東京フィルメックス・コンペティション

【第17回東京フィルメックス受賞結果】

第17回東京フィルメックスコンペティション部門審査員は以下の作品に賞を贈ります。

【最優秀作品賞】 

『よみがえりの樹』 (チャン・ハンイ/中国/2016年/80分)

副賞として賞金100万円が監督に授与されます。
授賞理由;映画監督になる前はサッカー選手になりたかったという監督の、オリジナリティーあふれる初の長編映画。中国の片田舎でゆっくりと、しかし痛みを伴いながら村が消えていくという現実を捉えています - しかもそれをセンチメンタルにはさせず、安易なノスタルジーに浸る事もなく淡々と描き出しています。その手法も、男女の性別を超えるという驚くべき展開で。どの場面も強く記憶に焼き付けられます。


【審査員特別賞】 

『バーニング・バード』 (サンジーワ・プシュパクマーラ/フランス、スリランカ/2016年/84分)

副賞として賞金50万円が監督に授与されます。
授賞理由;本作品は、1980年代後半の残虐な内戦で負った痛みに対する痛烈な叫びです。夫と義母を失い、それでも力を絞り家族を守ろうと苦戦し、挙句の果てに子供たちからの敬意を失ってしまった、とある女性の視点から描かれています。
過去に起きた、ほとんど世間でとりあげられることのなかった出来事ではありますが、現代社会において、むしろ切迫した、今日的に意味のあることとして描かれています。


■スペシャル・メンション

『私たち』(仮題) (ユン・ガウン/韓国/2015 年/95 分)
授賞理由;とても繊細且つシンプルな手法で、子ども達のストーリーを語り気持ちを表現しています。特にクローズアップの子ども達の表情は、多くを語り、我々の心を打ちます。今後が楽しみな若い女性映画監督を激励する意味で、『私たち』をスペシャルメンションと致しました。



■第17回東京フィルメックス コンペティション審査員:
トニー・レインズ(審査委員長:英国/映画評論家、映画祭プログラマー)、アンジェリ・バヤニ(フィリピン/女優、声優)、パク・ジョンボム(韓国/映画監督)、松岡環(日本/アジア映画研究者)、カトリーヌ・ドゥサール(フランス/プロデューサー)



■観客賞

『私たち』(仮題) (ユン・ガウン/韓国/2015 年/95 分)


■学生審査員賞

『普通の家族』 (エドゥアルド・ロイ・Jr/フィリピン/2016 年/107 分)

授賞理由;
普通ってなんだ。
生きてればつきまとう、普通という概念。
しかし、この映画を通して、それが主観的でしかないということに気付かされた。
愛や、親が子を想う気持ちは万人共通。
生まれ育った環境が何であれ、誰もが共通に持つ感情が描かれており、一番世界観にのめり込むことができた。なおかつ、問題提起が含まれるエンターテイメントとしての重要性を感じさせられる作品だった。
この素敵な映画を通して、自分の中にある普通というものを、改めて考えていただきたい。
“ 普通” ってなんだ。

● 学生審査員:
竹中貞人(大阪芸術大学卒)、かつりか(慶應義塾大学卒)、十河和也(明治大学)

世界的に大きな注目を集めるアジアからは、才能ある新鋭たちが次々と登場しています。
そんなアジアの新進作家が2015年から2016年にかけて製作した作品の中から、10作品を上映します。
また5名からなる国際審査員が、最優秀作品賞と審査員特別賞を選び、11/26(土)に行われる授賞式で発表します。

(日本語タイトル横の★=長編監督デビュー作)

『オリーブの山』★

Mountain / イスラエル、デンマーク / 2015 / 83分 / 監督:ヤエレ・カヤム (Yaelle KAYAM)

エルサレム東部のユダヤ人墓地の中の家で暮らす若い主婦ツヴィアがある日、目撃したものとは? 厳格なユダヤ教徒の家庭を舞台に、慎ましい生活を送ってきた主婦がこれまで想像もしなかった世界を発見するプロセスをストイックに描いたヤエレ・カヤムの監督デビュー作。

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『バーニング・バード』

Burning Birds/ フランス、スリランカ / 2016 / 84分 / 監督:サンジーワ・プシュパクマーラ (Sanjeewa PUSHPAKUMARA)

内戦中のスリランカで、8人の子を育てる平凡な主婦が、夫を民兵に拉致され殺害される。実際に内戦の時代を経験したサンジーワ・プシュパクマーラの暴力や女性蔑視への怒りがストレートに表現された力作。プサン映画祭「ニュー・カレンツ」部門でワールド・プレミア上映。

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『普通の家族』

Ordinary People/ フィリピン / 2016 / 107分 / 監督:エドゥアルド・ロイ・Jr(Eduardo ROY Jr.)

