11月20日(土)〜11/28(日)、開催の模様をデイリーでレポート!
※即日更新予定ですが、遅れる場合もありますので御了承ください。
授賞式、クロージング・セレモニー
11月20日からスタートした第5回東京フィルメックスもついに最終日。クロージング 作品、ガイ・マディン監督の『ドラキュラ 乙女の日記より』の上映の前に、授賞式 が行なわ れた。
林ディレクターの「審査員の皆様、素晴らしいQ&Aの場を作って 下さった観客の皆様、ボランティア・スタッフの皆様に感謝します。映画祭で大事な のは、映画を愛する 気持ちをみんなで確かめ合う場所を作ること。来年もお会いし ましょう」という挨拶のあと、審査員のドナルド・リチー氏、羽田澄子氏、ムン・ソリ 氏、ジェームズ・クワント氏、 サイモン・フィールド氏が登壇。まずは、コンペティ ション部門及び特別招待作品部門の 作品を対象に、上映会場で行なわれた観客の投 票によって決められるアニエス・ベー観客 賞が、バフマン・ゴバディ監督の『Tur tles Can Fly』に授与された。監督 は「いちばんストレートに映画を観 てくれるのは観客だと信じている私にとって、この観客賞は大きな意味がある。もち ろん審査員に尊敬の念も持っています」とスピーチし、会場と審査員から温かな拍手 が送られていた。
続いて発表された審査員特別賞〈コダック VISIONアワード〉も、同じくバ フマン・ゴバディ監督の『Turtles Can Fly』に。ドナルド・リチー審査 員長の「レベルの高いラインナップのなかから、現代アジアの状況が色濃く反映され たオリジナリティあふれる作品を選びました。これはいま作られるべき映画、つまり 戦争という状況のなかで虐げられる子供たちの映画です」という寸評に応え、監督も 再びマイクを握った。「この映画祭が終わり、国に帰ると思うと本当に寂しい。また 来年も再来年もフィルメックスに参加できればと思っています。これから1週間後 に、イラクでの公開が控えています。そこでこの賞のことを子供たちに報告したら、 きっと喜んでくれるはずです。日本でも公開され、もっともっとたくさんの人に観て 欲しい。この映画を通じて、衛星テレビからでは伝わらない、本当の現実を知って欲 しいと願っています」
続いて、最優秀作品賞はアピチャッポン・ウィーラセタクン監督の『トロピカル・マラ ディ』に。ドナルド・リチー氏からは「詩的で大胆。近い将来、マスターと呼ばれる 巨匠にな ることは間違いない」という最高級の賛辞が送られた。すでにタイに帰国 した監督からの「映画祭コーディネーターとして山形ドキュメンタリー映画祭で私の 作品をはじめて日本に紹介してくれた、藤岡朝子氏に賞状を受け取って欲しい」とい う意向により、藤岡氏( フィルメックスでは通訳としても活躍)が代理人となり、監 督からのコメントが読み上げ られた。「私のキャリアのなかでも、特別な瞬間を与 えてくれてありがとうございます。映画というメディアをイキイキとしたものにして くれるフィルメックスのスタッフの皆様にも感謝いたします。私は映画を審査不能な 芸術だと思っていますが、この賞をすべての人に送りたい。なぜなら私たちは、マラ ディ、つまり病を患っているからです。その病とは映画が進化すると信じ、頑固に取 り組む熱病のことです」
最後にドナルド・リチー氏の「フィルメックスの審査員長に選ばれたことを誇りに思 いま す。この5年間でフィルメックスは、世界のなかでも素晴らしい映画祭に成長 しました。いつもボランティアの人々がそばにいて、ここまでしっかりと運営されて いる映画祭は本当に少ない。来年の開催も楽しみにしています」という総評に盛大な 拍手が送られ、クロージング・クレモニーは幕を閉じた。
(取材・文/細谷美香)