2007年2月8日に開幕を迎える第57回ベルリン国際映画祭の各部門のラインアップが先日相次いで発表された。一般的な注目度が最も高いコンペティション部門には、国や地域性から監督のキャリアの面まで、非常にベルリン的としか言いようのない独特のバランスでもって、全26本(コンペ外上映作品を含む)の作品が並んだ。
その内容を地域的な観点から見てみると、まずはやはり欧米からの作品に大きな比重があることがわかる。一方にはある程度メジャー感のあるアメリカ映画が数作品並び、他方には新進監督から巨匠クラスのベテラン監督の作品まで、雑多ともいえるヨーロッパ映画が顔を揃える。このあたりの配分具合は、概ね例年通りである。敢えて特徴的な点を探すとすれば、今年は地元であるドイツが製作に参加している作品が比較的多い、ということがあげられるのかもしれない。
その他の地域からのエントリーは全部で7作品。南米はアルゼンチンとブラジルから、それぞれ1作品ずつが選出されている。そしてアジアからは、イスラエル作品を含めて5作品がエントリー。韓国、そして中国から、それぞれ2作品ずつが選出されている。韓国のパク・チャヌクの新作を除けば、いずれも新進と言ってもいい監督による作品となる。残念ながら、昨年に引き続き日本からのコンペ作品のエントリーはない。
その他の部門で派手に目を引く点を挙げるとするならば、パノラマ部門にスティーヴ・ブシェミ、ジュリー・デルピー、サラ・ポーリー、アントニオ・バンデラスら有名俳優による監督作品がいくつかエントリーしていることだろうか(ちなみにコンペ部門にはロバート・デ・ニーロの監督作が入っている)。ただ、敢えて東京フィルメックス的な視点から注目作を挙げるとすれば、アジアや日本作品以外では、やはりフォーラム部門で特別上映されるカナダの奇才監督ガイ・マディンの新作『Brand Upon the Brain!』(基本的にはサイレント作品だが、イザベラ・ロッセリーニによる生ナレーションやオーケストラ演奏と共に上映される予定)や、同じくフォーラム部門で特別上映予定のフレデリック・ワイズマンによる新作『State Legislature』というあたりになるのかもしれない。さらに言えば、ベルリナーレ・スペシャル部門において、ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督の『ベルリン・アレクサンダー広場』全エピソードがリマスター上映されることにも、敬意を表すべきだろう。
そして最後に嬉しい報告を二つ。まず一つ目は、昨年の東京フィルメックスのコンペティション部門で『マキシモは花ざかり』が上映され好評を博したフィリピンのアウレウス・ソリト監督の新作『Tuli』が早くもフォーラム部門において上映されること。実は、昨年の映画祭の折に監督が来日したタイミングは、この新作の完成直後のことだったのだ。そしてもう一つは、同じく昨年の東京フィルメックスで東京国立近代美術館フィルムセンターとの共催で回顧上映を行った岡本喜八監督の作品が、フォーラム部門においてヨーロッパでは初めて特集上映されること。未だ世界では「知られざる巨匠」である岡本監督の傑作の数々が、今回の特集上映でどのような波紋を彼の地に引き起こすのか、興味を持って今後を見守りたいと思う(文/神谷直希)。
・ベルリン国際映画祭公式サイト(独語・英語): http://www.berlinale.de/
・プログラムは公式サイトの下記ページから検索が可能です:
http://www.berlinale.de/en/programm/berlinale_programm/programmsuche.php
・コンペティション部門のラインアップは以下のとおり(アルファベット順)。
Angel by Francois Ozon, France/Belgium/UK (World Premiere) / Closing Film
Beaufort by Joseph Cedar, Israel (World Premiere)
Bordertown by Gregory Nava, USA (World Premiere)
Die Falscher (The Counterfeiters) by Stefan Ruzowitzky, Germany/Austria (World Premiere)
El otro (The Other) by Ariel Rotter, Argentina/France/Germany (World Premiere)
Goodbye Bafana by Bille August, Germany/France/Belgium/UK/Italy (World Premiere)
Hallam Foe by David Mackenzie, UK (World Premiere)
Hyazgar (Desert Dream) by Zhang Lu, Republic of Korea/France (World Premiere)
In memoria di me (In Memory Of Myself) by Saverio Costanzo, Italy (World Premiere)
Irina Palm by Sam Garbarski, Belgium/Germany/Luxembourg/UK/France (World Premiere)