マニラの街頭でスリで生計を立てる未成年のカップル。やがて二人に子供が誕生するが……。ストリート・チルドレンを生き生きと描いたエドゥアルド・ロイ・Jrの長編第3作。フィリピン・インディペンデント映画界の登竜門であるシネマラヤ映画祭で最優秀作品賞を、ヴェネチア映画祭「ヴェニス・デイズ」部門で観客賞を受賞。

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『マンダレーへの道』

The Road to Mandalay / 台湾、ミャンマー、フランス、ドイツ/ 2016 / 108分 / 監督:ミディ・ジー(Midi Z)

ミャンマーからタイへと違法越境する途中で知り合ったリャンチンとグオ。だがバンコクで得た仕事先にも警察の捜査は及んでいく。ミャンマー出身で、現在は台湾をベースに活躍するミディ・ジーの長編劇映画第4作。今年のヴェネチア映画祭「ヴェニス・デイズ」部門で上映された。

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『神水の中のナイフ』★

Knife in the Clear Water / 中国 / 2016 / 93分 / 監督:ワン・シュエボー(WANG Xuebo)

昨年の東京フィルメックスで最優秀作品賞を受賞した『タルロ』のプロデューサー、ワン・シュエボーの監督デビュー作。イスラム教を信仰する回族の人々の日常生活を静謐なスタイルでとらえつつ、老人と牛との交流を描く。プサン映画祭「ニュー・カレンツ」部門で上映。

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『よみがえりの樹』★

Life After Life/ 枝繁葉茂 / 中国 / 2016 / 85分 / 監督:チャン・ハンイ(ZHANG Hanyi)

中国陜西省の山間の村で、数年前に亡くなった女性の魂がその息子に憑依し、かつての自分の夫に対し、願いを伝えていく……。一種の幽霊譚とも言える新鋭チャン・ハンイの監督デビュー作は、ジャ・ジャンクーが若手監督作品をプロデュースする「添翼計画」の最新作。

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『恋物語』★

Our Love Story / 韓国 / 2015 / 99分 / 監督:イ・ヒョンジュ(LEE Hyun-ju)

女性同士の間に展開されるラブ・ストーリーを奇をてらうことなく真正面から描いた、イ・ヒョンジュの長編第1作。二人のヒロインの微妙な感情の動きを見事にとらえ、チョンジュ映画祭の韓国映画コンペ部門で最優秀賞を受賞。サン・セバスチャン映画祭でも上映された。

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『私たち』★

The World of Us / 韓国 / 2015 / 95分 / 監督:ユン・ガウン(YOON Ga-eun)

学校で仲間外れにされがちな10歳の少女ソン。夏休みに引越してきた同い年の少女ジアと知り合い、友情を築いてゆくが……。新学期が近づくにつれ、家庭環境の格差が二人の友情に影を落とす。子供たちの生き生きとした表情が鮮烈な印象を残すユン・ガウンの監督デビュー作。

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『ぼくらの亡命』

Our Escape / 日本 / 2016 / 116分 / 監督:内田伸輝(UCHIDA Nobuteru)
配給:マコトヤ

東京近郊の森の中で暮らす昇。彼は美人局をやらされている女性と出会い、その境遇から救おうと誘拐する。『ふゆの獣』で2010年東京フィルメックス最優秀作品賞を受賞した内田伸輝の最新作は”他者への依存”という内田作品のテーマが極限に至るまで高められた。

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『仁光の受難』★

Suffering of Ninko / 日本 / 2016 / 70分 / 監督:庭月野議啓(NIWATSUKINO Norihiro)

なぜか女性に異常なまでに好かれる修行僧、仁光。自分を見つめ直す旅に出た彼は、寂れた村に辿り着き、村長から男の精気を吸い取る「山女」という妖怪の討伐を頼まれる。様々なジャンルの作品を発表してきた映像作家・庭月野議啓が4年をかけて製作した長編デビュー作。

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