11月20日(土)〜11/28(日)、開催の模様をデイリーでレポート!
※即日更新予定ですが、遅れる場合もありますので御了承ください。
「戦場の中で」ダニエル・アルビッド監督 Q&A
内戦中のレバノンを舞台にしながら、戦争のことをほとんど気にかけることなく毎日を送っている少女が主人公の『戦場の中で』。フランスでジャーナリズムを学び、すでに何本かの短編が高い評価を得ているダニエル・アルビッド監督が来場し、初長編監督作につい て答えてくれた。
タイトルとは裏腹に戦場の様子はまったく登場せず、内戦の現実を伝えるのは遠くか ら聞こえる爆撃の音だけ。どのように効果的なサウンド・デザイン構築していったの だろうか 。
「多くのレバノンの人々は、この映画の登場人物たちのように、“聞こえているけれ ど、よく見えない”という状況で市街戦を体験しました。17歳までレバノンに住んで いた私も、主人公のように実際の戦争よりも家のなかで起こっている出来事に心を奪 われていたのです。脚本には自分が体験したことも入っていれば、想像力を働かせて 書いたことも入っている。さまざまな争いも描かれていますが、家族もこの映画を気 に入ってくれました」
日本でレバノン映画を観る機会は少ないだけに、「舞台となっている83年当時と現在 のレバノンの状況の違いは?」という質問も。
「レバノンは平和を取り戻し、ベイルートも再建されました。90年に内戦が終決し、 “戦争のことは早く忘れたい。もう語りたくない”と考えている人が多いように思い ます」
長編デビュー作とは思えないほど緻密に丹念に描かれる家族間のやりとりが、この作 品の骨格を支えている見どころのひとつ。驚くことに、出演者のほとんどは演技未経 験者だという。
「主人公の少女は450人のなかからオーディションで選びました。メイド役の少女 もほとんど演技初経験。叔母役を演じてくれたのは、本当の私の叔母です(笑)。母親 だけはプロの女優さんに演じてもらいました。つまり私は、プロとアマチュアを混ぜ ることによって、どんなものが生まれるのかを観てみたかったのです」
フランスで暮らしながらベイルートで映画祭を開催するなど、精力的に活動している ダニエル・アルビット監督。来年の3月には今作のレバノンでの上映も決定、次回作 が楽しみ な若き才能だ。
(取材・文/細谷美香)