11月20日(土)〜11/28(日)、開催の模様をデイリーでレポート!
※即日更新予定ですが、遅れる場合もありますので御了承ください。
「アヴァニム」フレッド・ベライシュ(プロデューサー) Q&A
ユダヤ教と密着した生活のなかで精神的に圧迫される、ひとりの女性の日常をリアリズムに徹した視点でつづった「アヴァニム」。監督のラファエル・ナジャリは残念ながら来日を果たせなかったものの、代わってプロデューサーのひとり、フレッド・ベライシュが来場し、上映後の余韻が残る朝日ホールで熱心に質問に答えてくれた。
最初に、ベライシュは監督からのメッセージを紹介。「私たちが信じている、ある種の映画を作るのは困難で、世界中の多くの人々の助けによって可能になる。私たちが信じている映画、それは他人を攻撃するのではなく誠実なアプローチをとるものであり、私たちの理解と絶え間ない進歩を促してくれる内省的、また常套手段に陥らず人間のまなざしの謙虚さを探るような作品です。こういう映画文化はロウソクの炎のようなもので、消えかかりながらも時に瞬き、灯を保ち続けるのです」
ナジャリ監督はフランス生まれで、現在はNYで活動している。そんな人がなぜ、イスラエルで映画を撮ったのか。「監督はフランス国内を転々とした後に、NYで7年間過ごしましたが、そこが特別な場所となったのはユダヤ人コミュニティが存在していたからです。ユダヤ人はご存じのとおり故郷を亡くした民であり、監督はそこに自分の原点を見たのかもしれません」とベライシュは答える。また、NYにいて、イスラエルの現状をどのようにとらえていったのか、という質問への答えは、「監督はNYで脚本を書き、その後6か月イスラエルに滞在して、脚本を現実と照らして合わせるという作業を行ないました。また、現地のプロデューサーの案内でテルアビブの現状を目にしていったのです。とりわけイェメン系と呼ばれるコミュニティにひきつけられ、そこで暮らす人々に接し、理解を深めて、そこを舞台にすることに決めた。主演女優もイェメン系の役者のなかから選びました」とのこと。
商業的には厳しい作品を撮るうえでの、資金繰りの苦労を問う質問も。ベライシュは語る。「やはり困難でした。まずフランスで企画を立ち上げ、TV局が資金を提供してくれることになりましたが作品の言語(ヘブライ語)が問題となって共同製作にはいたらず、配給権を事前に売るというビジネス展開をすることになりました。フランスの国立映画センターからも助成金は出ましたが、大きな予算ではなかった。イスラエルでは現地のプロデューサーとかけあい、公的な基金を得るまでに時間がかかりましたね」
「価値基準の良し悪しを定めるための映画ではない。伝統と現代性、宗教性と非宗教性が混在する現実を、純粋なヒューマニズムの視点で描きたかった」とナジャリ監督が語る「アヴァニム」。質問した観客が口々に“感動した”という感想を漏らした、この力作は26日にも上映される。この機会に、ぜひ日本初登場となる俊英の才気にふれてほしい。
(取材・文/相馬学)