デイリーニュース
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2007年11月21日 11/21 トークイベント「イ・チャンドン監督を囲んで」

2926-1.jpg 11月21日、有楽町朝日ホール11階スクエアにて行われたトークイベントに、第8回東京フィルメックスのクロージング作品『シークレット・サンシャイン』のイ・チャンドン監督が登場。この作品は今年のカンヌ国際映画祭のコンペティション部門で上映され、チョン・ドヨンが主演女優賞に輝いたことでも話題となっている。第3回東京フィルメックスでは『オアシス』で強い印象を残したイ監督。初のトークイベントには平日にも関わらず多くの人が集まり、関心の高さをうかがわせた。

 トークイベントは林 加奈子東京フィルメックスディレクターの「5年ぶりの新作をクロージング作品として上映できることをとても光栄に感じております」という挨拶で始まった。
 前日に日本に到着したばかりというイ監督はフィルメックスの雰囲気について「到着してすぐに観客とともに映画を観たのですが、観客が本当に真摯な姿勢で観ていて、映画と心を通わせている姿にとても感激しました」と述べた。
「監督第4作目にしてすでに巨匠でいらっしゃるイ監督だが、今回はその秘密に迫りたい」という林ディレクターの言葉には「巨匠とはあまりにも褒め過ぎ。林さんと私の思う巨匠は違うのかも…」と答え、会場が沸く一瞬も。そして「数々の映画祭で作品に出演している俳優たちが賞を受けているが、これは監督ならではの演出法によるものでは?」という林ディレクターの質問には「演技については特に私だけの演出法があるわけではなく、演技の基本に忠実な、伝統的なスタイルだと思います。私が考える映画の演技は、表現するのではなく与えられた状況や感情を素直に受け入れてそれに対して反応すること。アクションではなくリアクションだと思います。私の方から俳優にこういう感情を表現してほしいと言うことはありません。与えられた状況に対して何らかの反応をしてほしいのだとお願いします。こういった要求をすると俳優の多くは困ってしまうようですが」と答え、あくまで自然なスタイルを大切にしていることを明かした。
2922-1.jpg さらに『シークレット・サンシャイン』のチョン・ドヨンさんについては「俳優はシナリオを読んだ時点でそこにどんな感情が表現されているかを理解し、それを自分なりに分析して表現しようとします。しかし、私は感情を頭の中で理解するのではなく、体で体験して欲しいと思っていますし、それを俳優にも要求します。今回の映画でドヨンさんが演じた役はとても辛い感情を経験するもので、頭の中ではなく実際に感じてほしいと思ったのでとても大変だったかもしれません」
 林ディレクターが「『オアシス』を撮影した後、韓国の文化観光長官という公的な役職も経験されましたが、それによって資金面など映画製作に関して何か変化はあったか」と質問すると、「制作費を集めることに関しては特に変化はありませんでした。むしろ役職の経験は映画を作る上ではマイナスの面が多かった。映画製作から離れている時間があまりにも長かったのでいろいろな感覚を失っているような気がしましたし、こう撮ろうという確信のようなものが持てない部分もありました。他にも韓国では各地方でロケ地の誘致にとても熱心で、いろいろ援助をしてくれるのですが、私にはそれが負担に感じられたので援助は受けないようにしました。しかし、協力がないというのは大変でしたね」

 続いて会場から「今回の撮影期間と、最もテイクを重ねたシーンは?」という質問が。これには「期間は3ヶ月くらいです。現在の韓国はいいテイクが撮れるまで待つという考え方が主流ですが、私はちょっとタイプが違うかも知れません。俳優の反応を待っているのでテイクを重ねても結局は1回目か2回目のものがいいことが多いんです」との答え。ここからも俳優の演技に対して「アクション」ではなく「リアクション」と大切にする監督の考えがうかがえた。そして、キャスティングについての質問も。「キャスティングに関しては俳優の持っている感情の豊かさを重要視しています。ちなみにムン・ソリさん(『オアシス』でベネチア国際映画祭新人賞を受賞)を選んだのは2000人の公開オーディション。その中で私が心を動かされたのは二人しかいなくて、その一人が彼女でした。実はオーディションでは私以外の評価は低かったんです。韓国ではとにかく容姿の美しさ、見た目重視の傾向が強いので彼女は地味に見えたのかもしれません。でも、私は非常に豊かな何かを感じたのです。キャスティングに関しては特に何ということではなくて感じたもので選んでいるので、具体的なポイントについてお答えするのは難しいですね」(イ)

 全ての質問に丁寧に、そして謙虚に答える様子が印象的だったイ監督。その姿は心の奥深く届く監督の映画に通じるものを感じさせた。クロージング作品となる『シークレット・サンシャイン』は11月25日、有楽町朝日ホールにて上映予定。


(取材・文:清水 園子)

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投稿者 FILMeX : 2007年11月21日 16:00



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