第5回東京フィルメックス デイリーニュース



11月20日(土)〜11/28(日)、開催の模様をデイリーでレポート!
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「プロミスト・ランド」アモス・ギタイ監督 単独インタビュー
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 アモス・ギタイ監督の『プロミスト・ランド』は、これまでの彼の映画がしばしばそうであったように、冒頭から観客を緊迫した状況へと引き入れる生々しい臨場感に満ちた作品である。「商業映画はしばしば売春という行為をエキゾチックなイメージで描き、結果的に売春産業に貢献してきました。しかし売春の本質は女性を奴隷化することです。そろそろ売春にまつわる神話的なイメージを排除した映画を作る人間が出てきてもいいのではないかと思い、この作品を作ったのです」。











 この映画を見て驚かされるのは、冒頭の砂漠のシーンから犯罪組織に囚われた女性たちがイスラエルのクラブで身支度を済ませるまでを、ひと続きの長大なシークエンスとして描ききっていること。また、キャロリーヌ・シャンプティエの手持ちカメラが、真っ暗な砂漠でオークションにかけられる女性たちの姿を映し出すシーンがショッキングだ。

「オークションのシーンは、ある目的を持ったシーンをどのように構築すべきかのいい実例になったと思います。映画のテーマというのは実体のない抽象的なものであり、それをいかに具体化するかが問題になります。まず脚本作りの段階でそのことを念頭に置き、どのように演出すれば被害者の女性たちがスーツケースのように扱われる閉所恐怖症的な状況を表現できるかを考えるわけです」

「オークションの場面におけるシャンプティエの最初のアイデアは、光源を取りつけたバルーンのようなものを砂漠に浮かべ、全体に拡散した光をあてるというものでした。しかし私は、演出の一部としてその場に光が存在することを望んだのです。懐中電灯やヘッドライトの白い光によって、女性たちの顔が仮面を被っているかのように見せることが重要でした」

 やがて映画はそれまでのドキュメント調のタッチから一変し、ディアナ、ローズというふたりの女性に焦点を絞り、彼女たちの内面に入り込んでいく。まるで夢を見ているかのようなふたりの束の間の穏やかな時間は、唐突な爆発音によって現実へと引き戻される。

「おっしゃる通り、この映画は3つのパートに分かれていると言えます。最初のパートはドキュメント。ふたつめのパートはそのドキュメントをベースにしつつ、ハンナ・シグラ扮する組織の女性の“語り”によってスタートします。そして最後のパートでは再びドキュメントに戻ります。このパートではひどい虐待を受けた女性の頭の中が断片化しており、彼女の脳裏にはさまざまな記憶の断片が浮かび上がるのです」

 007シリーズの『ダイ・アナザー・デイ』が記憶に新しいイギリスの新進女優ロザムンド・パイク、『ニキータ』でおなじみのアンヌ・パリローが意外な役どころで出演していることも目を引く。

「ハンナ・シグラを忘れないでください(笑)。この映画には3人の有名女優が出演しています。私は『メモランダム』から『アリラ』までイスラエルの役者を起用してきました。しかし現在は犯罪ネットワークの問題に関心があり、人身売買のネットワークはひとつの地域に限定した問題ではありません。だからこそこのような国際的なキャストになったのです。ハンナとアンヌは昨年パリで開催された私のレトロスペクティブに観客として来場してくれたので、今回の出演が決まりました。ロザムンドを起用したのは、彼女のピュアな存在感が気に入ったからです」

 犯罪ネットワークが国境を越えていく様を描いた『プロミスト・ランド』は、3部作の第1作にあたるという。ギタイ監督が新たに取り組むこのテーマが、この先いかなる展開を見せていくのか注視していきたい。

(取材・文:高橋諭治)




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