『忘れられぬ人々』
篠崎誠 インタビュー

Q. この映画の構想はいつ頃からあったのですか?

A.  核になるアイデアは大学生の頃から考えていました。老人たちが人生の最後にもう一度何かに対して立ち向かうと言うものです。その後10数年間が経過し、このアイデアは自分の中で変化していきました。実際に初稿を書きあげたのは『おかえり』の後、1997年です。日本映画に関わらず、最近の映画には若い世代だけを主人公とするものが多すぎるように思います。自分の好きなベテラン俳優たちが積極的に起用される機会が少なく、そうした状況に抗う気持ちもありました。

Q. 映画の後半は前半からすると意外な展開を示しますが。

A. 確かにその通りかもしれません。脚本を呼んだある若い俳優の方に日本版『マグノリア』だと言われました(笑)。一般公開は来年夏頃ですので、それまでこの映画を見た方は、後半の展開は内緒にしておいてください。

Q. 老人達がいずれも素晴らしいですね。三橋達也さん、大木実さんはおなじみの大スターですが、もう一人、青木富夫さんをキャスティングされた理由をお聞かせください。

A. 青木さんはもともと突貫小僧という名前で小津安二郎監督のサイレント映画に子役として出演された方で、ある雑誌のインタビューを機会に知り合い、『おかえり』にも出ていただきました。べてらんの方々を起用すると、映画史的なオマージュのように受け取られることがありますが、自分の場合は決してそういうことではなく、今のその方々が輝いているから出演をお願いしたわけです。

Q. フランスのナント映画祭では三橋さん、大木さん、青木さんがそろって男優賞を、風見箪子さんが女優賞を受賞されましたね。

A. 内海桂子さんも含めた5人のベテランの方々と真田さん、遠藤君たち若い世代の登場人物たちそれぞれがドラマを抱えた群像劇を目指したので、この受賞は本当に大きな喜びでした。映画祭に参加した青木さんが、受賞式の翌朝、「夢じゃないよね」と言っていたのが印象に残っています。これをきっかけにこうした素晴らしい俳優の方々が活躍する機会が増えてくれればと思います。


監督プロフィール:1963年東京生まれ。都内の映画館などで映写技師を務める傍ら、映画ライターとしても活動。多くの8ミリ映画を撮った後、96年に『おかえり』で劇場映画デビュー。ベルリン映画祭最優秀新人監督賞など数々の賞を受賞し、国際的に注目される。99年には、北野武監督『菊次郎の夏』のドキュメンタリー『ジャムセッション<菊次郎の夏>公式海賊版』を完成。ロカルノ映画祭を皮切りに、トロント、バンクーバー、プサン等の海外映画祭に出品された。

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