11月25日、有楽町朝日ホール11階スクエアにて、東京藝術大学映像研究科に在籍する森永泰弘さんを迎えて「世界を舞台に活躍する若きサウンドデザイナー」をテーマに、特別トークイベントが開催された。進行を務めた、林 加奈子東京フィルメックスディレクターとの出会いのエピソードや、映画に欠かせない「音」との関わりや、携わった作品について語った。
「映画の未来を担う作家のひとり」と林ディレクターから紹介された森永さんは、1980年生まれ。メルボルン大学でサウンドデザインを専攻した後、2005年東京芸術大学大学院映像研究科に一期生として入学。2007年修士課程修了後、現在は同博士後期課程(映像メディア学)在籍している。日本ではまだ馴染みのない、サウンドデザイナーの肩書きを日本語では『録音』に例えた上で「音と付けることで、映画の場面・空間のレイアウトしていく仕事」とイベント参加者に分かりやすく説明。
2人の出会いは、今年5月に開催されたカンヌ国際映画祭監督週間。「今年は韓国映画関係者が多く、カンヌという場所柄もあり、最初はお互い日本人と思わず英語で会話していた」エピソードが語られると、会場は笑いに包まれた。カンヌ映画祭には「サウンドデザイナーとして携わったマレーシア映画『KARAOKE』(クリス・チョン監督)が、映画祭監督週間で公式上映されることが決まり、スタッフのひとりとして参加した」と語った。
具体的なサウンドデザインの方法について、森永さんは『映画全体の音のプロデュースを引き受ける』ので「脚本の段階から『このシーンにはこの音』と提案したりもするが、当然監督やカメラマンとカメラワークについて話し合ったりもする」しかし、「自分としては『脚本の前段から知りたい』性格なので、脚本が完成してから携わると、色々聞いたり提案したくなってしまう。特に海外のスタッフと仕事をする際には、コミュニケーションが重要」と苦労する点についても語った。
現在の活動の原点について、林ディレクターが質問すると「2006年に釜山国際映画祭にて開催されたアジア フィルム アカデミー(Asian Film Academy)に参加したことが大きい」と話し、「サウンドデザイナーはタイから女性が1名、日本からは美術担当の男性が1名、総勢30名が参加し、到着したその日から、3週間みっちりと映画制作に取り組む過酷なスケジュール」その過酷さを物語るのが「自分のチームは4人とも監督志望ばかり。10分~15分の作品をそれこそ1シーンずつ担当するので、音と作品のバランスを整えるのが大変で…編集作業には徹夜もあるし、一瞬ウトウトすると講師からゲンコツが飛んでくることもあった」と語った。「この時の講師は、ダルジャン・オミルバエフ監督で、本当に色々なことを教えてもらった。先程紹介したチョン監督も参加していたし、今でも当時のメンバーとは連絡を取り合っている」
今後もマレーシア、日本と飛び回る仕事が控えている森永さん。自身が目指すのは「誰の真似ではない『自分たちの映画』を作ること。時代と共に音・機材・手法が変化していく中で、今までの常識に囚われずに活動していきたい」と抱負を語った。
(取材・文:阿部由美子/写真:金沢佑希人)
投稿者 FILMeX : 2009年11月25日 20:00