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2006年11月26日

『ハンモック』Q&A

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日本では昨年、ウルグアイ映画の『ウィスキー』が公開され話題を呼んだが、同じく南米にあるパラグアイから素晴らしい作品が届いた。『ハンモック』はパス・エンシナ監督の長編デビュー作であり、カンヌ映画祭史上初めて正式上映作品に選ばれたパラグアイ映画だ。観客に新鮮な驚きと深い余韻を残した上映後、Q&Aに登壇したエンシナ監督は「観客の皆さま一人一人に駆けつけていただいたこと、大変嬉しく思っています」と挨拶した。


「(スペイン語ではなく)現地の言葉であるグワラニー語で映画を作られた意図をお聞かせください」

パス・エンシナ監督(以下、エンシナ)
「私にとってグワラニー語で映画を作ったことは、何も不思議なことではありません。パラグアイでは人口の85%がグワラニー語を話しますし、公用語の一つになっています。また、映画の登場人物たちには地の果てにいてほしいと思いました。人里離れ、全てから遠く離れた所にいることを表現するためにもグワラニー語が適切だと考えました」


「意図的にフィックス撮影のシーンを多くしたのでしょうか」

エンシナ
「ものを見る私の視点がフィックス撮影の手法に近いことと、映像が映像自体の視点を持つには時間を要するという私の認識からきています。映像自体に重要性を持たせているので、動きや会話を通じて表現するというよりは、会話の無い画面を多用しています。私は脚本の執筆中に音の要素をどんどん盛り込んでいきました。まず音を書いてから、イメージについて書き加えていったのです」

林加奈子ディレクター(以下、林)
「『ハンモック』はエンシナ監督の長編デビュー作ですが、2000年に同じタイトルの短編を作っていらっしゃいますね」

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エンシナ
「この短編は8分間の作品で、息子を待つ両親の物語です。ただし、息子がなぜ帰って来られないかというと、雨が降っているからです。短編の制作を通して「時間」というものと、私自身を見つけられたと思っています。
 ハンモックは私にとって、とても特別な要素を持つものです。行ったり来たり揺れながらも、一つの場所から動かないという要素は、私の国の歴史を反映していると思います」


「この作品はパラグアイでどのような反応で受け入れられたのでしょうか」

エンシナ
「生まれたばかりの赤ん坊のように喜びとともに受け止められました。観客を見ていますと、最初の5~7分にかけては奇妙に感じたのか、そわそわしている様子でしたが、次第に音や言語に引き込まれていきました。そして、席を立つことなく最後まで観てくれました。上映後、「私たちはこの映画に描かれている通りです」と声をかけられたのは素晴らしい瞬間でした」


「脚本を楽譜のように書かれたとうかがいましたが」

エンシナ
「4歳から母のすすめでクラシックギターを習い始めたので、文字の読み書きより先に音の読み書きを覚えました。その影響があると思うのですが、脚本を書くにあたって無意識のうちに、時間を音的に捉えているのだと思います。音の抑揚や一語の長さ、音を聴いた後にどれくらい時間をかけて瞳を開くかなど、老夫婦の言動についても音楽的に考えているところがあります。そうした中でレクイエム的な作品が出来上がったのです」

Q
「この作品は小津安二郎作品と関連性があるように思うのですが、ご覧になったことがあるのでしょうか」

エンシナ
「出来る限り多くの小津作品を観ていますし、私の大学での学位論文も小津監督について書きました。彼のことは心の恩師だと思っています」


「次回作の構想がありましたら教えて下さい」

エンシナ
「ちょうど脚本の第一稿を書き終えたところです。女の子と男の子の兄弟が独裁政権下に引き裂かれ、年老いてから再会するという物語です。老人になった二人が幼少の夢を語る構成となっており、悲しみ、失ったもの、置き去られたものという内容が詰め込まれています」


「またハンモックは出てきますか?」

エンシナ
「いいえ(会場、笑)。ただし、いくつかのことは今回と同じようにやりたいですし、全く別のことにもチャレンジしたいです。その点も私は小津監督から学んでいます。小津監督はアメリカ映画を熟知しながらも、自分の国で自分の視点を常に持ち、カメラの高さや配置を知り尽くしていた監督です。私も同じように自分自身の目線を表現できる映画を撮りたいと思っています」

(取材・文:須田美音)

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投稿者 FILMeX : 2006年11月26日 13:00


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