2005年11月21日
『雪崩』生伴奏付き上映 Q&A
第6回東京フィルメックスの特集上映のひとつ「映画大国スイス1920’s-1940’s」が、ジャック・フェデー監督「雪崩」で幕を開けました。まず、スイスフィルムズのサビーナ・ブロッカルさんより挨拶、引き続き審査員のマリアン・レヴィンスキーさんから作品についての解説がありました。
ML「皆さん、こんばんは。この『雪崩』という作品は2人のスイスの映画プロデューサー、ディミトリ・ドゥ・ツバロフとフランソワ・ポルシェによりジャック・フェデーが制作したものです。ドキュメンタリーの手法がところどころで使われていますが、これは1920年代のヨーロッパでは目に見えない内面を表現することが目標となっていたからです。また、この映画ではスイス的な表現もあります。一つ目には控えめな表現であること、二つ目は自然の存在感があたえられていることです。大正15年に日本で初めて上映されて、そのときは非常に当たったそうですが、当時は弁士がついていました。今日は弁士ではなく、ニキ・ネーケの伴奏です。どうぞ楽しんでください」
また、「雪崩」の上映後にはサウンド・デザイナーのニキ・ネーケさんとのQ&Aが行われました。
林)とても素晴らしい演奏をどうもありがとうございました。これは、サイレント映画に伴奏を入れたというよりも、伴奏が入っているバージョンを見たような感じですね。サウンド・デザイナーとは、あまり耳慣れない言葉ではありますが、この上映のための準備にはどれくらいの時間がかかったのでしょうか?
ニキ)まずお礼をいいます、今日は来場いただきまして、どうもありがとう。東京フィルメックスとスイスフィルムズにも感謝しています。サウンド・デザイナーは考えてみると、ライト・デザイナーのようですが、ライトではなく音を扱っていて、また、たくさんの音と遊んでいるようです。または、絵描きのようにも考えられるかもしれません。
制作にかかった時間はトータルで、他の仕事をしながら一ヶ月くらい、最後の1週間は毎日、映画の最初から最後まで音合わせをしていました。
林)人の声にも音がついていましたが、これはどういう音を使って作っているのでしょうか?
ニキ)大切なのは、一人ずつ声がわかるように別々の音にしたことと、父と母の声の音を似た音にしたことです。これは、レコードをスクラッチしてつくりました。父の声は遅くスクラッチして、母の音は速くしています。
林)女の子の声はフルートのようでしたが。
ニキ)男の子の声はチェロ、女の子の声は横笛、フルートを使っています。
林)なるほど。音そのものをどうつくっているのか聞きたいのですが、どのように集めているのか、また音探しの工夫はありますか?
ニキ)三つの音のソースがあるのですが、一つは自然の音で、これはCDから取り込んでいます。ノックの音や水の音などの自然の音ですね。二つ目は、特にサイレント映画に伴奏をつけるときによく使うのですが、古いレコードを使います。三つ目は、自分でコンピュータを使ってつくったエレクトロニクスのサウンドです。
林)三種類の音を重ねていくわけですね。映画に音をつけるときに、特に注意していることを教えてくだざい。
ニキ)大切なのは、映画をサポートするということです。感情を盛り上げることです。ときには、アイロニーも入れながらイメージされる音と反対の音も出します。音楽を付けることは映画に魂を入れることのように思っています。
林)監督のジャック・フェデーさんは既に亡くなっていますが、もし生きていてこの会場に来てくださっていたら、もしくは出演者の方々が観ていたら、どんな感想を持たれるのだろうと思うと、とても興味深いです。
来場者とのQ&A
Q1)大変感動しました。疎開をしていたころ、家で何度も何度も見ました。9.5ミリだったのですが、今日観てみて、覚えているところが結構ありました。質問ではないのですが、とても感動いたしましたので。どうもありがとうございました。
Q2)1920年代の作品に現代の音を使っていることについて、どうお考えですか。
ニキ)いろんなサウンドを入れています。クラシック、現代、ミニマム、抽象的な音楽などです。この映画が時代を超えて感動できるものであるように、いつの時代にも合うようにと音楽をつけています。
Q3)これからこのように映画に音楽をつけていくような試みは、世界的に広がっていくと思いますか?また、もし知っている方でおすすめの方がいたら教えてください。
ニキ)まだ映画にこのようなサウンドをつけている方は、そんなに多くはないです。4~5人のグループでスイスのメトロポリス、ポーランドにもいるということを聞いたことがあります。
(取材・文責 渡辺優美子)
投稿者 FILMeX : 2005年11月21日 19:00