特別招待作品

今年も映画の最先端を切り拓いてゆく、気鋭の監督たちのとびきりの新作をご紹介します。
いずれも強烈な作家性が発揮された、これらのバラエティ豊かな作品からは、映画の多彩さがうかがえるでしょう。

『The NET 網に囚われた男』オープニング作品

The Net / 韓国 / 2016 / 112分 / 監督:キム・ギドク (KIM Ki-duk)
提供:キングレコード 配給:クレストインターナショナル

ある事故により、意に反して国境線を越え、韓国警察に捕まってしまった北朝鮮の漁師。拷問を受け、韓国への亡命を強要されるが、妻子と再会したい一心を貫いて母国に戻る。だが更に苛酷な運命が彼を待ち受けていた。体制に翻弄される男の姿が重厚に描かれたキム・ギドクの傑作。

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『大樹は風を招く』クロージング作品

Trivisa / 香港 / 2016 / 97分 / 監督:フランク・ホイ、ジェヴォンズ・アウ、ヴィッキー・ウォン(Frank HUI, Jevons AU, Vicky WONG)

中国返還前夜の香港を舞台に、暗黒街に広まった噂で運命が一変してゆく、実在した3人のギャングの人生にヒントを得た脚本を映画化。ジョニー・トーが自ら主宰する「鮮浪潮短編映画祭」の受賞監督3人を起用、それぞれのパートを演出させるという方法で製作された。

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『山<モンテ>』

Monte / イタリア、フランス、アメリカ / 2016 / 105分 / 監督:アミール・ナデリ (Amir NADERI)

巨大な山が壁のようにそびえているため、太陽の光が十分に当たらず、作物も育たない村。窮状を極めた男は、遂に山そのものに挑戦する。何かに取り憑かれたかのように一つの行動を続けるという設定は、まさに『CUT』のアミール・ナデリらしい異形の傑作といえるだろう。

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『エグジール』

Exile / フランス、カンボジア / 2016 / 78分 /監督:リティ・パン (Rithy PANH)

前作『消えた画』に続いてクメール・ルージュ時代のカンボジアを扱い、カンヌ映画祭でワールド・プレミアを飾ったリティ・パンの最新作。革命の理想と現実が生み出すギャップを観る者に考えさせつつ、これまでの作品とは異なる詩的なアプローチで母国を描いた傑作。

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『苦い銭』

Bitter Money / 香港、フランス / 2016 / 163分 / 監督:ワン・ビン (WANG Bing)

雲南省出身の15歳の少女シャオミンの長距離列車の旅に始まり、やがて彼女が働く縫製工場の女性労働者たちを通して現在の中国の一つの側面を描き出すワン・ビンの最新作。ヴェネチア映画祭オリゾンティ部門でワールド・プレミアを飾り、同部門の脚本賞を受賞した。

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特別招待作品 フィルメックス・クラシック

近年の上映環境の変化や技術の革新にあわせて、デジタルリマスター作業により過去の作品を現代に甦らせる試みが、世界各地で行なわれています。
巨匠たちの名作や、映画史的に重要な位置づけにありながら上映の機会が限られていた作品をスクリーンで観ることは、「新作」に触れるような新鮮な驚きと喜びをもたらしてくれることでしょう。

『ザーヤンデルードの夜』

The Nights of Zayandehrood / イラン / 2016 / 63分 / 監督:モフセン・マフマルバフ(Mohsen MAKHMALBAF)

人類学者の父親とその娘の辿る運命を3つの時代にわたって描き、1978年のイスラム革命の意味を鋭く問う作品。検閲により、永らくイラン国内外を問わず全く観ることのできなかった幻の映画だが、ロンドンで復元作業が行われ、本年のヴェネチア映画祭で上映された。

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『タイペイ・ストーリー』

Taipei Story / 台湾 / 1985 / 120分 / 監督:エドワード・ヤン (Edward YANG)

過去にとらわれる男と過去から逃れようとする女の関係が、経済成長の中で変貌する台北を舞台に描かれたエドワード・ヤンの傑作。製作・脚本・主演はホウ・シャオシェン。台湾ニューシネマの記念碑的な作品を、ボローニャ市立シネマテークによるデジタル復元版で上映。

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『残酷ドラゴン 血斗竜門の宿 デジタル修復版』

Dragon Inn / 台湾 / 1967 / 111分 / 監督:キン・フー (King HU)

製作当時アジア各地で大ヒットを記録、カンフー映画の大ブームを巻き起こす原点となり、巨匠キン・フーの名を高めた傑作武侠映画。明朝時代の中国の一軒宿「龍門客棧」を舞台に、暴政をふるう権力者側の兵士と、それに立ち向かう剣士たちの、壮絶な戦いが描かれる。

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『俠女 デジタル修復版』

A Touch of Zen / 俠女 / 台湾 / 1971 / 180分 / 監督:キン・フー (King HU)

キン・フー作品のスター俳優たちが織り成す壮大かつドラマチックな大作であり、カンヌ映画祭で高等技術委員会グランプリを受賞したアジア・アクション映画の金字塔。特に高名な竹林での決闘は映画史上最も美しいアクション・シーンの一つと言って過言ではない。

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『ざ・鬼太鼓座』デジタル・リマスター

The Ondekoza / 日本 / 1981 / 105分 / 監督:加藤泰 (KATO Tai)

和太鼓の芸能集団「鬼太鼓座」の活動を追った傑作ドキュメンタリー。今年、生誕百年を迎えた巨匠・加藤泰の遺作だが、様々な事情により一般公開されることはなかった。本年ヴェネチア映画祭クラシック部門でワールド・プレミアを飾ったデジタルリマスターで上映。

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