『真昼の不思議な物体』
アピチャッポン・ウィーラセタクン インタビュー

Q. 『真昼の不思議な物体』のアイデアはどこから来たのですか?

A.  "Exquisite Corps Game"というシュールレアリストたちのゲーム(数人の参加者がそれぞれ単語を無作為に選び、それをつなげると思いも寄らぬ文章ができるという言葉遊びのゲーム)があります。私は、この2次元のゲームを、映画という4次元のゲームに置き換えること、また、西欧の価値観の中から生まれたゲームを、アジア的なスタイルに置き換えるということに興味を感じ、この映画を作ろうと思ったのです。

Q. 製作費はどのくらいですか?また、この映画はロッテルダム映画祭のフーベルト・バルズ・ファンドの資金援助を受けていますが。

A. 製作費は米ドルで8万ドル(約900万円)でした。フーベルト・バルズ・ファンドの資金を得るにはシナリオを提出せねばならないのですが、この映画には脚本がないので、とりあえず自分で集めた資金で撮影を始め、そのラッシュを見せてファンドの資金を得ました。この映画は16mmで撮られたので、35mmにブローアップするにあたり、このファンドの資金は大きな助けとなりました。

Q. この映画はタイで公開されたのでしょうか?

A. いいえ。タイの通常の観客にとって、この映画は見て面白い映画ではありません。また、もしこの映画を劇場公開しようとすると、検閲当局に見せねばなりません。この映画が検閲に引っ掛かることはまずないと思いますが、検閲のためには審査料を払わねばならず、それを払いたくないという感情もあります。この映画は実験映画を集めた映画祭で上映されたことがありますが、恐らくはそれがほとんど唯一の機会だったのではないかと思います。


監督プロフィール:1970年タイ生まれ。建築家、およびマルチメディア・アーチストとして働いた後、90年代前半に映画製作に転身。本年、初の長編映画監督作品『真昼の不思議な物体』を完成させた。最近、台湾の投資家と、‘Kick Machine’を設立。同社は現在ドキュメンタリー映画『Hope』、および長編劇映画『Blissfully Yours』を製作中。現在、タイで最も興味深い映画作家である。

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