特別招待作品

今年も映画の最先端を切り拓いてゆく、気鋭の監督たちのとびきりの新作と、優れた旧作のデジタルリマスター版をご紹介します。
いずれも強烈な作家性が発揮された、これらのバラエティ豊かな作品からは、映画の多彩さがうかがえるでしょう。

(日本語タイトル横の★=長編監督デビュー作)

『川沿いのホテル』 Hotel By The River 【オープニング作品】

韓国 / 2018 / 96分
監督:ホン・サンス(HONG Sang Soo)

漢江を望む閑静なホテルで、老詩人と二人の息子、傷心を癒すために宿泊した女性たちが繰り広げる何気ない会話の中に人生の機微、家族、老いといったテーマが投げかけられるホン・サンスの傑作。本年度ロカルノ映画祭で最優秀男優賞を受賞した。

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『アッシュ・イズ・ピュアレスト・ホワイト(原題)』 Ash Is Purest White 【クロージング作品】

中国、フランス / 2018 / 141分
監督:ジャ・ジャンクー (JIA Zhang-ke)
配給:ビターズ・エンド

ヤクザな稼業で金を稼いでいるビンと、その愛人チャオ。裏社会に生きる男女の18年間にわたる関係を山西省、長江流域、さらに新疆にまで至る壮大なスケールで描いた作品。これまでのジャ・ジャンクー作品の集大成とも言える傑作。

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『エルサレムの路面電車』 A Tramway in Jerusalem

イスラエル、フランス / 2018 / 90分
監督:アモス・ギタイ(Amos GITAI)

様々な民族がモザイク状に混在して居住するエルサレムを東西に走る路面電車を舞台に、オムニバス風に緩やかにつながる幾つかのエピソードをコミカルに見せる作品。マチュー・アマルリックが外国人観光客の役で出演している。ヴェネチア映画祭で上映された。

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『ガザの友人への手紙』 A Letter to a Friend in GAZA

イスラエル / 2018 / 34分
監督:アモス・ギタイ(Amos GITAI)

イスラエルによるガザ封鎖の過激化を受けて発表されたドキュメンタリー。イスラエル、パレスチナの俳優たちとギタイ本人がパレスチナ問題をめぐる様々なテキストを朗読し、コラージュされたガザの写真や映像がオーバーラップする。ヴェネチア映画祭で上映。

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『名前のない墓』 Graves Without A Name

フランス、カンボジア / 2018 / 115分
監督:リティ・パン (RITHY Panh)

多彩な文学作品を引用しつつ、クメール・ルージュの支配がいかに無軌道であったかが語られていく、リティ・パンの表現の現在における到達点とも言うべき作品。ヴェネチア映画祭の「ヴェニス・デイズ」部門のオープニング作品として上映された。

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『8人の女と1つの舞台』 First Night Nerves

香港、中国 / 2018 / 100分
監督:スタンリー・クワン (Stanly KWAN)

舞台復帰をめざすかつてのスターと、同じ舞台で初出演となる人気女優など、8人の女性たちが演技合戦を繰り広げる華麗なバックステージもの。香港、中国のスター女優たちが女性映画の名匠スタンリー・クワンの下に集結した。

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『アルファ、殺しの権利』 Alpha, The Right to Kill

フィリピン / 2018 / 100分
監督:ブリランテ・メンドーサ(Brillante Mendoza)

マニラの暗黒街で展開される麻薬戦争を真正面から扱った衝撃的な作品。子供たちの尊敬を集める父親でもある警察官の表と裏の生活がメンドーサ得意の手持ちカメラを駆使した映像で生々しくとらえられている。サンセバスチャン映画祭で審査員特別賞を受賞。

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『あなたの顔』 Your Face

台湾 / 2018 / 76分
監督:ツァイ・ミンリャン(TSAI Ming Liang)

