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2006年11月18日

『結婚のすべて』トークショー

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軽快なテンポを持ち味として独創的に映画の面白さを追求し、去年惜しまれつつも亡くなった、“日本映画のダンディズム”岡本喜八監督との思い出を、監督デビュー作『結婚のすべて』上映後に、女優・雪村いづみさんと、監督夫人でプロデューサーの岡本みね子さんが語った。

「皆様、こんにちは。今日はこの国立フィルムセンターという素晴らしい、大きなスクリーンで久しぶりに『結婚のすべて』をご一緒に見ることかできて、本当に嬉しいです」鮮やかな水色のスーツを着て壇上に現れた雪村さんに、客席からは大きな拍手があがった。

???『結婚のすべて』は雪村さんにとってもデビュー作になりますね。
「はい。元気がよくて・・・すごく若いですね。47年も前なんですか。やっぱりピチピチしてますね(笑)」
???今回はフィルムセンターで12本の作品を上映しますが、岡本監督はどんな方だったんですか?
「とってもお洒落で粋で、男らしくて素敵な方でした。いつも必ず上から下まで真っ黒で、時々ハチマキなんかもしてらっしゃって」

その噂のハチマキは、監督がよくかぶっていた黒いキャップ、書き込み入りの台本と一緒にフィルムセンター2階のホールに飾られている。

???黒と言えば、撮影中に現場で黒いセーターを編んでらしたんですよね?スタッフの間で噂になってたらしいですよ。「誰に編んでるんだ?」って。
「監督にプレゼントしました」

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ここで岡本みね子さんが登壇し、雪村さんに花束を手渡した。3色のバラが混ざったカラフルな花束は、監督が昔「(雪村さんは)いろんな色を持った人だから、これからどんどん活躍する」と言っていたことにちなんで贈られた。


???『結婚のすべて』で岡本監督はNHK映画賞と新人監督賞を受賞してらっしゃいますよね。雪村さんのことを当時の“キネマ旬報”で褒めてらっしゃいます。
みね子夫人「すごく素直に一生懸命、監督を信じてやってくれたのでよかった、と言っておりました」
雪村さん「もう何がなんだかわからないので、信じてついていきました。でも、監督の映画が大好きだったので、嬉しかったです。監督からは、“絶えず動いて、早口で喋りなさい”とアドバイスされたんですが、実は早口は得意なんです」

???現場でのご苦労等はありましたか?
みね子夫人「監督の現場は大抵ふきっさらしで、女優さんたちは皆さんかわいそうでした」
雪村さん「『独立愚連隊』は監督が助監督時代からずっと撮りたがっていた戦争映画で、いづみは初めての汚れ役、映画で死ぬのも初。現場は御殿場で、わたしもお弁当持参でトラックに乗って行きました」
みね子夫人「監督は現場平等主義だったので、全員に行き当たらない差し入れならいらないと言って。ゆで卵400個を作った時は本当に大変でしたね」

???雪村さんは今年公開された『そうかもしれない』に主演されていました。
みね子夫人「本当に感動しました。監督が元気だったら、本当に喜んだと思います」
雪村さん「見ていただいてよかったです。なんだか私たちの方が長生きしちゃって...」
みね子夫人「でも監督はかなり年上でしたから。戦争の話はよくわからなくて困りました。でも、映画が好きだってことを通して、何十年も傍にいられて、あっという間の40年でした」

???“岡本喜八伝説”っていう言葉をよく耳にします。こだわりがある方だった、と。
雪村さん「すごく目立つ方。真っ黒で目立つ(笑)」
みね子夫人「難しい方ではないけど、こだわりがあった。同じことは映画でもやらない主義で、1つの作品が終わると「ああ、お嫁にいっちゃった・・・」ってすごく寂しそうで。次は全然違うものに挑戦していました」

和やかなムードで終了したトークショー。現場のスタッフにも俳優たちにも好かれ、尊敬されていた監督が心に浮かびました。いつもこだわりを持って、映画の新境地を作った岡本喜八監督。その挑戦の姿勢を映した映画は、今見ても新しさを感じます。月曜を除く11月26日までフィルムセンターにて上映中です。この機会にぜひご覧ください。

(取材・文:今坂千尋)

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投稿者 FILMeX : 2006年11月18日 15:00


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