世界の映画祭だより

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2005年07月08日


第6回チョンジュ国際映画祭 レポート

(参考記事):第6回チョンジュ国際映画祭 開催
https://filmex.jp/mt/archives/eigasai-dayori/2005/04/6.html

第6回チョンジュ国際映画祭(4/28?5/6) 報告


●映画祭の状況について

今年から会場が商店街地域に一括されて便利になったこともあり、休日を中心に盛況を呈していた。市民向けの行事も多数行なわれ、夜間の街頭イルミネーションが祭りの雰囲気を盛り上げていた。観客層は、高校生や大学生などを中心に若い世代が多く、韓国映画と日本映画が人気で、軒並みソールド・アウトとなっていた。新作のみならず、相米慎二特集も注目度が高く若い観客で賑わっていた。

従来と比べてプログラム面・運営面とも、より幅広い観客層にアプローチするよう変化してきているように見えるが、過渡期のようにもとれ、今後、チョンジュ映画祭がどのように個性を活かして発展していくのかは、興味深い。特に2005年に入って、プチョン、クァンジュの映画祭が難局を迎えた状況の中で、国内でのチョンジュへの期待が高まっていることも察せられる。

●上映作品について

毎回チョンジュ映画祭が製作しているオムニバス「3人3色」が、今年は異例的にオープニング作品として上映された。ソン・イルゴン、アピチャッポン、塚本晋也という独自の世界を築いている監督たちが、短編の枠組にアイディアをぶつけ、それぞれの作家性が明確に出ていた。
 ソン・イルゴン「Magician(s)」は、大晦日の夜に再会した元バンド・メンバーの男女たちが追憶にひたるというドラマを30分ワンテイクで捉え、変化に富んだ緻密な構成と舞台劇とは異なる映画的な場面展開の巧みさがあいまって、熟練を感じさせる作品。
 アピチャッポン「Worldly Desires」は、ジャングルの中で映画ロケをしているピンパカ・トウィーラ監督の撮影隊を主な被写体としながら、ジャングル性、メタ・フィクション性、身体性といったアピチャッポン監督の一貫したテーマを抽出している実験的作品。 塚本晋也「Haze」は、異様な閉所に閉じ込められて、もがき苦しむ男を描き、肉体と精神の苦悶をミクロ的に見つめていて、原点回帰ともいえる“痛さ”と不条理に満ちた作品。

 また、他に印象深かった韓国作品としては、オムニバス「If You are me 2」が前シリーズにも増して充実し、監督たちの持ち味がそれぞれの人権に関連するテーマへのアプローチに活かされ、完成度が高かった。中でも、リュ・スンワン監督(デビュー作「ダイ・バッド」は第1回東京フィルメックスにて上映。近作に「阿羅漢?掌風大作戦」「拳が泣く」など)の「Hey, Man?」は、友達と飲んでいて酔っ払った男の言動から一般的な“男らしさ”の偏見を浮き彫りにしていて、臨場感とリアルさを活かした演出が見応えがあった。


【受賞結果】

<インディビジョン>最優秀作品賞
「Harvest Time」Marina Razbezhkina / ロシア / 2004

<デジタルスペクトラム>最優秀作品賞
「Czech Dream」 Vit Klusak, Filip Remunda / チェコ/ 2004
「牛皮」リュウ・ジャイン / 中国 / 2005

<デジタルスペクトラム>スペシャル・メンション
Kristen Thomson (「I, Claudia」出演/ カナダ/ 2004)

【2005年 開催結果について】

上映作品数:176本(31ヶ国)
上映回数:全270回上映 (ソールドアウト:うち120回)
総観客数:6万9000人 (昨年より20% 増加)
うち有料観客数 4万 5千名 (昨年より 7千名増加)

(報告者:森宗厚子)

投稿者 FILMeX : 2005年07月08日 18:35



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