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オープニング作品

無用の人 / In My Father's Room

11/21(土)18:45 -丸の内ピカデリーQ&A

ゲスト

原田マハ(監督)

日本 / 2026 / 109分
監督:原田マハ(HARADA Maha)
配給:ビターズ・エンド

美術館の監視員として働く聡美(蒼井優)のもとに、見覚えのない鍵が届く。送り主は父・唯一(イッセー尾形)。母(渡辺えり)と熟年離婚し、誰にも看取られずにひと月前に亡くなったばかりだった。鍵に導かれるように父の足跡をたどり始めた聡美は、骨董商のタク(永山瑛太)を通じて晩年の父の意外な側面と出会う。

作家・原田マハが2014年に刊行された自身の短編小説集『あなたは、誰かの大切な人』に収録された1編を自らの監督・脚本で映画化した長編デビュー作。キュレーターの経歴を持つ原田の絵画や古美術への豊かな造詣や、人物を描く際の成熟した視点と深い洞察が遺憾なく発揮されていることに加え、光と影の巧みな対比や色彩設計の細部までこだわり抜かれた端正で静謐な画面設計も相まって、本作を見事な映画芸術へと昇華させている。サンセバスチャン国際映画祭のコンペティション部門で上映され、国際批評家連盟賞とアテネオ・ギプスコアノ賞をダブル受賞した。

監督:原田マハ(HARADA Maha)

1962年生まれ。関西学院大学文学部日本文学科、早稲田大学第二文学部美術史科卒業。森ビル森美術館設立準備室などに勤務後、2002年フリーのキュレーター、カルチャーライターに。2006年『カフーを待ちわびて』で作家デビュー。2012年『楽園のカンヴァス』で山本周五郎賞、2017年『リーチ先生』で新田次郎文学賞、2024年『板上に咲く』で泉鏡花文学賞。主著に『キネマの神様』『本日は、お日柄もよく』『暗幕のゲルニカ』『常設展示室』など。自作短編を自ら脚色した本作で映画監督デビュー。

監督ステートメント

私は美術館のキュレーターだったが、やがて作家に転⾝して、アートを題材にした⼩説を書くようになった。アートの世界に 20 年ほど⾝を置いていた間、アート界の外側にいる⼈は決して知り得ない驚くべき事実を知り、あまたの心踊る体験した。ゆえにそれらを物語化して世に送り出す、それこそが⾃分のすべきことだと信じて実践してきた。その延⻑線上に、映画を創るという⾏為がある。

作家が監督となって⾃作を映画化する――なかなか珍しいことだと思う。が、私にはそうする強い動機がいくつかあった。 その中のひとつは、「不完全」の可視化である。

⽇本には、不完全、つまり「未完」を尊ぶ⽂化がある。間、余⽩、⾮対称、⽋落、不在、すべてを⾒せずに隠す、表裏をあえて違える、大事なことはいっそ言葉にしない。⻄洋においては中途半端とされるこれらを「美」ととらえる感覚が⽇本にはある。それはいったいなんなのだろう。

私は若い頃に欧⽶のさまざまな⽂化――アート、映画、ファッション、⼩説、ライフスタイルに憧れて大⼈になったこともあり、⽇本のあらゆる古典から心理的に距離を置きたい時期が⻑らくあった。しかしキュレーターになって海外へ出かけ、物理的な距離を置いて外から⽇本を眺めてみると、意外にも⾃分⾃⾝の⼀番深いところにあるのは⽇本の古典美や「不完全」への御し難い憧憬であり、そこにこそ⾃分の⽇本⼈としてのアイデンティティーが根ざしていると感じざるを得なくなった。

私は⽇本⼈キュレーターとして、また作家として、⽇本の美――特に「不完全」を何らかのかたちで我がものにし切ったと思えたことは⼀度もなかった。今回、映画監督としてそれに挑戦した。もちろん、簡単なことではなかった。それでもやはり私は、表現者である限り、これからも懲りずに、このもっとも難しくもっとも重要な課題に取り組むことをやめないだろう。

不完全な家族、無用の長物以外には何も遺さずこの世を去った父、交わさなかった言葉の数々。これら「未完」で「無用」な人々やものたちが内包する目に見えない「美」をこそ、本作を通して届けたいと願っている。

上映スケジュール

11/21(土)18:45 -

丸の内ピカデリーQ&A

ゲスト

原田マハ(監督)