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2007年11月21日 11/21 『13歳、スア』Q&A

kim-1.jpg 11月21日、『13歳、スア』の上映後、韓国のキム・ヒジョン監督を迎えてQ&Aが行われた。慕っていた父を亡くし、自分の本当の母親が別にいると信じる少女スアの多感な日々を描いたこの作品は、キム監督の長編第一作。スア役を「宮廷女官チャングムの誓い」『僕が9歳だったころ』で日本でも知られる名子役イ・セヨンが演じている。

 林 加奈子東京フィルメックスディレクターから紹介を受け登壇したキム監督は、大ファンだという小津安二郎の撮った東京を今回初めて訪れることができた喜びを語り、会場を埋めた観客に謝辞を述べた。
 まず、林ディレクターが「少女の心理が緻密に描かれていて、感嘆しました。脚本は監督がお書きになっていますが、スアにはご自身の少女時代が反映されているのでしょうか」と訊ねた。
「私は自分の母親が本物だと信じています(笑)」との監督の答えに、場内は笑いに包まれた。「ですが、2003年に父が他界したことが大きく影響していると思います。私は父ととても仲が良く、そのことがなければこの作品を撮らなかったでしょう」と父親への思いを語った後、家族の話題に。「実はこの映画には私の母が出演しています。列車のシーンでスアの隣に座った女性です。それから、サッカー部のコーチ役は弟なんです」
kim-2.jpg 観客から主演のイ・セヨンの印象について質問されると、キム監督は次のように答えた。
「最初に本人に会ったとき、あまりに美人なのでイメージと違うかと思ったのですが、子役としてのキャリアが長いのに人見知りであどけない印象があり、純粋さを感じました。一方で演技への集中力や吸収能力は素晴らしかった。彼女はあるインタビューで、今回のスア役で初めて本当に演技することを知ったような気がすると語っていました」

 次に、監督はポーランドのロッズ国立映画大学に留学、その後カンヌ国際映画祭シネフォンダシオンのレジデンス(若手映画作家のための滞在プログラム)に参加しているが、この2つの場で学んだことについて質問を受けた。
「ロッズは機材が充実しているとはいえませんでしたが、とても良い学校でした。私はここで映画を撮ることに対する基本的な姿勢を学ぶことができました。カンヌはちょうど私が挫折感を感じていたときに参加したのですが、そこで温かい言葉を貰い、勇気を与えられました。また、同じ志を持つ世界中から来た仲間たちと出会い、映画作りに伴う悩みを分かち合うことができたことが良かったと思います」
 物語に重要な役割を果たす美しい主題歌「フリージア」についても質問が寄せられた。スアの母がこの曲を歌うシーンが印象的だが…
「紫雨林(チャウリム)のキム・ユナさんがシナリオの世界観に共感してくれ、書き下ろしてくれた曲です。母役のチュ・サンミさんはミュージカルにも出演している女優さんで、あのシーンはご本人の歌声です。とても真心を込めて、若い頃の夢を思い出しながら歌ってくれたので、映画を通して彼女の気持ちも伝わったかと思います」

 最後に林ディレクターから次回作について訊かれると、「この勢いで、後退することなく前進していきたいですね。次回作には30歳の女性3人が登場する予定です。彼女たちは親友同士なのですが、ある事件によってそのうちのひとりが抜けることになり、残されたふたりは友情を保つことを出来るのか、という物語です」と具体的な構想を語ってくれた。
 

(取材・文:花房 佳代)

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投稿者 FILMeX : 2007年11月21日 18:00



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