『ふたりの人魚』
ティーチイン

 目下世界中から熱い視線を注がれている中国の新鋭監督ロウ・イエ。日本では初監督作品『デッドエンド/最期の恋人』(94)が紹介されているが、これは本国では未公開という彼の三作目だ。切ない恋物語に最期まで息を詰めて見ていた観客からは質疑応答が始まると矢継ぎ早の発言。何人もの質問者から、まずは中国語で監督に本作品が見られたお礼の言葉が出、中国語映画の追っかけファンをも充分満足させた様子。この熱気に気押されたのか、監督の答えは控えめそのもの。『めまい』やバーナード・ハーマンの音楽に通じるという感想に、「ヒッチコックは大好きだが、まったく意識しなかった」。こんなピュアな二人の恋人を死なせずに生かせて欲しかったという声にも、「ぼくもそう思うが映画がここで終ったので、申し訳ないのですが」。どこの撮影が困難で、観客にはどこの部分を特に見てもらいたいかという質問には、「困難が伴うのは当たり前。見てもらいたい部分は全部」とサラリとかわしたが、この作品の本国での上映はという質問に「中国の検閲には忍耐と努力が必要」と語ったそのまなざしには、強い意志が感じられた。また監督も言葉を尽くしてその魅力を語った主演女優 ジョウ・シュンの来日予定がキャンセルされたのは、観客にとって残念なことだった。


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