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2007年11月23日 11/23 トークイベント「キャメラマンの眼」(ゲスト:山崎裕)

IMGP3369s.jpg 11月23日、有楽町朝日ホール11階スクエアにて、第8回東京フィルメックスコンペティション審査員を務める、撮影監督の山崎裕さんをお迎えしてトークイベントが行われた。TVドキュメンタリーのキャメラマンとしてはすでに長いキャリアを持つ山崎さんだが、劇場映画で活躍するようになったのは1998年の是枝裕和監督作品『ワンダフルライフ』から。「映画の世界ではまだ新人」と照れる山崎さんに、司会の林 加奈子ディレクターがキャリアの変化から映画へのこだわり、監督との仕事術に至るまで幅広いお話をうかがった。

 まずはキャリアの出発点について、「もともと映画が大好きで学生時代からキャメラマンを志していたんですが、当時の主流だったヌーヴェルヴァーグや五社映画というものにあまり興味が持てなくて、仕事としてやるならドキュメンタリーがやりたいと思ってテレビの道に進んだんです」と語った山崎さん。いずれ映画を撮りたいという思いはずっと心に抱いていたが、いつも企画倒れに終わったという。チャンスが訪れたのは、55歳を過ぎた頃だった。
「一念発起して「60歳までに映画を1本撮るぞ」と宣言したんですよ。そうしたら偶然、神の声が聞こえたというか(笑)、是枝監督から声がかかったんですね。是枝監督とはドキュメンタリーを通じて、どんな作品を作るのかということはお互いに知っていたんですが、まさか指名されるとは夢にも思っていませんでした」

IMGP3370s.jpg 山崎さんは是枝監督以外にも河瀬直美監督の『沙羅双樹』や塩田明彦監督の『カナリア』など、若手監督とのコラボレーションが目立つ。「意識的にそういう仕事を選んでいるんですか?」という林ディレクターからの質問には……
「自分と同世代の監督には組みたいと思う人があまりいなくて(笑)。20歳くらい下の監督と組むことが多いんですが、彼らは僕が60年代にリアルタイムで見ていた映画をよく勉強してる。だから10歳くらい下の団塊の世代の監督よりもかえってコミュニケーションが取りやすいんですよ。監督とは共犯関係というか、どちらがリードするかということではなく、グループとしてどういう方向に向かっていくかを重視して仕事をしています」

 是枝監督や河瀬監督といえば国際的な映画祭でも高く評価されているが、では世界で通用する画(え)とはどういうものだろうか。その秘訣を林ディレクターがうかがうと、ドキュメンタリー畑出身の山崎さんらしい気負いのない答えが返ってきた。
「それは結果的に評価されたというだけで、僕自身は特に意識してはいません。あえて言えば、テクニックに頼ったデコラティブな映像よりは、そのものズバリのストレートな映像の方が共通言語になりやすいでしょうね。僕はスクリーンの向こう側にある世界というか、もう1つの現実を想像させるような画を撮りたいと思っています。キャメラというのはあくまでも現実を映す鏡ですから、対象がなければ成り立たない。だから、まずは作品ありきなんです」

IMGP3372s.jpg 山崎さんは『バベル』(アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督)の東京ユニットの撮影を務めるなど、最近では国籍やジャンルを超えた活躍が目ざましいが、ご自身の感覚としては「どんな仕事であっても変わらない。そこにボーダーはない」という。
「監督やプロデューサーに依頼されたものでも、自分で見つけてきたものでも変わりませんね。モチベーションというのは後からついてくるものですよ。僕はただ、目の前にある現実とどう向き合うかに集中しています。どんな対象であれ、つまらないということはないんです。もしそう感じてしまったら、自分が面白さを発見できていないだけではないかと思ってしまいますね」

 最後に会場からの質問を受けつけると、「テレビと映画のキャメラの使い方の違い」「フィルムとデジタルの良い点・悪い点」など技術的な質問が多く上がった。
「基本的にはテレビも映画も変わりません。テレビでは早くからビデオカメラを取り入れたんですが、逆に映画では最初の頃はフィルムにこだわりたいと思っていました。フィルムは独特の粒子や手触り感がいとおしいんですよ。一方デジタルは機能的に便利ですね。スピーディーにいろんなものが展開できる。今では状況に応じて使い分ければいいと考えるようになりました。道具をうまく使って表現できれば、それに越したことはありませんから」

 柔軟で謙虚な人柄がにじみ出るような山崎さんのコメントの数々に、会場もすっかり魅了されていたようだ。山崎さんの最新作は岩松了監督、オダギリジョー主演の『たみおのしあわせ』。すでに映画はクランクアップしており、来年劇場公開される予定だ。キャメラを通した山崎さんの“眼”が私たちにどんな世界を見せてくれるのか、期待して待ちたい。


(取材・文:今井 祥子)

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投稿者 FILMeX : 2007年11月23日 17:00



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