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2005年11月23日

「サグァ」 Q&A

映画の上映後、カン・イグァン監督と主演のムン・ソリさんを迎えてティーチインがおこなわれました。

林ディレクター:監督は本作がデビュー作ですが、脚本も書いておられて、9月のサンセバスチャン映画祭ではモンブラン賞という新人脚本賞を受賞されていますが、これは最初からムン・ソリさんを想定してアテ書きで脚本を書かれていたんでしょうか。

監督:実は最初にシナリオを書いている時は、誰も想定していませんでした。ですが、書き終えて、この役が誰に合うかと考えた時に最初に浮かんだのがムン・ソリさんでした。

林:ムン・ソリさんから一言ご挨拶を

ムン:今回このようにまた皆様とお会いできて嬉しいです。実は、昨年の東京フィルメックスの時期にこの「サグァ」の撮影をしてまして、監督にお願いして10日ほど時間を空けていただき、フィルメックスで審査員をさせていただきました。その時は、まさかこういう形でまたお会いできるとは思わなかったのですが、去年スケジュールを空けてくれた監督にお礼を言いたいと思います。またこのようにご縁があって皆様とお会いできたことも嬉しいですし、少し長い映画にもかかわらず最後までご鑑賞いただきありがとうございます。

林:東京フィルメックスからもカン・イグァン監督に10日間空けていただき、ムン・ソリさんを審査員としてここにいらしていただけたこと、心よりお礼申し上げます。

林:ムン・ソリさんは新人監督の企画を選ばれる際にはまず脚本を読んでから選ばれるのか、監督と最初に会って企画を聞いた段階で出演しようと決められるのか教えてください。

ムン:まず、私はどんな監督かということを考える前にシナリオを読んで内容を考えます。その内容がぜひ出演してみたいいい作品だ、やりがいがあるなと思えたら、監督さんにお会いして、実際にどんな考えを持っているのかということを話し合って選ぶようにしています。ただ、カン監督が隣にいらっしゃいますが、新人監督の映画に出ることは少なからず勇気を必要とします。やはり経験の多い監督さんよりは作業をする際も冒険となることが多いです。ただ冒険であるだけに、得るものも非常に多いですし、スリルも感じることができます。今、スリルと申し上げましたが、それは一つのたとえだったんですが。実際、カン監督と衝突も多かったんです。今回の主人公というのは29-30歳の韓国の女性なんですが、そういった韓国の女性をどういうふうに等身大に、現実味を持って捉えるかという点において考え方が結構違ったりして、現実を把握するのは難しかったです。でも、今日この客席で一緒に上映を見させていただきましたが、そういう監督とぶつかり合うというプロセスも全て私の血や肉となっている様な気がします。

Q:この映画はヒロインの視点に立って、それを生かして描かれた映画だと思いますが、男性である監督がなぜこういう映画を作ってみようと思われたのか。また、最後のクレジットにインタービューをした方たちへのお礼が出てましたが、これは脚本を書くにあたって色々な男女の方にインタビューを行われたということなのでしょうか。

監督:まず自分の周りの人の話を聞いたのがこの映画を作るきっかけでした。10代の終わり頃というのは男性同士で集まると話題が殆ど女性のことに集中してまして、関心も女性にばかり向いている気がしました。この間会った女性はどうだったとか、女の子をナンパできたとかできなかったとかそういう話題ばかりなんですが、20代後半くらいになりますと、今度は結婚している人は自分の奥さん、お付き合いをしている人は恋人の話になり、ここのところの性格が違うとか、どういう関係を結んでいったらいいのかとかいった話題になってしまいます。そういうのを聞いていくうちに、愛という形を描く際に、愛の生まれる時というよりもその愛をどうやって維持していくか、その点を映画にして描けば共感を得られて、楽しい映画ができるのではないかと思い、この企画をスタートしたわけです。で、そういう性格のものでしたので、いろんな人たちから話を聞く必要がありました。50組ほどのカップルから話を聞いたんですが、そのとき私の取った方法は、まずは男性、女性別々に今までの付き合ってきた過程について全て話してもらい、両方の話をつき合わせてみるとお互い重要と考えている点が違ったり、ぜんぜん違う話になっていたり、非常に興味深かったです。当初、主人公は男性にするか女性にするかは決まっていませんでしたが、これらを参考にしてシナリオをまとめていくうちに20代後半の女性の視点から描いてみたらどうかとなったわけです。今回の映画はあくまでも女性の視点に立って描かれた映画だと言えます。

Q:最近の韓国映画に比べ、この作品は割とオーソドックスで普遍性があり、同年代の女性が感情移入しやすいと思いました。そして手法に関してはクローズアップが多用されていた作りになっていたと思います。特に、ムン・ソリさんの演技の表情の変化とか角度によっては全く別の顔に見えたり面白かったのですが、これは監督が意識されてクローズアップを多用したということがあるんでしょうか。

A:最初この映画をどういう形で撮るかを考えた時に、普通であれば場所をじっくり見せて、その後に顔を見せるという手法が多いんですが、私は場所よりも人物が重要だと思いました。皆さんもお分かりだと思いますが、ムン・ソリさんの表情の演技が非常にいいので、遠くから見せるのではなく、近くで長く表情を見せたいなという気持ちがありました。もちろん場所や環境から伝わるものもあるんですが、顔からいろんな話が分かるんではないかと思ったわけです。おっしゃるとおり、ストーリーも結構普遍的、一般的なもので取り立てて特別なお話というわけではないかもしれませんが、私は細かいニュアンスの違いを描き出したいと思いました。例えば、相手が何か一言言ったときにそれを聞く相手はどういうふうに受け止めるかというのは細やかな表情とか小さな顔の動きから分かるのではないかと思いましたのでできるだけ近くで撮影をしようという努力をしました。

林:そういういわゆる女心をすばらしく演じていただいていたんですが・・・ムン・ソリさん、監督の意図でクローズアップを多用しているというところで、特に注意したところや苦労されたところはありますか。

ムン:最初から監督はクローズアップを多用すると言う話は殆どなかったんですね。もっぱら最初の頃は、シナリオや内容について、女性の気持ちはどうだとかいうことについて話し合っていました。確かにその瞬間の表情を捉えるよと言う話は聞いていましたが、ここまでクローズアップが多いとは思わなかったんです。で、いざ撮影が始まってみますと、本当にカメラが自分の顔の間近にあって、最初はプレッシャーを感じました。馴れていませんし、クローズアップを撮られるということについて本当に肩の荷が重いような気がしました。クローズアップというのはご存知のとおり大きな画面で見ますと、小さな動きでも全て見えてしまうわけなんですね。遠くにカメラがあって演じる時には、結構体の動きを大きくしてもそれほど目立たないんですが、近くで撮られてる場合にはほんの少し体を動かしただけでも大きな動きのように見えてしまい、最初は私も体が硬直するような感じでリラックスできず、自然にできなくて難しいとなと思っていました。なぜこんなに近くで撮るんですかと不満を漏らしたこともあったんですが、だんだんやっていくうちにカメラが近くにいることに慣れてきました。今回、クローズアップを多用する映画に出演してよかったと思ったのは、演技をする上で体を大きく動かしたり、大きなアクションでなくても、心で、何かそういう表情でいろんなことを表現できるんだということを教えてもらった気がします。でも、ご覧になった観客の皆さんにはプレッシャーや負担にならなかったでしょうか。

投稿者 FILMeX : 2005年11月23日 19:00


 
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