第7回東京フィルメックス総括

みなさまのご支援、ご協力を持ちまして、第7回東京フィルメックスは、11月17日から26日の10日間にわたる会期を無事に終了致しました。重ねてお礼申し上げます。動員総数が 16,252人 となり、映画への熱い期待を持ったお客様に集まっていただける、良い雰囲気の中での上映を重ねる事ができました。サイド・イベントの規模が大幅に縮小しために、昨年の2万人から総合入場者数は減少しましたが、上映回数は前年より少なかったにも関わらず、上映をご覧になった観客動員数はむしろ増加し、特にシネカノン有楽町でのレイトショーは200人増、メイン会場の有楽町朝日ホールでも週末を中心に平均動員の増加が見られました。

サイド・イベントが減った事には、全体の予算の縮小が原因として挙げられます。海外からのゲストやプレス、セールス関係の方々を宿泊費だけでもお招きしたいと切望しながら、今年はそれが叶いませんでした。それでも自費参加で数々のプレスや海外からの国際映画祭関係者がご来日してくださったことに対して、深く感謝するばかりです。英語字幕の投影も、すべての作品にできるわけではありませんでした。もっとシンポジウムやセミナーなども企画したかったし、お客様に対しての告知広報展開も広げていきたかったのはもちろんでしたが、残念ながら予算の関係で叶わぬ事が多々ありました。

受賞結果は、最優秀作品賞にタジキスタンの「天国へ行くにはまず死すべし」(ジャムシェド・ウスモノフ監督)、審査員特別賞には中国の「アザー・ハーフ」(イン・リャン監督)が決まり、キム・ドンホ委員長を初めとする審査員の方からもコンペ作品の質の高さについて言及いただきました。受賞者はそれぞれに新作に向けての準備を進めていらっしゃるとの事で、これからのご活躍が大いに楽しみです。

海外ゲストから一番多くの指摘を受けたのが、観客のみなさまの質の高さです。上映後の監督とのQ&Aでのお客様からのシャープな質問には、監督たちも大変喜んでいらっしゃいました。映画を本当に好きで、東京フィルメックスを楽しみにしてくださっているお客様に対して、私たち事務局一同は映画一本一本が最も輝くために最善の力を尽くしました。お客様と作り手との架け橋となるような国際映画祭を続けていくのが、私たちの使命と考えております。


岡本喜八特集上映

東京国立近代美術館フィルムセンターとの共催事業として、特集上映はますます海外からも期待が高まっています。今年は通常のフィルムセンターの上映よりも若い観客が増え、また従来の岡本喜八特集では男性観客層が圧倒的に多いのに比べて、今回は女性が多く見られたことにも観客層の広がりを感じました。また業界関係者以外の東京在住の外国人の姿も目立ちました。日本映画を英語字幕付きで、しかもフィルムセンター大ホールという良い条件で見られる機会を活用していただけたかと喜んでおります。 来年の2月に開催されるベルリン国際映画祭での岡本喜八特集も決定しました。岡本特集はヨーロッパでは初めての企画となります。今に蘇る岡本喜八作品の魅力が、ベルリンでまた大いに波及していくに違いありません。

インダストリー試写

今年で4回目を迎え、カンヌ、ベルリンを初め、アジアのプレスや映画祭関係者も集まったインダストリー試写は、力のある日本映画の最新作を中心に試写とヴィデオライブラリーで外国人ゲストにご覧頂きました。活用者も増え、例年を上回る注目を集めて来年の国際映画祭への足がかりの場として大いなる大役を果たしました。

ボランティア80名の尽力

ホスピタリティーでは英語のみならず特殊言語を必要とするスタッフが必要な映画祭ですが、運営周りも含めて、おもてなしの心を大事にしてくださる80人のボランティアスタッフが集結し、温かな会場の雰囲気作り、仮設事務局でのゲストケア、空港送迎、プリント運搬、カタログ販売など、細やかな気配りの溢れる方々に大いに助けていただきました。

新しいチャレンジ

Q&Aやトークイベントの模様を速やかに公式サイトのデイリーニュースにまとめてアップし、臨場感溢れる質疑応答の様子をいち早くご報告できる体制を確立しました。また、慶應義塾大学DMC機構のご協力を得て、動画配信+ポッド・キャスティングが成就しました。期間中の記録班の活躍と迅速な編集作業によって、動画配信も速報性を持ってお楽しみいただき、ヒット数は 10,000件 を超える反響を博しました。 また、今年は審査員もお務めいただいた映画編集のプロ、大島ともよさんには、第1回から去年までの記録映像をまとめていただき、公式サイトや上映前の会場でご紹介する事もでき、東京フィルメックスの歩いてきた道のり、これまでの活動の軌跡を改めてご覧いただける機会が設けられました。


審査委員長のキム・ドンホ氏が、「東京フィルメックスはプサン映画祭に少し遅れてスタートしましたが、日本の枠を超えて、その作品選択の確かさとプログラムの質の高さで世界各国から高い評価を受けています」と、オープニングでも温かなメッセージをご披露くださり、クロージングでは観客のレベルの高さにも触れてくださいました。私たちは引き続き海外とのネットワークを活かし、フレッシュで独創的で想像力溢れる作品をいち早く日本でご紹介できるよう、力を尽くします。

ご来日の監督たちゲストも大変お元気にご帰国への道を出発されました。またいらっしゃりたい、次回はもっと長く滞在したいと口々におっしゃっていただき、ご満足の充足感がひしひしと伝わってきました。また次回作を見て欲しいという心温まる要望も受け、作家たちを支援しお客様につなげていくことを目的とする私たちにとって、これらのうれしい声を励みに、また来年以降も精進していく所存でございます。

どうぞみなさま、引き続きの力強いご支援、ご協力をいただけますよう、お礼とご報告と共に、重ねてお願い申し上げます。


林 加奈子(東京フィルメックス・ディレクター)

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