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2009年11月22日 『執行者』舞台挨拶・Q&A

shikkousha_1.jpg 複数の刑務官たちの苦悩や葛藤を描き、死刑制度そして死刑執行の経過を真っ向からとらえた作品『執行者』。2009年、釜山国際映画祭でワールドプレミア上映された。現在公開中の韓国でも死刑制度への物議を醸す作品として大きな話題となっている。今作品が長編映画への初挑戦となるチェ・ジンホ監督が11月22日、有楽町スバル座へ来場し、多くの観客からの質問に答えた。

まずは上映に先立ち、舞台挨拶が行われた。拍手の中、舞台に立ったチェ監督は「皆さんにお会いできて嬉しいです。ここまで沢山の方が来てくれるとは思っていなかったのですが、席を埋めて頂きありがとうございます」と感謝を述べた。
まず作品の説明として「この映画は、死刑を執行しなければいけない刑務官の姿を描いた作品です。日本と韓国は今でも死刑制度を守っていますが、そうした意味でも韓国の刑務官、日本の刑務官は同じような心理状態なのではないかと思います」と丁寧に語った。また「この映画は韓国の映画ではありますが、日本の皆さんと感情表現では似ているところもあるので、肩の力を抜いてご覧いただければと思います」と笑顔を見せてくれたチェ監督。最後には「舞台挨拶前に観客の方からプレゼントを頂いたのですが、くださった方は挙手していただけますか?」と観客へ語りかけ、プレゼントをおくった観客へ「ありがとうございます」と日本語でお礼を伝える場面などもあり、会場は笑いとあたたかい拍手に包まれた。

shikkousha_2.jpg 上映後に設けられたQ&Aの席では、観客から多くの手が挙がった。まずは韓国での実際の死刑執行の現場についての質問。「映画では、若干創作された部分があります。実際には長官が罪状を読み上げ、最後にひとこと言い、カーテンを閉めて(死刑囚が)見えなくなるようにする。立ち会えるのは長官、保安課長、刑務所長、検事、宗教関係者です。死刑囚が仏教徒であれば僧侶、クリスチャンであれば神父。死刑の通知は執行当日の朝に死刑囚が呼ばれ、廊下で行われます。そのため、死刑囚の家族や一般の人間は全く知らないまま行われる。また、死刑執行場は刑が執行されていない時にも見学はできません」
 
次に、死刑執行人をテーマに映画に作ろうと思ったきっかけについて質問が及ぶと、チェ監督は「新聞で死刑を執行する人達はそのトラウマから抜け出せないという記事を読んだことがきっかけ。その記事を読んだときに、死刑執行の日はどんな状態だったのだろうか、死刑を執行する人の心理状態はどういうものだったのかを知りたいと思い、早速取材をしてシナリオを書き映画にしました。周りからはこんな題材で映画を撮っても仕方がない、長編デビュー作でこんな難しいものを撮ってどうするんだとよく言われました」と苦労を語った。
 
shikkousha_3.jpg キャスティングについて、なぜユン・ゲサンを主役に抜擢したのか、という質問も。「彼は少年と大人のちょうど、境界線の辺りにいるようなイメージを持っている俳優。社会に一歩踏み出すという今回の役のような人間の心理は、期待と不安、両方の気持ちがないまぜになっているものですが、彼はその二つを持ち合わせていると思ったのです。この役を誰にお願いしようかと考えた時にまっさきに浮かんだのが彼で、そして彼を起用したことは本当に正しい選択でした」と監督はにこやかに話した。
 
韓国では、自国映画の保護を目的としたスクリーンクォータ制が改訂されたことで国産映画の上映日数が減少、韓国映画業界では問題となっている。今作品の韓国内での上映状況はどうなのだろうか。「以前は1年に約120日程度の上映日数が定められていたが、現在は約90日程度となっています。これは非常に短い期間だと思う。この作品は韓国では現在公開3週目なのですが、今週、来週にはもう幕を下ろしてしまうことになるので、観ることができなくなります。しかし、日本の皆さんがこの映画を気に入ってくれて、今度は日本で公開されることになってくれれば、と心から願っています」と監督が話すと場内は温かい拍手で包まれた。
 
実際に刑務官をされている方からの質問や、ラストシーンについての鋭い質問なども、ユーモアを織り交ぜながら答え、終始なごやかなムードに包まれQ&Aは終了した。長編デビュー作にして死刑という重い題材と向き合ったチェ監督。次回はどのようなテーマとなるのか、第2作目を今から楽しみに待ちたい。


(取材・文:水口早苗/写真:村田まゆ)

投稿者 FILMeX : 2009年11月22日 20:00



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