【第16回東京フィルメックス受賞結果】
第16回東京フィルメックスコンペティション部門審査員は以下の作品に賞を贈ります。
【最優秀作品賞】
『タルロ』 (ペマツェテン/中国/2015年/123分)
副賞として賞金70万円が監督に授与されます。
授賞理由;IDを求める男がIDを失くすシンプルなコンセプトを美しく映画にしたことに対して、グランプリを贈ります。
【審査員特別賞】
『ベヒモス』 (チャオ・リャン/中国/2015年/91分)
副賞として賞金30万円が監督に授与されます。
授賞理由;現代文明と荒廃していく人間と自然を批判的かつ詩的にビジュアル化したことに対して、審査員特別賞を贈ります。
■スペシャル・メンション
『白い光の闇』 (ヴィムクティ・ジャヤスンダラ/スリランカ/2015年/82分)
奥田庸介監督 (『クズとブスとゲス』/日本/2015年/141分)
■第16回東京フィルメックス コンペティション審査員:
イ・ヨンガン(審査委員長:韓国/釜山映画祭ディレクター)、シルヴィア・チャン(台湾/女優、映画監督、プロデューサー)、塩田明彦(日本/映画監督)、齋藤敦子(日本/映画評論家、字幕翻訳家)、グレゴリー・ガジョス(フランス/アド・ヴィタム買付・編成担当)
■観客賞
『最愛の子』 (ピーター・チャン/中国、香港/2014年/130分)
■学生審査員賞
『タルロ』 (ペマツェテン/中国/2015年/123分)
授賞理由;
恋歌は、纏っていたものを自ら剥ぎ取り、喧噪に唸るパンクロックへと変化した。
タルロ。彼は、誰かを傷つける術も、自分を守る術さえも知らない。人に逢えば笑いかけ、時には自分の名前を忘れてみる。まるで、小さな子どものように感じる瞬間さえある彼は、どこまでも「無防備」だ。理髪店、カラオケ。何者かに、手を引かれるようにして「街」に出た時、その愛すべき無防備さは浮き彫りになる。未経験を経験していく彼に、何度か繰り返される毛沢東の言葉が重なる。言葉は、彼自身の熱を帯びたものに思えてくる。
本当に、彼が返るべき場所は「自然」だったのだろうか。
最後、緑の中、私たちに背を向けるタルロに以前の面影は無い。
圧倒的な、何かを得た、或いは失った彼をそこに見た。
● 学生審査員:
山元環(大阪芸術大学卒)、菅原澪(日本女子大学)、十河和也(明治大学)
■タレンツ・トーキョー・アワード2015
「A Love to Boluomi」 (ラウ・ケクフアット/マレーシア)
副賞として賞金30万円が受賞者に授与されます。
授賞理由;
The Jury decided to give the Talents Tokyo Award 2015 for further script development.
We chose “A Love to Boluomi“ from LAU Ket Huat from Malaysia for his bold clarity of vision and unflinching commitment to the material, based on real life events. The filmmaker clearly earned the trust of their subjects and we are sure that he will manage to do a film with filmic and emotional resonance.
■タレンツ・トーキョー2015 エキスパーツ(講師):
パク・キヨン(映画監督)、ステファン・ホル(プロデューサー)、エミリー・ジョルジュ(ワールド・セールス)、クリスティーネ・トルストルム(ベルリナーレ・タレンツ、プログラム・マネージャー)
審査委員長
イ・ヨンガン (LEE Yong-kwan 審査委員長:韓国/釜山映画祭ディレクター)
1955年生まれ。ソウルの中央大学で映画を専攻し、中央大学、中国の中央戯劇学院等の教授職を歴任。また、釜山映画祭創設時からエグゼクティブ・プログラマーとして参加。5年間キム・ドンホとともに共同ディレクターを務めた後、2012年、単独のディレクターに就任した。また2012年には釜山の東西大学の学部長に任命された。韓国映画界においては韓国の文化発展に大きく寄与したとして評価されており、テレビの映画番組の司会を務め、10年間にわたって季刊映画雑誌「Film Language」の出版に携わった。また映画に関する多くの著作を発表している。
イ・ヨンガンさんからのコメント
第16回の審査委員長を引き受けることになりまして、大変光栄です。
東京フィルメックスは今まで15年間にわたって、世界の映画を発掘し紹介するという、大変重要な役割を果たし続けています。また、タレンツ・トーキョーのプロジェクトを通しても、東アジア・東南アジアの才能ある製作者や監督たちを育成し、相互交流を深めてきました。
東京フィルメックスは「国際映画祭の基本」に最も忠実な映画祭へと成長してきました。
今回が初参加ですが、私にとっては既に旧知の親友のような映画祭ですし、有意義で楽しい日々を過ごせる事を期待しています。ありがとうございます。
審査員
シルヴィア・チャン (Sylvia CHANG/台湾/女優・映画監督・プロデューサー)