La Vie en Rose by Olivier Dahan, France/UK/Czech Republic (World Premiere) / Opening Film
Les Temoins (The Witnesses) by Andre Techine, France (World Premiere)
Ne touchez pas la hache (Don’t Touch The Axe) by Jacques Rivette, France/Italy (World Premiere)
O ano em que meus pais sairam de ferias (The Year My Parents Went On Vacation) by Cao Hamburger, Brazil/Argentina (International Premiere)
Obsluhoval jsem anglickeho krale (I Served The King Of England) by Jiri Menzel, Czech Republic/ Slovakia (International Premiere)
Ping guo (Lost In Beijing) by Li Yu, China (World Premiere)
Sai bo gu ji man gwen chan a (I’m A Cyborg, But That’s Ok) by Park Chan-wook, Republic of Korea (International Premiere)
The Good German by Stephen Soderbergh, USA (International Premiere)
The Good Shepherd by Robert de Niro, USA (International Premiere)
Tu ya de hun shi (Tuya’s Marriage) by Wang Quan’an, China (World Premiere)
When A Man Falls In The Forest by Ryan Eslinger, Germany/Canada/USA (World Premiere)
Yella by Christian Petzold, Germany (World Premiere)
コンペ外上映作品:
300 by Zack Snyder, USA (World Premiere, Out of Competition)
Letters From Iwo Jima by Clint Eastwood, USA (European Premiere, Out of Competition)
Notes On A Scandal by Richard Eyre, UK (International Premiere, Out of Competition)
The Walker by Paul Schrader, USA/UK (World Premiere, Out of Competition)
・ 日本からの出品作(長編作品)は以下のとおり(順不同)。
パノラマ部門
『武士の一分』(山田洋次監督)
フォーラム部門
『選挙』(想田和弘監督)
『カインの末裔』(奥秀太郎監督)
『無花果の顔』(桃井かおり監督)
『Mona Lisa』(李纓監督)
岡本喜八監督特集
『独立愚連隊』(1959年)
『暗黒街の対決』(1960年)
『地獄の饗宴』(1961年)
『江分利満氏の優雅な日常』(1963年)
『大菩薩峠』(1966年)
『日本のいちばん長い日』(1967年)
『斬る』(1968年)
『肉弾』(1968年)
『赤毛』(1969年)
ベルリナーレ・スペシャル部門
『さくらん』(蜷川実花監督)
Generation 14plus部門
『鉄コン筋クリート』(マイケル・アリアス監督)
レトロスペクティブ部門
『生さぬ仲』(1932年/成瀬巳喜男監督)
『夜ごとの夢』(1933年/成瀬巳喜男監督)
Eat, Drink, See Movies部門
『プルコギ』(グ・スーヨン監督)
以上。
(報告者:神谷直希)
ニュース/事務局からのお知らせ
「進化する日本映画-Evolving Japanese Cinema」英語字幕付き上映会
2/2(金)-2/4(日)にかけて、赤坂・OAGホール(ドイツ文化会館内)にて、国際交流基金主催の英語字幕付き上映会「進化する日本映画 -Evolving Japanese Cinema」が開催されます。
ぜひ、この上映会に足をお運びくださるよう、お願い申し上げます。
(なお、下は1/31に発行しましたメールマガジンです。ご登録されたのに届いていない方がいらっしゃいましたら、登録手続きの不備が考えられます。再度、お手続きください)
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————- The Japan Foundation Film Series Part 7 ————–
———– Evolving Japanese Cinema ————–
■進化する日本映画■
2/2(金)?2/4(日)赤坂・OAGホールで開催!
