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2006年11月26日

『黒眼圏(くろめけん)』Q&A

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第7回東京フィルメックスのクロージング作品は、ツァイ・ミンリャン監督の最新作『黒眼圏』。上映終了後のQ&Aには当日に台湾から到着した、チェン・シャンチーさんが登場。監督の作品には欠かせないヒロインです。白いドレスをまとって現れた姿は、まるで妖精のように可憐な美しさでした。

チェン・シャンチー(以下、チェン)
「今回初めてフィルメックスに参加させていただきます。この大きな劇場で映画が上映されて、皆さんが熱心に見て下さるのを見て本当に心から感動しています。ツァイ・ミンリャン監督は現在ヨーロッパに滞在中で、来日はかないませんでしたが、監督に代わって皆様に感謝を申し上げます」

Q
「ツァイ監督の映画はいつも台詞がほとんどありませんが、台本はどのように書かれていて、現場ではどのように指示をされるのでしょうか。それからチェンさんの役柄は、どの作品でも同じ人物であるかのように見えます」

チェン
「皆さんは脚本について不思議に思われているようですが、実は、現場では詳しい台詞が書かれた台本は存在しません。大体の状況が書かれているものだけです。監督は作家主義で、独特のスタイルを持ち、言葉はむしろコミュニケーションを阻害するものであると考えているようです。
 私が演じた役柄が同じ様に見えるのは言葉が少ないせいかもしれません。しかしよく見るとそれぞれに違うのです。今回の私の役はまるでねずみのようで、リー・カンション演じる青年への思いを募らせているというものでした」

Q
「タイトルの意味について教えてください。それから、印象的な場面で登場した蛾はCGなのでしょうか」

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チェン
「黒眼圏とは、殴られて出来るあざの事です。あの蛾は本物です。最優秀動物演技賞をあげたいと思います。あのシーンはワンテイクでOKになったのです。カメラが回るのと同時にカンションの肩にとまってくれて。良い演技をしてくれました、」

Q
「この映画はマレーシアでの撮影でしたが、普段台湾での撮影と違う所や、難しい点等がありましたでしょうか」

チェン
「マレーシアは毎日が真夏の状態でした。私は屋根裏に住んでいる設定でしたから、狭い空間での演技は非人間的で呼吸が苦しくなる程で辛かったし、レストランにはウサギほどの大きさのねずみが沢山いました。しかしこの環境は私とカンションの役作りの上では役に立ちました。
 重要な舞台となる廃墟は90年代、アジア経済の崩壊と共に、未完成のまま放置されてしまったビルの一つです。下部には雨水が溜まっていて、上から覗いた所まるで黒々とした人の眼の様で、水が魂を持っているように感じました」

Q
「カンションさんはいつも物静かなイメージですが、実際の彼もそうなのでしょうか」

チェン
「やはり口下手な人なんです。彼と一緒に居るときには気まずくなるのを避ける為、私たちから良く話しかけています。彼はツァイ監督にとってミューズの様な存在だと思います。彼が持つ独特の孤独な雰囲気が、監督の作り出す多くの人物像に影響しているのだと思います。カンションは細かいことを気にしない方で、いつも気楽な感じでいるので、ツァイ監督は彼がそばに居ることで安心するようです」

Q&Aの最後に、ツァイ監督作品『楽日』で共演した三田村恭伸さんが舞台に駆けつけ、チェンさんに花束を贈呈しました。

(取材・文:大津留汐子)

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投稿者 FILMeX : 2006年11月26日 22:00


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