世界の映画祭だより

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2004年04月28日


第33回ロッテルダム国際映画祭・レポート

第33回ロッテルダム国際映画祭レポート
2004年1月21日?2月1日開催

【2004年の概要】
 第33回ロッテルダム映画祭は、これまで8年間ディレクターを務めてきたサイモン・フィールド氏の最後の年にあたり、映画祭の発展に尽力した彼への感謝と惜別のムードが活気溢れるこの映画祭をより暖かく盛り上げていた。オープニングとして北野武、カトリーヌ・ブレイヤという縁の深い監督の新作の上映や、また授賞式後に続いて展開されたフィールド氏を送るセレモニーでは、ツァイ・ミンリャン、アボルファズル・ジャリリといった親交の深い監督たちによって撮り下ろされた短編作品が上映されて、オマージュを表した。
昨年の東京フィルメックスでも好評だった「地球を守れ!」(チャン・ジュヌァン監督)が注目を集めた他、韓国からはチャン・ソヌがタイガー・アワード審査員を務めた。 また日本映画では、映画祭のオープニングを飾った「座頭市」の大盛況はじめ、「アカルイミライ」「ドッペルゲンガー」の新作2作上映された黒沢清、三池崇史など常連ともいうべき監督の作品を中心に日本映画に対する根強い関心が寄せられていた。山下敦弘「リアリズムの宿」上映時には笑いのポイントが日本とあまり変わらず、絶妙の雰囲気で観客を引き付ける監督のセンスが光っていた。
 なお2004年は、長短編その他関連上映を含め世界の70以上の国と地域より合計700本以上の作品が集められ、全12日間に渡り7会場(20スクリーン)で上映された。
 今後はこれまで共同ディレクターを務めてきたサンドラ・デン・ハマー氏が単独でディレクターにあたる。次回は2005年1月26日(水)?2月6日(日)の開催予定。

【上映作品についての感想】
 今年は全体的にプレミア上映となる作品は少なかったようだが、逆に言えば、最近の諸所の映画祭での話題作が揃って一度にフォローできるという利点もあると言える。
 作品を見るに当たって、膨大なプログラムの全て網羅することは不可能なため、タイガーアワード部門、およびアジア映画に焦点を絞った。
タイガーアワードについては、リー・カンション「不散」が高く評価された他、比較的ウェルメイドな作品が賞に選ばれた感がある。賞を逃したもののアーティスティックな個性という点で、Uniform (中国/ジャオ・イーナン) の異様なテンション、Aaltra (ベルギー/Benoit Delepine, Gustave Kervern) の乾いたユーモア、Somnambulance (エストニア、フィンランド/Sulev Keedus)の幻想的な映像美といったところは印象深い。
 アジア映画については、よりインディーズ的な小さい作品ながら、中国より、ジュー・チュアンミン (朱伝明)の長編第1作On the Mountain、第六世代のフー・チェンチュン(何建軍)の新作Pirated Copy、イランでは珍しいアンダーグラウンド風なNavel(イラン/モハマッド・シルヴァニ)などは今後の飛躍を期待させる才気を秘めていたように思う。

【2004年授賞結果】

*タイガーアワード<コンペ部門>
The Missing (不散), リー・カンション/台湾
En Route, Jan Kruger/ドイツ
Summer In The Golden Valley, Sdrjan Vuletic/ボスニア・ヘルツェゴビナ

*Fipresci(国際批評家連盟)賞
Peep "TV" Show, 土屋豊/日本

*KNF賞(Dutch Critics)
The Missing (不散), リー・カンション/台湾

*KNF賞スペシャル・メンション
地球を守れ!(韓国/チャン・ジュヌァン)

*Moviezone賞(Awarded by young cinemagoers)
Summer In The Golden Valley, Sdrjan Vuletic/ボスニア・ヘルツェゴビナ

*Prince Claus fund film grant:
The Abandoned Land, Vimukhti Jayasundara/スリランカ

*NETPAC賞:
The Missing (不散), リー・カンション/台湾

*NETPAC賞スペシャル・メンション
Uniform (中国/ジャオ・イーナン)