女優として40年間のキャリアの間に100本以上の映画に出演。代表作にキン・フー監督作品『山中傳奇』(79)、ツイ・ハーク監督作品『上海ブルース』(84)、フランソワ・ジラール監督作品『レッド・バイオリン』(98)がある。2015年にはジャ・ジャンクー監督作品『山河故人(原題)』、ジョニー・トー監督作品『華麗上班族』に出演した。また、1980年代に映画監督としての活動も開始。『20.30.40の恋』(04)はベルリン映画祭コンペティションに選ばれた。同時にプロデューサーとしても活躍。アン・ホイ監督作品『瘋劫』、エドワード・ヤン監督作品『海辺の一日』(83)ではプロデューサー兼主演を務めている。
塩田明彦 (SHIOTA Akihiko/日本/映画監督)
1961年、京都府生まれ。立教大学在学中より黒沢清、万田邦敏らと共に自主映画を制作する。95年、オリジナルビデオ『露出狂の女』(脚本:高橋洋)を撮り、高い評価を得る。宮崎あおい主演『害虫』(02)でナント三大陸映画祭審査員特別賞、主演女優賞を受賞。また『黄泉がえり』『どろろ』等の全国公開作品は興収30億を超える大ヒットを記録した。 最新作は『抱きしめたい -真実の物語-』。著書に『映画術・その演出はなぜ心をつかむのか』がある。
齋藤敦子 (SAITO Atsuko/日本/映画評論家、字幕翻訳家)
静岡県生まれ。奈良女子大学文学部社会学科哲学専攻を卒業後、パリのConservatoire Libre du Cinéma Français, Paris の編集科を修了する。帰国後、フランス映画社宣伝部を経て、フリーの映画評論家、字幕翻訳家として活動している。キネマ旬報や山形新聞などにベルリン、カンヌなどの国際映画祭のレポートを執筆するほか、河北新報ウェブサイトの映画祭レポート「シネマに包まれて」を担当。主な翻訳書にピエール・ブロンベルジェ「シネマメモワール」(白水社)、メアリー・パット・ケリー「スコセッシはこうして映画をつくってきた」(文藝春秋)、トニー・リーヴス「世界の映画ロケ地大事典」(晶文社)、ジョン・バクスター「パリ 快楽都市の誘惑」(清流出版)など。また字幕翻訳ではジャン=ピエール・アメリス『奇跡のひと マリーとマルグリット』、グザヴィエ・ボーヴォワ『チャップリンからの贈りもの』、ミア・ハンセン=ラブ『EDEN/エデン』、アニエス・トゥルブレ『わたしの名前は…』など数多く担当している。
グレゴリー・ガジョス (Gregory Gajos/フランス/アド・ヴィタム買付・編成担当)
歴史学と映画学の学位を取得後、映画配給会社Mars Filmsに入社。2000年に映画配給会社アド・ヴィタムの設立に参加し、以降、買い付けと番組編成を同社にて統括している。この15年の間、アド・ヴィタムは『プラットホーム』から『山河故人(原題)』に至る全てのジャ・ジャンクー監督作品のフランスでの配給を行なっている。その他に配給を手がけた作品は『少年と砂漠のカフェ』(監督:アボルファズル・ジャリリ)、『Dolls』(監督:北野武)、『アカルイミライ』(監督:黒沢清)、『オフサイド・ガールズ』(監督:ジャファール・パナヒ)、『撤退』(監督:アモス・ギタイ)、『ユキとニナ』(監督:諏訪敦彦、イポリット・ジラルド)、『愛の勝利を ムッソリーニを愛した女』(監督:マルコ・ベロッキオ)、『セッション』(監督:デミアン・チャゼル)、『黒衣の刺客』(監督:ホウ・シャオシェン)等。現在、同社は映画製作にも進出し、『南へ行けば』(監督:セバスチャン・リフシッツ)のアソシエイト・プロデューサー、『カランチョ』(監督:パブロ・トラペロ)のコー・プロデューサーを務めている。
観客賞
観客の投票により選出されます。東京フィルメックス・コンペティション作品および特別招待作品が対象となります(クロージング作品を除く)。
学生審査員賞
東京学生映画祭主催の「学生審査員賞」は3人の学生審査員がコンペティション部門の作品を対象に審査し、11月28日(土)の授賞式で最優秀作品を発表します。
学生審査員の選任から、賞の運営までを東京学生映画祭の手で行います。
東京学生映画祭 <www.tougakusai.jp>
学生審査員
学生審査員が中村祐太郎さんから十河和也さんへと変更になりました。
山元 環 (YAMAMOTO Kan)/大阪芸術大学卒
監督作品:
『ゴロン、バタン、キュー』/KODAK VISION AWARD受賞/第27回東京学生映画祭 実写部門 準グランプリ、最優秀役者賞【主演:山元駿】/第37回PFFアワード2015 審査員特別賞
菅原 澪 (SUGAWARA Mio)/日本女子大学2年
第28回東京学生映画祭企画委員会 代表
十河和也 (SOGO Kazuya)
第28回東京学生映画祭企画委員 副代表
第五回学生審査員賞を実施するにあたって
今年も学生審査員賞を実施していただけたこと、まずは事務局様に心から感謝申し上げます。本当にありがとうございます。
映画評論家、ミルクマン斉藤さんの「巨匠も新人も、時代と斬り結ぶ覚悟で映画を作るさまに、この映画祭の醍醐味を感じる」(2015年『キネマ旬報2下旬号』より)との言葉もありましたが、昨年の映画祭を通して、かつて無い映画体験に、私自身、一観客としてこれでもかと震撼させられたことを思い出します。
審査員たちの、生に受け取った衝撃が、溢れんばかりの映画愛が、世界の監督、そして観客の皆様に、余すことなく届くようにと願います。
第28回東京学生映画祭企画委員 副代表/十河和也
(SOGO Kazuya)