地域だと考えているからです。まず中国映画、特に第五世代に 注目し、次にその後台頭してきた韓国、タイ、そして日本などの映画に注目してきま した。フィルメックスもそうですが、映画祭は何か特徴があったほうが成功します。 実際、ロッテルダム映画祭は、アジアに焦点を当てることによって来場者数がぐっと 増えましたから」

「私は、日本映画、特に若手の作品は、世界の中でも非常に面白くて重要な位置を占 めていると考えています。そして若いというだけではなく、いわゆるカルト映画と呼 ばれるような作品を作っている作家たちに注目してきました。近年の日本映画の特徴 ともいえますが、映画美学の限界に挑むような、非常に斬新かつ前衛的なもの、また 形式や暴力性の限界に挑戦するようなカルト映画が、どんどん日本から出てきまし た。例えば塚本晋也や三池崇史。彼らの作品は、ロッテルダムのプログラムの中でも 比重が非常に大きくなってきました。もちろん日本映画が、もっと幅広いことは承知 しています。ですから是枝裕和のような、非常に詩情的、叙情的な作家の映画も取り 上げてきました。またロッテルダムの特徴のひとつですが、実験映画や短編映画、新 しいメディアやビデオアートといったものにも注目してきました。ですから、私はI CA時代からつながりの強かった、実験映画で有名なイメージフォーラムのプログラ ムも、ロッテルダムで毎年紹介してきました。2000年に行った日本特集でも、このプ ログラムは大変好評だったんですよ」

そんな中で、サイモン・フィールド氏が今気になっているのは中国、タイの作家たち だと言う。

「ここ3,4年、中国のアンダーグラウンド映画を作っている世代に注目していま す。デジタルビデオなど、技術革新に乗っ取った映画作りを進めている若い世代の作 品です。それからタイにも好きな作家がいます。『地球で最後のふたり』のペンエー グ・ラッタナルアーン、それに『トロピカル・マラディ』のアピチャッポン・ウィー ラセタクン監督は個人的に大変好きな監督です。ただ、作家や世代に注目はしてます が、驚くような大量に優れた作品を輩出している国として注目すべき国は、現在はま だありません」

また、サイモン・フィールド氏は、若い作家だけではなく、ベテランや見過ごされて る名匠の作品を発掘し、上映することも、映画祭の重要な仕事であり使命でもあると 感じている。

「ロッテルダム映画祭では、深作欣二のようなベテラン作家の特集上映も行ってきま した。日本映画でも若手だけではなく、歴史的に重要なベテラン作家の作品も紹介す べきだと思ったからです。ですから、今回のフィルメックスのような特集上映は、映 画祭においてとても重要な仕事です。内田吐夢、ガイ・マディン、ボーディ・ガーボ ル、彼らがいかに重要な作家であるか、今観てもどれだけ力のある作品を作ってきた か、ということを認識させてくれるからです。

日本でも、特に70年代に活躍しながら見過ごされてる作家が非常にたくさんいると思 います。大島渚などは非常に有名ですが、もっと実験的な作風の監督たち、例えば長 崎俊一のような監督は、若い世代の間ではあまり知られていないんじゃないでしょ うか。個人的に、彼はインディペント映画の中で重要な位置を占めていると思ってる んですが。それから、石井聰亙のような、現代映画史の中で非常に重要な作家の全作 品特集のようなものを組む必要もあるのではないでしょうか。ロッテルダムでも検討 したことがありますが。

作家の発掘という仕事は決して終わりがありません。映画史の中で、またインディペ ントの映画作りの歴史を振り返るときに、その中で活躍した、また埋もれた作家たち をもう一度蘇らせる作業は絶対に必要です。その方法のひとつとして東京フィルメッ クスが行っている、作家特集というのは重要な手段です。多くの映画祭が新作映画ば かりを上映しますが、過去の作品をどのように評価するか、またどの作家に焦点を当 てるか、ということは、その映画祭の映画史における立場を決める重要な選択です。 そういう意味で、フィルメックスは小さい規模の映画祭の模範的な成功例と言えるでしょう」

(取材・文/上原千都世)




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