アニーノ真昼の不思議な物体
ティーチイン

 特別招待作品の短編『アニーノ』の監督レイモンド・レッドと主演のロニー・ラザーロ、コンペティション部門の長編劇映画『真昼の不思議な物体』の監督アピチャッポン・ウィーラセタクンの三人が舞台に座ると、この映画祭のサブタイトル、アジア「新・作家主義」がひときわ具体的に、身近に感じられる。日本で映画を撮りたいかという質問に、両監督は口を揃えて、自分の映画は自国にルーツを持ち、その文化に支えられた発想から出発していることを強調、それを世界の人に見てもらうことに作家としての喜びがあるのだと述べた。 ウィーラセタクン監督の魅力的な謎に満ちた劇映画への質問は多く、西欧的な映画の方法論への挑戦かという問いには、むしろ自分だけのコンセプトを打ち出したかったのだと答え、3年と期限を切って、言語も宗教形態も違うタイの村々を回りながら、あたかも村人たちに監督してもらうように一つの話を追いかけて撮影したことを、資金調達の苦労話にからめて語った。いくつものバージョンが編集で可能だが、いずれにしてもタイの人達の生きているエッセンスは抽出できたのではないかと若々しい笑顔が輝く。 13分で見事にフィリピン社会を絡め撮ったレッド監督は、登場したすべての人物に 自分個人の人生がオーバーラップされているというキーワードを与えた。時間切れの本当に惜しいティーチインだった。


back