『贅沢な骨』
行定勲 インタビュー

Q. この『贅沢な骨』は自主製作のような形で製作されたそうですね。

A.  その通りです。この映画を撮る前に撮った『ひまわり』ではスポンサーから設定などにある程度要求があったので、次には自分のやりたいものを監督したいと思い、信頼できる仲間たちとともに製作会社ムシェットを設立しました。スタッフ、キャストは原則的にノー・ギャラで、利益が上がってきた時にそれを配分するというシステムなので、製作費は驚くほど低い額です。ただ、製作の現場自体は、普通の現場とほとんど変わりありませんでした。プロのスタッフによる自主映画と言えるかもしれません。『ひまわり』を製作出資したケイエスエスにビデオ権をプリ・セールで売り、それで得た資金で製作を始めました。このため、映画の著作権は完全にムシェットに属することになっています。

Q. 脚本の作業に俳優たちが積極的に参加したと聞いていますが。

A. この映画の基本的な設定は、以前に自分で書いた短いストーリーです。これを永瀬さんと麻生さんに読んでもらったところ、二人とも乗り気になってくれ、半年くらいかけて彼らの意見を取りいれながら脚本を仕上げました。撮影前に俳優たちと綿密なディスカッションを行ったので、撮影はほぼ脚本に従って行われました。僕は、映画はある意味で不完全な芸術なのではないかと思います。俳優やスタッフたちが、自分が考えた小さな世界を越えるようなことを言ってくれることがあります。俳優やスタッフを信じ、彼らが言うことをできるだけ受け入れることが、僕の今の映画作りと言えるかもしれません。


監督プロフィール:1968年、熊本県生まれ。テレビ界の巨匠、鴨下信一や大山勝美のもとに助監督としてついた後、フリーとなり、林海象、岩井俊二の諸作やハル・ハートリーの『FLIRT』などにスタッフとして参加。映画『OPEN HOUSE』で初監督。1999年、劇場公開第1作となる『ひまわり』を発表。本作品は第5回釜山国際映画祭で国際批評家連盟賞を受賞し、国内外で高い評価を得る。その後、『閉じる日』(00)を経て、『贅沢な骨』が4作目となる。

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