東京フィルメックス・コンペティション(全10作品)

第19回東京フィルメックス受賞結果

第19回東京フィルメックスコンペティション部門審査員は以下の作品に賞を贈ります。

【第19回東京フィルメックス コンペティション 受賞結果】

【最優秀作品賞】 

『アイカ(原題)』Ayka
監督:セルゲイ・ドヴォルツェヴォイ (Sergei DVORTSEVOY)
ロシア、ドイツ、ポーランド、カザフスタン、中国 / 2018 / 100分

副賞として賞金100万円が監督に授与されます。
授賞理由;
最優秀作品賞はセルゲイ・ドヴォルツェヴォイ監督の「アイカ」に贈る。出産後新生児を残して病院を逃げた25歳のキルギス人の女性の物語。借金を返そうと様々な仕事に就こうとするがうまくいかない。
本作はこの女性に降りかかる過酷な現実とモスクワで移民として生き抜いて行こうする彼女の意志を見事に描いている。ドキュメンタリー映画出身の監督は残酷な境遇を核心的でリアルなやり方で捉えている。各シーンは緊張に満ちていて見る者の心を打つ。

【審査員特別賞】 

『轢き殺された羊』 Jinpa
監督:ペマツェテン(Pema Tseden)
中国 / 2018 / 86分

副賞として賞金50万円が監督に授与されます。
授賞理由;
「私の夢を教えても、おそらくあなたは忘れるだろう。私が夢に従って行動すれば、あるいはあなたは覚えるかもしれない。ただ、私の夢にあなたを巻き込めば、それはあなたの夢にもなる。」
このチベットに箴言に始まるこのポップな西部劇ロードムーヴィは二人ともジンパという名の謎の人物とココシリへと私たちを誘う。一人は復讐のために人殺しを企て、もう一人は誤って殺してしまった羊の済度を求める。
息をのむ映像で神秘的でオペラのような夢の如く物語は語られ、チベット語で歌われる「オーソレミオ」で強調される。

【スペシャル・メンション】 

『夜明け』 His Lost Name
監督:広瀬奈々子(HIROSE Nanako)
日本 / 2018 / 120分

授賞理由;
審査員は広瀬奈々子監督の「夜明け」をスペシャルメンションとしたい。
本作は、見事な脚本と演出により、柳楽優弥が人生を模索する青年を力強く演じるファミリードラマである。この若い女性監督の明晰なデビュー作品は日本映画の未来への一条の明るい光となった。


■第19回東京フィルメックス コンペティション審査員:
ウェイン・ワン(審査委員長:米国/映画監督)、モーリー・スリヤ(インドネシア/映画監督)、エドツワキ(日本/イラストレーター、アート・ディレクター)、ジーン・ノ(韓国/ジャーナリスト)、西澤彰弘(日本/東京テアトル株式会社映画興行部長)


■観客賞

『コンプリシティ』 Complicity
監督:近浦啓 (CHIKAURA Kei)
日本、中国 / 2018 / 116分 製作:クレイテプス

■学生審査員賞

『ロングデイズ・ジャーニー、イントゥ・ナイト(仮題)』 Long Day’s Journey into Night
監督:ビー・ガン(BI Gan)
中国、フランス / 2018 / 140分
配給: リアリーライクフィルムズ / ガチンコ・フィルム / シネフィル

授賞理由;
男と女、2人の究極的な愛は、地球の自転にも抗った。
男が誰と出会ったのか、本当に出会ったのかさえ不確かだが。
ようやく縫い合わせた錆びた記憶の欠片たちと、眠ってしまったのかと錯覚してしまう夢のような一時。
「意味」は遥か先に隠され、どこを探しても見つけらない。
僕らは宇宙からやってきた監督に別世界に、別の宇宙に連れ去られた。
大冒険は終わったのか、まだ帰ってきているのかも分からない。
映画表現へのこの革命的ギャンブルは、新たな扉を叩いただろう。
そして、映画に対する確固たる愛と覚悟を見せつけ、僕らの背中も大きく押してくれた。

● 学生審査員:
石井達也(東放学園映画専門学校卒)、池本ミナミ(大阪芸術大学映像学科卒)、久米修人(日本映画大学)

世界的に大きな注目を集めるアジアからは、才能ある新鋭たちが次々と登場しています。
そんなアジアの新進作家が2017年から2018年にかけて製作した作品の中から、10作品を上映します。
また5名からなる国際審査員が、最優秀作品賞と審査員特別賞を選び、11/24(土)に行われる授賞式で発表します。

(日本語タイトル横の★=長編監督デビュー作)