*英語字幕付き日本映画上映会
===================<6作品上映、(全て英語字幕付)>================
<INDEX>
1,開催概要
2,企画趣旨
3,上映作品紹介
4,お問い合せ先
5, 東京フィルメックスよりお知らせ
——————————
■1、開催概要
●期間:2007年2/2(金)?2/4(日)
●会場:赤坂・OAGホール
東京都港区赤坂7?5?56 ドイツ文化会館内
地下鉄銀座線・半蔵門線・都営大江戸線
「青山一丁目」駅A4出口より徒歩5分
●主催:国際交流基金
●企画・運営協力:特定非営利活動法人東京フィルメックス実行委員会
●協力:角川ヘラルド、シネカノン、松竹、日活
●料金:当日600円(当日券のみ)
*各回入替制 *全作品英語字幕付き(講演は入場無料)
<お問合せ先>
・ 会期前のお問合せ:上映会事務局(東京フィルメックス内)
Tel: 03-3560-6394(11:00?17:30 平日のみ)
・ 会期中のお問合せ: Tel: 080-5150-5053(開催期間中のみ)
<サイト>
(日) http://www.jpf.go.jp/j/culture_j/topics/movie/fsp-7.html
(英) http://www.jpf.go.jp/e/culture/topics/movie/fsp7.html
<タイムテーブル>(6作品上映) *入替制(開場は15分前)
【2/2(金)】
18:30 その男、凶暴につき(1989/103分/監督:北野武)
Violent Cop / 1989 / 103 min. / KITANO Takeshi
【2/3(土)】
13:30 MONDAY(2000/100分/監督:SABU)
Monday / 2000 / 100 min. / SABU
16:00 ファンシィダンス(1989/101分/監督:周防正行)
Fancy Dance / 1989 / 101 min. / SUO Masayuki
18:30 月はどっちに出ている(1993/109分/監督:崔洋一)
All Under the Moon / 1993 / 109 min. / SAI Yoichi
【2/4(日)】
13:30 害虫 (92分)(2001/92分/監督:塩田明彦)
Harmful Insect / 2001 / 92 min. / SHIOTA Akihiko
15:15 講演 塩田明彦 監督
Lecture by SHIOTA Akihiko
17:30 カリスマ(2001/92分/監督:黒沢清)
Charisma / 2000 / 103 min. / KUROSAWA Kiyoshi
座席指定制について – 林 加奈子ディレクター(14)
<前売りでは売り切れなのに、実際には空席が目立つ>というご意見もいただきました。確かに座席は当日券の枚数を確保し、ほかにもプレスやゲスト席などIDパスをお持ちの方々のお座席や、配給が決まっている作品はそちらへもお座席をお渡ししている関係上、前売りの段階から全席を売ってしまうことは不可能な現状がございます。
また前売り券をお買い求めいただいた方の中にはご都合が合わずに、止む無くご来場いただけずに空席になる場合もございますが、これは既に座席指定で販売済みでございますので、重ねて他の方にお回しすることも叶わず、止む無く空いているお席が出来てしまうこともございます。
自由席はお入りになってからはご自由にお好きなお席という良い面がありますが、ご入場の際に階段に整列してしばらくお待ちいただく形になってしまい、それもお客様にはご不便な事があろうかと考えております。座席指定と自由席は、両方とも良い面と不都合な側面があり、事務局でも試行錯誤ではございますが、よりよき方法を探っております。みなさまからの、貴重なご意見には、心から感謝申し上げます。
ボランティア・スタッフの組織化 – 林 加奈子ディレクター(13)
今年は約80人のボランティアスタッフにご活躍いただきました。大きくは運営、広報、ホスピタリティ、の各担当に分かれてのお仕事になりますが、大きな負担(やり甲斐?)の中、みなさまそれぞれの力を発揮いただいて、こなしていただきました。改めて重ねて感謝申し上げます。
中にはもう何年も引き続きお手伝いいただいているスタッフもいらっしゃいますが、初めての方は、公式サイトの募集要項に沿って応募をしていただいて、面接をしております。実際には選び抜かれた優秀な方々で、年齢も経験も様々ですが、観客のお客様とゲストのお客様を温かく気持ちよくおもてなしする精神に富んだ、良いチームが作れました。
