第5回東京フィルメックス デイリーニュース



11月20日(土)〜11/28(日)、開催の模様をデイリーでレポート!
※即日更新予定ですが、遅れる場合もありますので御了承ください。


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ムン・ソリ審査員 単独インタビュー
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第5回東京フィルメックスのコンペティション審査員5人の中で唯一の女優である韓国 の女優ムン・ソリ氏。第3回東京フィルメックスで上映された『オアシス』で、2002 年ヴェネチア映画祭の新人俳優賞を受賞したほか、デビュー作『ペパーミント・キャ ンディー』(2000)、三作目『浮気な家族』(2003)もそれぞれ国内外の映画祭で数々の 賞を獲得し高い評価を得ている。演じる側、すなわち審査される側から審査する側に 回った今回の経験から得たものは、思いのほか大きかったようだ。











「第5回東京フィルメックスの審査員をやらないかという話が来た時、正直私のよう な者が審査なんてする資格があるのだろうか、とも思いました。でも、とにかく嬉し くて、すぐOKの返事をしました。実は今年の東京国際映画祭の審査員の話もあった んです(最新作『大統領の理髪師』が上映された)。同じ年に同じ国から審査員の話が あるなんてちょっと驚きましたが(笑)、フィルメックスから最初にお話を頂いていた ので、こちらを引き受けることにしたんです。

ただ、もうひとつフィルメックスに来たいと思った理由があります。それはこのフィ ルメックスが新しい映画祭だからです。私は、まだ中堅にも至っていない、キャリア がまだ若い女優だと思っていますので、伝統のあるスタンダードな映画祭よりは、新 しくチャンレンジ精神にあふれた映画祭の審査員の方がいいのではないかと思ったん です。実際来てみて、私はたくさんの刺激を受け、本当に多くのことを学ばせていた だきました」

審査員として関わったおかげで、映画祭の裏側=スタッフや関係者の頑張りに直接触 れ、スタッフのために、またこの映画祭のために何か役に立ちたい、と強く思うよう になったという。
女優として改めて気付くこともあった。

「他の審査員とお話をしていて感じました。私は今まで新しい映画を観てこなかった んだなあ、スタンダードなものばかり見てきたんだなあ、と。今回フィルメックスで 上映されている作品は、さまざまなチャレンジにあふれていて、観る度に驚かされま す。羨ましいくらい。自分にはこういう新しい刺激が必要なんだな、と思いました。 私が次に出演する映画を決めるときや撮影する時には、この経験を忘れてはいけない と思っています」

審査をされる側と審査する側。両サイドからの経験は本当に貴重だったようで、今後 の俳優人生に大きく役に立つはず、と力強く主張。それはキャリアの上、というより 仕事に対する姿勢のようなものに、顕著に影響を与えてくれたと語る。

「俳優という職業は、未来が保証されていません。ですから、いい作品に出てみたい という欲と、失敗したらどうしよう、という恐怖心がいつもあります。いつまでいろ んな作品に出演できるか、という不安もあります。未来が不透明で誰も保証してくれ ない。だから時々、自分の気持ちが萎縮してしまったり、くじけそうになることがあ ります。でも今回、フィルメックスには大きな勇気を持って勇敢に作られた作品がた くさんあり、そういった作品に私も元気づけられました。今回、審査員としてこれら の作品を観て審査した経験は、これから自分が萎縮しそうになったり、気落ちしそう になったとき、それを乗り越える上で役に立ってくれるんじゃないかと思ったんで す。

私は韓国で主に活動していますが、韓国で作っている映画も、インターナショナルに なることがあるんだな、という思いが更に強くなりました。女優という職業にプライ ドを持ち、また自分が出演した作品には責任を持たなければ、と改めて思いました」

「審査員を経験してもうひとつ感じたことは、賞はそれほど重要ではない、というこ とです。作品が映画祭に出品されて上映され、国際的に多くの人の目に触れる、とい うことに大きな意味があるんじゃないかと。私は賞もいただいたこともありますし、 今回は賞を差し上げる立場になって特にそう感じました。上映されることで、もう認 められたも同然ですし、そのおまけというか激励、お祝いのような形でもらえるもの が賞ではないかと思います」

まだ映画デビューして5年も経たないキャリアながら、出演作全てが高い評価を得 て、国内外の映画祭に足を運ぶことも多いムン・ソリ氏に、いくつかの想い出を語っ ていただいた。

「ヴェネチア国際映画祭には2回行きました。『オアシス』のときは、とにかく皆が すごく関心を示してくれて、それを肌で感じることができました。あまりにも関心が 多すぎて、インタビュー攻めに合い、映画祭が開催されている島の散歩すらすること ができませんでした。2回目は『浮気な家族』で行ったんですけど、『オアシス』に 比べたらあまり注目されなかったので、海辺を歩いたり隣の島に行くことができまし た(笑)。ショーン・ペンや、コン・リー、ソフィア・ローレンさんに会って話をした り、北野武監督が隣で食事していたりして、震える位衝撃的で素晴らしい体験でし た。

ただ、ヴェネチア国際映画祭は非常に大きな映画祭なので、参加した方がエネルギー を出してしまう。でも小さな映画祭の場合、特に個性のハッキリした映画祭に参加す ると、逆に充電して勇気をもらって帰って来れるんです。新しいことを学んだり、刺 激を受けたりして、私の中に何かを詰め込んで帰ってくる、という感じがするんです ね。今の話は決して、大きな映画祭が悪くて小さな映画祭がいいという意味ではあり ません。私にとってはそういう傾向がある、ということなんですが」

「ちなみに生まれて初めて行った映画祭が、2001年の『第10回アジアフォーカス・福 岡映画祭』でした。あの時はアジアから招待された、インドとかイランとか台湾とか 中国の監督さんがいらっしゃってました。ある日、一同が集まってお食事をしたんで すね。そのときに急に喉自慢大会が始まってしまって、各国の代表者が歌を歌うこと になりました。韓国では私しか歌える人がいなかったので、アリランを歌ったんです けど、その次の日、皆が私の顔を見て『アリラン!』と指を指すんですよ(笑)。 あの映画祭は、ホントに心から暖かく歓迎してくださって、私も気兼ねなく参加する ことができました。アジアの映画人の皆さんがひとつになれたような、非常に印象的 な映画祭でしたね」

(取材・文/上原千都世)




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