世界の映画祭だより

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2005年04月12日


第6回チョンジュ国際映画祭 開幕

(2005年4/28?5/6、韓国全州にて)
http://www.jiff.or.kr/en_2005/

チョンジュ国際映画祭は、「Freedom, Independence, and
Communication」のキャッチフレーズのもと、インディペンデントやDV作品を含め新進の才能を紹介している。第6回となる今年は、30ケ国より170本の作品が上映される。

昨年より全体的な上映本数は減少したが、より落ち着いて作品が見られるように本数を絞り、実験映画部門は規模を縮小しながらも監督を招いての特集上映をプログラミングし、また地元の観客が映画祭に親しみやすいように家族向けの作品を取り上げるなど配慮がうかがえる。
また、上映会場の分散を改善し、オープニングとクロージングを除いて商店街内の映画館街のシネコンを使用しチケットセンターやゲストオフィスなども同地区に設置し、不便さを解消するよう試みている。

注目されるのは、毎回チョンジュ映画祭によって製作されるDV短編オムニバス「デジタル三人三色」。今年は、日本から塚本晋也「Haze」、韓国からソン・イルゴン「Magician(s)」、タイからアピッチャッポン
・ウィーラセタクン「Worldly Desires」という気鋭の3監督のラインナップとなっている。東京フィルメックスとしては馴染みが深く、ソン・イルゴン監督は、「フラワー・アイランド」で第2回東京フィルメックス最優秀作品賞、また昨年の第5回にて「スパイダー・フォレスト?懺悔」が上映されている。アピッチャッポン・ウィーラセタクン監督は、第1回にて「真昼の不思議な物体」上映、「ブリスフリー・ユアーズ」が第3回最優秀作品賞、「トロピカル・マラディ」が第5回最優秀作品賞を受賞している。

「デジタル三人三色」は今回は、オープニング作品として上映されることになった。また、クロージング作品には、ソン・ガンホとユ・ジテ主演の話題作「南極日記」(イム・ピルソン監督第1作)が上映される。

特集上映としては、「マグレブ特集」でアフリカ北部地域をとりあげモロッコやチュニジアから8作品、また、海外での初めての本格的なレトロスペクティブとなる「相米慎二特集」(8作品)も組まれている。さらに、実験映画の部門ではオーストリアの「ピーター・クーベルカ特集」が行なわれる。

メイン・プログラムであるコンペティション部門としては、<インディ・ビジョン>と<デジタル・スペクトラム>の2部門があり、いずれも全世界から、劇映画とドキュメンタリーの両方を含めて対象にしている。

<インディ・ビジョン>部門には、インディペンデント映画10本が上映され、うち5本は女性監督の作品となっている。日本からは萩生田宏治の「帰郷」が参加。

<デジタル・スペクトラム>部門では、DV撮影による長編・短編が12作品上映される。アメリカのジョン・ジョスト「Homecoming」、中国のジャ・ジャンクー「世界」、日本からは瀬々敬久「ユダ」といった
現代社会に鋭く迫る劇映画のほか、携帯電話で撮影されたエド・ラッハマンによる実験的ドキュメンタリー短編「Cell Stories」など。

<シネマスケープ>では世界から巨匠や新進気鋭の注目作24本が上映される。J・L・ゴダール、クリス・マルケル、アニエス・ヴァルダ、セドリック・カーン、イングマル・ベルイマン、マノエル・デ・オリヴェイラなどそうそうたる顔触れ。なお、日本からは、黒沢清の短編「ココロ・オドル」が上映される。また、「Visions of Europe」という、アキ・カウリスマキ、タル・ベーラ、トニー・ガトリフ、ピーター・グリナウェイといったヨーロッパ25ケ国の25人の監督によるオムニバス作品も上映される。

また、ミッドナイト部門では、ケン・ラッセル、カレル・ゼマンの小特集のほか、"Pink Docus"と銘打ち、中田秀夫「マゾヒスティック&サディステック」の他「アラキメンタリ」「Inside Deep Throat」が
上映される 。

一般観客にも親しみやすい作品を取り上げる<シネマ・パレス>(全15本)では、日本から、崔洋一「クィール」、富樫森「鉄人28号」、松尾スズキ「恋の門」の3本が上映される。他にハリウッド・クラッシックス作品もラインナップされており、ダグラス・サーク「悲しみは空の彼方に」、ジョン・フォード「ドノバン珊瑚礁」、ジョセフ・L・マンキーウィッツ「裸足の伯爵夫人」が上映される。

韓国映画については、短編を精力的に紹介する他、DV作品が活発に撮られている現状を反映し、韓国のDV作品を集めた<Korean Cinema on the Move>というプログラムを新設している(8作品)。また、最近の商業映画を7本を野外上映し、今回の映画祭広報大使となったキム・ドンワンの出演作「回し蹴り」も上映される。

さらに、今回の特別企画として、今年2月に韓国で発見された植民地時代の映画4作品、「軍用列車」(1938、セオ・ガンジェ) 「漁火」 (1939、アン・チェルヨン)「家のない天使」 (1941、チェ・インギュ)
「志願兵」(1941、アン・セヨン)を上映する。また、韓国の研究者によるセミナーを行ない、日本からのパネリストとして四方田犬彦氏が参加する。

付帯行事として、映画人による講義が行なわれるマスタークラスでは、今年は音楽監督にスポットをあて、韓国のチョ・ソンウ(「八月のクリスマス」「吠える犬は噛まない」など)、日本の川井憲次(「GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊」「イノセンス」など。また今回の映画祭クロージング作品「南極日記」も手がけている)を招く。

以上
(報告者:森宗厚子)

投稿者 FILMeX : 2005年04月12日 18:00



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