第16回東京フィルメックス「学生審査員賞」審査を終えて

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東京学生映画祭の主催による「学生審査員賞」を、2011年に創設しました。 審査員を務めた3名の学生審査員より、「審査を終えて」のコメントをいただきましたので、ご紹介いたします。
ここにもある通り、審査は大変に白熱し、充実したものとなりました。 彼らの熱い気持ちが作り手や、観客の皆様に届くことを願ってやみません。 次回の学生審査員にご興味をお持ちになった学生の皆様は、東京学生映画祭にお問い合わせください。

東京学生映画祭 ≫ http://www.tougakusai.jp/

各学生審査員コメント
≫山元 環 (YAMAMOTO Kan) ≫菅原 澪 (SUGAWARA Mio) ≫十河和也 (SOGO Kazuya)

山元 環 (YAMAMOTO Kan)

大阪芸術大学卒
監督作品:『ゴロン、バタン、キュー』/KODAK VISION AWARD受賞/第27回東京学生映画祭 実写部門 準グランプリ、最優秀役者賞【主演:山元駿】/第37回PFFアワード2015 審査員特別賞

映画というのは、やっぱり良いなと再認識できた時間でした。
全く知らない文化ばかりが映っていましたが、全てが自分の中に自然に浸透してきました。これができるのは、やはり映画でしかできない。
何よりも人間。映っている人間と、その人間を映した人間たち。
これが全てでした。映画をやる人達って、とことん人間が好きな人達だと思うんです。
だから瞬間的に見える表情にドキッとするし、涙が出そうになるし、心踊るように嬉しくなるし、泣きたくなるくらい苦しくなる。
自分の臭い部分も、良いとしている偽善的な正義感も、全てがショットの中に捉えられる。決してそれから逃れることなんて出来ない。
でもそれこそが、その時代に生きた人達の、今も生き続ける映画に繋がるんだと思います。
映画を作っていて騙せることなんてほとんどなくて、だから今回の東京フィルメックスでは色々な国の、色々な人の人間的性質があった。
これこそ、映画の醍醐味であると僕は思います。
審査員というのがどういう感じなのか分からず、最初はかなり気負って学生審査員に臨もうと思っていましたが、映画を観て行くうちに気負いなんてどこかへ行ってしまうくらい素晴らしい人間たちを観れました。
監督も、映画の中に生きる人間たちも、全てがリアルで
映画という娯楽へ誘ってくれたことに深く深く、感謝致します。
僕はまたここに戻ってきます。
オエッてなるのか、クスッと笑ってもらえるのか、はたまたグスンと泣いてもらえるのか。良い作品をひっさげて戻ってくるので
今度は、僕の人間臭さをご覧下さい。

菅原 澪 (SUGAWARA Mio)

日本女子大学2年
第28回東京学生映画祭企画委員会 代表

今年もフィルメックスに参加させていただき、本当にありがとうございました。フィルメックスの作品は、とても挑戦的で衝撃的で心に迫ってくる作品が多く、見終わった後、たくさん悩みました。それほどまでに、何かを伝えようとしている制作者の皆さまの気持ちに訴えかけられていたんだと思います。
今回見た作品は私が行ったことのない国の作品ばかりで、その国の抱える問題など知らないことが多かったです。しかし、そこに生まれる感情や行動はどこの国も差ほど変わらないと思うので、だからこそ、心に訴えかけられるものがあり、国を越えて映画を楽しめるんだと思いました。
映画を観て、たとえば、その国の抱える問題を知っても、私には解決することは出来ないし、何が出来るかと聞かれても多くの場合答えられないです。しかし、理解することは出来る気がします、理解しようとすることは出来る気がします。
理解があるかないかで、世の中は少し優しくなると思うし、少しだけ上を向くのではないかな、と私は信じています。
作品を審査することは、私は自信がありませんでした。どの作品も制作者のたくさんの想いが詰まっていて素敵なのに、学生の立場で偉そうなことは言えないと思ったからです。でも、僭越ながら審査させていただくに当たって、作品をしっかり考えながら拝見しました。それだけで、いつもの何倍も映画の意味を感じたし、映画の力を感じました。そして前よりももっと映画を好きになりました。
今映画に魅了されている人たちには、ほとんどの場合、何かの作品がターニングポイントとなって映画を好きになっていることが多いと思います。
どんな種類であれ、映画は人生を変える力を持っていると信じているし、もっと多くの人が素敵な作品に出会って、何かが変わる体験をして欲しいなと思います。
映画祭はそのターニングポイントを作る場所とも言えるなと思いました。
私は今、学生映画祭の企画運営をしていますが、フィルメックスさんに関わったことで、またひとつ映画祭の意味を知り、もっと深みのある映画祭にしたいなと考えさせられました。
私は映画とこれからも関わっていきたいし、何か自分に出来ることを探していきたいなと思っています。
最後に、東京フィルメックスの皆様、制作者のみなさま、その他、関わったすべての皆様に御礼を申し上げます。
素敵な作品を、素敵な映画祭をありがとうございました。
また来年も楽しみにしております!

十河和也 (SOGO Kazuya)

第28回東京学生映画祭企画委員 副代表

文学賞において、仏国では、年に一度の「Prix Goncourt(ゴングール賞)」の候補作を、国中の高校生、約2,000人が読み議論を重ね、自分らの一作を選ぶ、「高校生ゴングール賞」(ゴングール・アカデミーが名を冠している)が、既に4半世紀続いています。

「学生審査員」という立場の内の1人を、私は担いました。監督と自分、また、審査する立場としての他者と自分とを繋ぎ、作品個々の「色」と、自らが掴んだものとの間に生まれる径庭のようなものを結び、一個人としての熱情が先を行けば、時にそれを解きました。衷情を最たるものとしながらも、気づけば変説を余儀なくされていることもありました。作品を評価し比較する時、物差しとなる軸をどこに据えるのが正しいのか、けれど、「良い」「悪い」でそれぞれに点数を入れ、総合点を出すような審査のやり方でない以上、議論し、果てしなく悩むより他になかったからです。『タルロ』は、その私たちの悶々とした時間に、絶対的な答えを与えてくれたと、私は信じています。

「高校生ゴングール賞」受賞作では、本家のゴングール賞作品よりも話題を集め、より著書の売り上げを伸ばすということも珍しくないそうです。学生審査員賞が、この先10年、20年と続き、いつか巨大な力を持つよう願っています。映画祭期間を通して、改めて、東京フィルメックス事務局様に、粛々と御礼申し上げます。ありがとうございました。


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