期間中になるべくたくさんお手伝い可能な方が優先となります。また組織化してチームを編成していくためには、2ヶ月かかりますので、早い次期に応募をしていただくことが大変助かります。初めての方は是非とも夏の間に、できれば8月半ばあたりまでに、応募申請をしていただけますよう、心からお願い申し上げます。
第8回に向けて準備は既に始まっております。どうぞボランティア・スタッフとして東京フィルメックスの運営に関わってみようと考えてくださるみなさま、早くご一報くださいませ。
アンケートのメッセージは… – 林 加奈子ディレクター(12)
アンケートのご感想が監督に伝わっているのかどうか、お問い合わせをいただきましたのでご回答申し上げます。これは全ての作品というわけではありませんが、監督によっては格別にアンケートのご意見を知りたいという方もいらっしゃいますので、個人情報の部分を削除して、それぞれの作品に付いてのご意見をご覧頂く場合もございます。
が、基本的にはアンケートは事務局でお伺いしております項目ですので、監督に何か特別にメッセージなどある場合でもアンケートに書いて確実に届くというお約束はできません。あしからずご了承くださいますようお願い申し上げます。
サポーターズクラブ会員について – 林 加奈子ディレクター(11)
サポーターズ・クラブの会員のみなさまには、東京フィルメックスの趣旨に賛同して活動を支援していただいていますが、この会費につきましては、実際に「高い」というご意見と「安い」というご意見と、両方いただいております。チケットの先行発売の枠を活用するためにメンバーになる方には高すぎるのかもしれません。また個人でも複数口のお申し込みをいただいている方もいらっしゃって、有り難い限りです。
映画を一本上映するのに幾らのお金が掛かるか。これはみなさまに愚痴る必要もない事ではありますが、「宣伝が足りない」という激励などもアンケートでいただきますもので、開催経費の予算が限られた中で企画運営を進めております事務局としては、胸の詰まるところです。宣伝するにもメディアや媒体に広告を載せたり、街に旗を出したり看板を出したりするのにも、大きな費用が掛かります。海外からのプリント調達、通関費、字幕翻訳費、字幕投影費、フィルム映写費、そして会場拝借料金、広報もポスターデザインからチラシ、公式カタログの編集、会場ロビーの制作物など、たくさんの経費が掛かります。
ゲストをお招きしたり、審査員を依頼したりの費用。ボランティアスタッフを集めてミーティングするにも、会議室を借りる費用がかかります。一本の作品を上映するのに一枚のチケットを幾らで売らないと収支としては合わないかという単純計算をしてしまうと、どうにも悲しいばかりです。
サポーターズクラブ会員として頂戴しております会費は、東京フィルメックスの活動の運営経費として、大切に、大事に使わせていただいております。NPO(特定非営利活動法人)として活動を進めておりますが、非営利というのは赤字でもよいという事では全くありません。大変苦しい中で何とか続けて来れたのも、ご協力いただいております関係各位のおかげと、サポーターズ会員のみなさまと、加えてご協賛、ご協力いただいている各位には、重ねて感謝と御礼を申し上げます。
映画祭ディレクターの資質 – 林 加奈子ディレクター(10)
私は以前の仕事で、日本映画を海外の国際映画祭のディレクターやプログラマーにご紹介したり、海外のシネマテークやアーカイブに日本映画の巡回上映をしたりという事をしていたもので、海外の国際映画祭関係者とは知り合いも多く、まさに彼らが必死で作品を選択されるのを目の当たりにして来た経験があります。これは貴重な財産であり、ネットワークという面でももちろんなのですが、その一方で尊敬できるディレクターたちは、彼らが自分の映画祭ならではの「どうしても上映したい」という作品を探すその情熱たるや、すさまじいものがあるのを知っています。
映画祭同士のパワーゲームに陥ることなく、作品の力を信じて、それらの作品を支援し、より一層輝くために力を尽くすのが、映画祭の使命です。今回、釜山国際映画祭のキム・ドンホさまと期間中を過ごす機会に恵まれて改めて痛感したのは、その素晴らしいお人柄に尽きます。韓国映画界のドンと言ってもおかしくない方なのに、腰が低くて無理強いしないし、権力を弄ばない。本当に温かくも立派な紳士でいらっしゃいます。
加えてドンホさまについてもう一つ驚いたことは、健啖でいらっしゃること。よく召し上がります。しかも早い。早飯っていうのは、もしかしたらディレクターの資質の一ポイントかしら、と考えてしまいました。つまり人のペースに合わせて食べられる。時間も場所も選ばない。海外に出かけるとディナーが3つも重なったり、ゲルマン系の人との朝早くの打ち合わせから、ラテン系との人たちとの夜遅くの重いディナーとか、もしくは試写が続いて全く食べる時間がなかったりと、とにかく全く胃に優しくない時間をサバイバルしていかないとならないわけですので、体力が肝心という次第です。