*Amnesty International-Doen Award:
The Last Train, Alexej German Jr./ロシア

*Amnesty International-Doen Award スペシャル・メンション
Uniform (中国/ジャオ・イーナン)

*観客賞:
La Meglio Gioventu (輝ける青春), マルコ・トゥリオ・ジョルダーナ/イタリア

【2004年 開催結果について】
総来場者数:355,000人 (前年355,000人)
総入場収入:1,200,000 Euro (前年1,200,000Euro)
期間中公式サイト閲覧数:1,600,000 (前年1,600,000)
監督ゲスト数:395人(前年331人)
総ゲスト数:2,435人=国内760人+外国1,675人(前年2,344人=829+1,515)
プレス数:541人=国内305人+外国236人   (前年493=274+219)
シネマート・ゲスト数:894人(前年798)

【2004年プログラム概要】

●新作の上映
*タイガーアワード・コンペティション:16本
*ヒューベルト・バルズ・ファンド:26本
*メイン・プログラム:101本
*短編:約200本
*オランダ映画展望:32本(短編含む)

●テーマによる特集上映
*Exploding Cinema Power:play 約80本(短編含む)(権力について考える映画・映像作品)
*Cinema Regained 15本+短編集13プログラム(映画について主題にした作品)
*Homefront USA(現代アメリカの現実を捉えた映画。ドキュメンタリー含む)
*Once We Were Birds : Romani Cinema 29本(短編含む)(ロマについての作品)

●作家の特集上映
*Filmmaker In Focus
- ラウル・ルイス(フランス他)20本(短編含む)
- ケン・ジェイコブス(アメリカ)短編集5プログラム
- Tunde Kelani(ナイジェリア) 4本
*Artist in Focus
- アイザック・ジュリアン(イギリス)14本(短編含む)


【ロッテルダム映画祭の特徴について】
 映画の可能性を広げるために、映画の多様性を重視しながら、新しい才能を発見し、野心的な挑戦を支援する。「インディペンデントで革新的な映画のための足掛かりとなる」ようにという趣旨により、作家を重視する映画祭という方針で運営されている。

●映画製作へのサポート
*ヒューベルト・バルズ・ファンド=映画製作に対するファンド制度
*シネマート=インディペンデント作品の企画マーケット
●新しい才能の発見:タイガーアワード・コンペティション 
(3作目までの新人監督を対象とするインターナショナルコンペティション部門)
(日本映画では「冬の河童」「渚のシンドバッド」「まぶだち」などが受賞)
●実験映画はじめ、アートやゲーム、PVなどを含めた映像作品も積極的に取り上げる
●世界のさまざまな国や地域の作品を幅広く紹介(アジア、アフリカ、南米などの作品を精力的に紹介)

 映画祭の現場の雰囲気としては、第一印象として格式ばらずフレンドリー、そして効率良く映画を見ることが可能なシステマティックな運営、さらに映画祭を支える観客たちの層の厚さと懐の深さも印象的だ。権威付けや豪華さを求めるのでなく、新鮮さやユニークさを楽しみ刺激を受ける機会となっているようだ。
 作家にとってゴールではなくスタートや通過点となるような映画祭として、ロッテルダムで見ることができるのは生成するプロセスそのものと言えるかもしれない。上映作品のみならず将来的な展望も含め、さまざまな着目点を見い出すことが可能だろう。
 そしてロッテルダム映画祭の重要性は、具体的な製作支援という側面にもあり、それらによって成立した作品が近年の国際映画祭を賑わす作品がかなりの割合を占めていることからも窺える。(例えば中国のドキュメンタリー作品「鉄西区」(ワン・ビン)などもヒューベルト・バルズ・ファンドのサポートを得ている)

<文・東京フィルメックス事務局 森宗厚子>

http://www.filmfestivalrotterdam.com/

投稿者 FILMeX : 2004年04月28日 19:00



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