12人の人々、それぞれの顔がその人の生きてきた時間を映像の中に象徴的にあぶり出していく。本年度のヴェネチア映画祭でワールドプレミアを飾った、ツァイ・ミンリャン監督待望の最新作。音楽を坂本龍一が担当。

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『盗馬賊』 The Horse Thief

中国 / 1986 / 88分
監督:ティエン・チュアンチュアン(TIAN Zhuangzhuang)

1980年代の中国「第五世代」映画の傑作をデジタル修復版で上映。チベットを舞台に、家族を養うために馬泥棒を繰り返す男のたどる悲劇を荒涼とした風景の中に描く。文化人類学的ドキュメンタリーのようにとらえられたチベットの様々な風習が圧倒的な印象を残す。

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『草の葉』 Grass

韓国 / 2018 / 66分
監督:ホン・サンス(HONG Sang Soo)

クラシック音楽が流れるカフェという極めて限られた舞台設定の中、言い争う男女を契機に思いもかけぬ人間関係が次々と展開し、ホン・サンスのミニマリスト的な才能が遺憾無く発揮された作品。ベルリン映画祭フォーラム部門で上映。

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『プラネティスト』 PLANETIST

日本 / 2018 / 166分
監督:豊田利晃(TOYODA Toshiaki)
配給:VAP

東洋のガラパゴスと呼ばれる小笠原諸島で海のターザンと呼ばれる宮川典継。宮川の導きで小笠原の自然を体験する俳優やミュージシャンたちの歓喜の瞬間を映画監督の豊田利晃が5年間にわたって記録したドキュメンタリーフィルム。

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『盆唄』 BON-UTA: A Song From Home

日本 / 2018 / 134分
監督:中江裕司 (NAKAE Yuji)
配給:ビターズ・エンド

震災後も避難所生活を続ける福島県双葉町の人々とハワイの日系人を結ぶ「双葉盆唄」の伝承の歴史。『ナビィの恋』の中江裕司監督が土地に根差すルーツと伝統を絶やすまいと奮闘する人々を3年間にわたって追った感動のドキュメンタリー。

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『共想』 Wish we were here

日本 / 2018 /76分
監督:篠崎誠(SHINOZAKI Makoto)
製作:コムテッグ

東京都内の新興住宅地で暮らす幼馴染みの珠子と善美。だが、2011年3月11日、珠子の誕生日に起きた大震災をきっかけに、ふたりの間に小さな齟齬が生まれる。『あれから』『SHARING』につづいて篠崎誠が東日本大震災を見つめた最新作。

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『僕はイエス様が嫌い』★ Jesus

日本 / 2018 / 76分
監督:奥山大史(OKUYAMA Hiroshi)
製作:閉会宣言

雪深い地方のミッション系の小学校へ転校し、そこで行う礼拝に戸惑いを感じていたユラ。その習慣にも慣れた頃、ユラのもとに小さなイエス様が出現して……。サンセバスチャン映画祭で最優秀新人監督賞を受賞した奥山大史の監督デビュー作。

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『空の瞳とカタツムリ』 Love Dart

日本 / 2018 / 120分
監督:斎藤久志(SAITO Hisashi)
配給:太秦

カタツムリは交尾の際「恋矢(れんし)」と呼ばれる生殖器官を互いに突き刺しあうという。男でも女でもない雌雄同体の心を持てあましながらカタツムリのように絡みあう4人の若者を抒情的に描く。新進脚本家・荒井美早のオリジナル脚本を齋藤久志が映画化。

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『コンプリシティ』★ Complicity

日本、中国 / 2018 / 116分
監督:近浦啓 (CHIKAURA Kei)
製作:クレイテプス

技能実習生の中国人青年チェンは研修先から失踪、他人になりすまし、蕎麦屋に住み込みで働き始める……。トロント国際映画祭でワールドプレミア上映された近浦啓の長編デビュー作。藤竜也が蕎麦屋の主人を演じている。

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