「字幕投影について」 – 林 加奈子ディレクター(9)
朝日ホールの上映では、日本語字幕を画面の外に出して表示しております。これについては、見やすくて良いという方と、見えにくいという両方のご意見を頂いています。事務局としても字幕投影については、考えどころでございます。
基本的に、英語字幕の付いているプリントを映画祭での上映だけのために海外から取り寄せて、それに日本語字幕をプリントを傷つけることなく、別のプロジェクターで投影する方法を用いておりまして、これにはアテネフランセ文化センターの字幕映写チームの神業的な作業にお世話になっております。翻訳者の方々にもギリギリにプリントが日本に届くような時間との戦いの中で、ご無理なお願いを毎年重ねてしまっておりまして、感謝に耐えません。
それで、画面の中に英語と日本語と両方が入ると、本編が見えにくいという難点もありえますが、また座席によっては字幕を外側に出すと見えにくくなるのも事実で、はたまた作品によっては画面の中に入れると映像の美しさが半減してしまう危惧のあるものもあり、難しいところです。
ただテクニカル面ではかなり工夫がなされて状況も変化してきていますし、画面の中に入れても映像への支障が最小限に抑えられる形での投影技術も進歩してきているようなので、今後お客様に見やすい日本語字幕かつ作り手のこだわりを損なわない日本語字幕のありかたについては、検討を重ねております。
「動画配信の試み」「今までの軌跡をまとめた記録映像」 – 林 加奈子ディレクター(8)
今年は公式サイトが充実していました。期間中に時間を空けずに上映後の監督と観客のみなさまとのQ&Aをまとめてアップしたり、また慶應義塾大学DMC機構のご協力を得て、動画配信も試み、臨場感あふれる公式サイトを演出できました。トークイベントなどをまとめるのは一苦労ですが、良いスタッフが力を合わせて実現してくれました。ヒット数も1万件を超える反響となり、事務局スタッフ一同、ビックリ喜んでおります。
また開映前の場内でも過去の記録映像を部分的にご紹介しておりました。改めて素晴らしい作品に恵まれ、素敵な監督たちに、そして素晴らしい審査員のメンバーにご来日いただいた幸せな毎年が思い出されます。
特に今年は会期終了後、ボロボロになっている事務局にとびきりの情報が飛び込みました。ムン・ソリさまと「地球を守れ!」のチャン・ジュヌアン監督がクリスマスにご結婚されるという素敵な朗報です。お二人とも東京フィルメックスには別々にご来日いただいておりましたので、疲れた心と体に染み入る本当にうれしい吉報です。どうぞお二人とも末永くお幸せに。そしてますます良い作品をお作り続けてくださいますよう、信じております。そして願わくば、そのうちいつの日かお二人で東京フィルメックスにひょっこり遊びにいらしてくださいましたら、なんて、欲深な私たちはそんな日を切望しております。
上映回数について – 林 加奈子ディレクター (7)
フィルムセンターでの岡本喜八特集の場合のように、12本それぞれ2回ずつの上映が決まっている場合などのように、それで企画を進めている時は別として、新作のほうでは作品によって一回しか上映がないものが幾つか出てきてしまっています。私たちとしてもできることなら最低2回は上映したいところなのですが、これは現実的には枠の問題というよりも、作品の権利保有者から映画祭での上映許諾を得る時の条件として「一回上映」で、という場合があるのです。これは、この後に日本での配給会社が決まって公開する際に、その会社にとって東京フィルメックスで2回も上映していては良くないかもというご判断があるのかもしれません。
映画祭は期間中の上映がプレミアのため、期間前に試写などをすることが余り無いので、期間中の評判や盛り上がりで2回目3回目と上映を重ねるごとにお客様が増えていくというのが、美しい現象ではあるのですが、如何せん事務局の希望だけでは簡単に決行できないわけです。実際にカンヌでは、作品によっては公式上映が一回だけという作品もあります(でもマーケットでは何回も上映していますが)。また、ベルリン映画祭は、一般の観客が参加できる世界最大の国際映画祭ですが、全部で5回ほどの上映が行われている作品もあり、観客の人気の程が如実にうかがえます。
他の映画祭では、受賞作品を最終日にリピートする形式を採っているところもありますが、これについても、もちろん権利保有者には許諾を取らないとなりません。