『ふたりの人魚』
ロウ・イェ  インタビュー

Q. この映画の原題でもある蘇州河には何かの思い入れがあるのでしょうか?

A.  私は上海の生まれで、この河のことは昔からよく知っています。上海の人々の間では、蘇州河は負のイメージを連想させるらしく、人によっては河の存在を避けようとしているような印象を受けます。それは、人が心の中に伏せておこうとする恋愛感情に似ているように思えます。しかし、河は実際に存在しているのだから、私はそれを正面 からとらえるべきだと思います。

Q. ヒロインがナイトクラブで人魚ショーを演じているという設定は最初から考えていたのですか?

A. 最初、脚本を書き始めた時は、このような設定はありませんでした。しかし、人魚というアイデアをとりいれた後は、この企画は何としても映画化しようという気になりました。武漢(ウーハン)でこのようなショーを行っている女性がTVに出ているのを実際に見たことがあります。昔は上海でもやっていたようですが。

Q. この映画は最初TV作品として撮影されたと聞いていますが。

A. もともとTVのために企画したわけではなく、最低でもTVで放映できれば、ということで撮影を始めました。それまで監督した2作品(『デッド・エンド/最後の恋人』、『危情少女』)はいずれも35mm作品ですが、この作品は16mmで撮りました。16mm撮影は製作予算を圧縮できるということと同時に、機材やスタッフが少なくてすむという意味で、より動きが自由になるというメリットもありました。

Q. 最近、ロッテルダム映画祭の依頼で短篇のデジタル・ビデオ作品を撮られたそうですね。

A. "Waterfront"という題名の16分の作品で、もう撮影を終えました。機材は最小限で、"撮る"ということの原始的な状態の中、自分が撮りたいものに集中でき、これまでは意識しなかった要素に気づくことがありました。通 常の映画を撮ってきた人は、今後どのようなものを撮るかに関わらず、一度デジタル・ビデオで撮ってみると、いい経験になると思います。


監督プロフィール:1965年上海生まれ。北京アカデミー映画学科での卒業製作作品『Weekend Lover』(94)で、96年度マンハイム・ハイデルバーグ映画祭・監督賞を受賞。その後、テレビ向け作品の製作を経て、98年に本作品を初製作作品とする製作会社「Dream Factory」を設立。

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