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2009年11月27日 ボランティア・スタッフ・レクチャー(2)

hori_1.jpg 11月27日、東京フィルメックスにボランティアとして参加しているスタッフへ向け、アテネ・フランセ文化センターの堀三郎さんをゲストに迎え「字幕投射」についてのレクチャーが行われた。堀さんはコンピューターを駆使したSPS字幕投影システムを開発した字幕投影の第一人者である。映画投影についての説明図を使用し丁寧に解説して頂きながら、有楽町朝日ホール13階にある映写室を見学するなど貴重なレクチャーとなった。

アテネ・フランセ文化センターがメインとしていることは映画祭に関わる業務だという。西川口スキップシティで毎年7月に行われているDシネマ映画祭のデジタルシネマ系映画館への設営をしている場面の画像を見つつ、映画祭の投影で使用されたレンズや撮影機器などについて説明される。映写レンズは安い物を使用すると、黒い部分と白い部分の境目がぼやけてしまうとのこと。その為、Dシネマ映画祭で使用されたレンズは1本300万円だそうである。レンズは念のため2本用意され、レンズだけで600万円、プロジェクター本体は1000万円と堀さんが説明すると会場からは「すごい!」「わぁ」と驚きの声が聞こえた。

hori_2.jpg 映画館作りについて「映画館は変化していくのでその変化に耐えうるような小屋作りをします。特殊な内装、映写室ということを考えると10年、15年は持つような映画館を作りたい。スクリーン、映写設備、音響設備、椅子いろいろなことを考えると1億円位はかかります。椅子が一脚10万円で、300席となるとそれだけで3000万。あっと言う間にそういう金額になるので1億はそんなに高い金額ではありません」と堀さんは語った。またアテネ・フランセ文化センターは字幕の制作だけではなく、最終的に投影する空間をどう演出していくのかということにも携わっているとのこと。

最近、デジタルシネマが話題になっているが「現在、フィルムでの上映とデジタルでの上映がちょうど重なり合っている状態です。フィルムは文化資産として残っていくと思いますが、映画祭の中でフィルムが占める割合が段々少なくなってきています。ということで今回のセミナーで十分、映写機やフィルムのことを知っておいてもらいたいと思います」と堀さん。

hori_4.jpg 100分の映画のフィルムの長さは約3000メートルだが、2時間の映画を観たときに実際に人間が観る映像は1時間程度だという。「残像現象で網膜に焼きついたものを脳で結合し、動画としてみています。ある意味、映画の見え方というのは人間にとってイレギュラーかもしれません」と掘さんが説明すると、熱心な参加者からは「参考になる本などはありますか?」と言った質問も上がった。デジタルシネマの解説や撮影現場などのVTRを鑑賞した後、朝日ホール13階にある映写室を参加者全員で見学。間近で映写機や字幕投影システム機器などを見た参加者からは笑顔がこぼれた。

今後、映画映像や映画館についてどうなっていくのか。「現在、TVでの映像は2Kなわけですが、それと同じものを映画館で、有償で観るという抵抗感が出てきました。しかしそれよりも、携帯メールを15分に一回やるような若者がどんどん育っていく中で、出入り禁止の2時間の映画館、はたしてそれが享受されるのか、というようなライフスタイルの変化も、もう少し大きなテーマになるのではないかと気にしています」と堀さんは危惧を語った。参加者との質疑応答も行われたが、予定時間をオーバーするほど多くの質問が上がり、最後には東京現像所から頂いた、映画撮影方法の比較がプリントされたフィルムが参加者へお土産として配られた。参加者は嬉しそうにフィルムを手にし、もっと話を聞きたいという熱気が会場には溢れていた。


(取材・文:水口早苗/写真:金沢佑希人)

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投稿者 FILMeX : 2009年11月27日 20:00



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