『シベル』 Sibel

フランス、ドイツ、ルクセンブルク、トルコ / 2018 / 95分
監督:チャーラ・ゼンジルジ、ギヨーム・ジョヴァネッティ (Çağla ZENCIRCI & Guillaume GIOVANETTI )

村を脅かす狼を狩ることで自分の存在意義を証明しようとする少女が、ある日山小屋の中に潜伏する若い男と出会うが…。独特の口笛で自分の意思を表現する少女を演じたダルニア・センメズが強烈な印象を残す。ロカルノ映画祭で上映された。

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『アイカ(原題)』 Ayka

ロシア、ドイツ、ポーランド、カザフスタン、中国 / 2018 / 100分
監督:セルゲイ・ドヴォルツェヴォイ (Sergei DVORTSEVOY)
配給:キノフィルムズ

『トルパン』(08)でカンヌ映画祭「ある視点」賞を受賞したセルゲイ・ドヴォルツェヴォイの新作。モスクワに働きにきたキルギス人女性の過酷な日々を手持ちカメラの激しい映像で見せる。主演のサマル・エスリャーモヴァがカンヌ映画祭最優秀女優賞を受賞した。

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『マンタレイ』★ Manta Ray

タイ、フランス、中国 / 2018 / 105分
監督:プッティポン・アルンペン (Phuttiphong AROONPHENG)

ロヒンギャ難民(ミャンマーのイスラム系住民)の問題を背景に描いた、『消失点』(15)の撮影監督プッティポン・アルンペンの監督デビュー作。ヴェネチア映画祭オリゾンティ部門で上映され、最優秀作品賞を受賞した。

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『幻土(げんど)』 A Land Imagined

シンガポール、フランス、オランダ / 2018 / 95分
監督:ヨー・シュウホァ (YEO Siew Hua)

シンガポールを舞台に、ある中国人移民労働者の失踪事件から明らかになっていく、この男の過去とは? フィルム・ノワールと社会派リアリズムが奇跡的に融合したヨー・シュウホァの監督作。ロカルノ映画祭で見事に金豹賞を受賞した。

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『幸福城市』 City of Last Things

台湾、中国、アメリカ、フランス / 2018 / 107分
監督:ホー・ウィディン (HO Wi Ding)

近未来、2056年の台北を舞台にした刑事の物語がまず描かれ、第2部で刑事の青年期が、第3部で少年期が描かれるという、ホー・ウィディンの意欲作。トロント映画祭の「プラットホーム」部門で上映され、最優秀作品賞を受賞した。

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『自由行』 A Family Tour

台湾、香港、シンガポール、マレーシア / 2018 / 107分
監督:イン・リャン(YING Liang)

中国から香港に移住して活動を続けるイン・リャンが自己の境遇を投影した作品。創作の自由のために自主亡命せざるを得なかった映画作家の葛藤が見る者の胸に突き刺さる。ロカルノ映画祭で上映された。

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『轢き殺された羊』 Jinpa

中国 / 2018 / 86分
監督:ペマツェテン(Pema Tseden)

広大なチベットの草原を舞台に、「ジンパ」という同じ名を持つ二人の出会いを現実と幻想を入り交えながら描く。ウォン・カーウァイがプロデュースを担当。ヴェネチア映画祭オリゾンティ部門で上映され、脚本賞に輝いた。

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『ロングデイズ・ジャーニー、イントゥ・ナイト(仮題)』 Long Day's Journey into Night

中国、フランス / 2018 / 140分
監督:ビー・ガン(BI Gan)
配給: リアリーライクフィルムズ / ガチンコ・フィルム / シネフィル

フィルム・ノワールと、約1時間にわたって展開されるワンカットの3D映像の驚くべき融合。映画的冒険に満ち溢れた『凱里ブルース』(15)で彗星のごとく現れたビー・ガンの待望の新作。カンヌ映画祭「ある視点」で上映。

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『象は静かに座っている』★ An Elephant Sitting Still

中国 / 2018 / 234分
監督:フー・ボー (HU Bo)

中国北部の地方都市に暮らす4人の登場人物たちの1日を4時間弱の長尺で描き、世界を驚かせた作品。ベルリン映画祭フォーラム部門で上映されて国際批評家連盟賞を受賞したが、監督のフー・ボーは本作を撮り終えた後に自ら命を絶った。

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『夜明け』★ His Lost Name

日本 / 2018 / 113分
監督:広瀬奈々子 (HIROSE Nanako)
配給:マジックアワー

地方の町で木工所を営む哲郎は河辺で倒れていた青年を助ける。青年は木工所で働き始めるが、やがて青年の過去が明らかになる……。是枝裕和、西川美和の監督助手をつとめた広瀬奈々子が柳楽優弥を主演に迎えた監督デビュー作。

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